[書籍紹介]
副題に「ラムザイヤー論文の衝撃」とあるが、
ラムザイヤー論文とは、
ハーバード大学教授の
ジョン・マーク・ラムザイヤーが、
2020年12月、
法律・経済学の学術誌
「インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス」
のオンライン版に発表した
「太平洋戦争における性契約」と題する論文のこと。
これがメディアに報じられると、
韓国と欧米の学者から猛バッシングを受けた。
というのは、
ラムザイヤー論文では、
太平洋戦争中の日本軍の慰安所に従事した慰安婦たちが、
多額の前払い金による
年季奉公契約によるものだったことを論証し、
従来の「日本軍による強制連行説」、
「性奴隷説」を真向から否定するものだったからだ。
本書の筆者の有馬哲夫氏は、
このラムザイヤー論文を
公文書から検証して支持し、
反対者の批判に反論するのが本書。
有馬氏は、
1953年(昭和28年)生まれの早稲田大学教授。
ラムザイヤー論文を支持したことで、
反対勢力から「歴史修正主義者」という烙印を押されて
非難された。
歴史とは新たな発見があれば、
論文によって修正されるのは当然なので、
この烙印は単なるレッテル貼りに過ぎない。
有馬氏に反対する署名活動は、
既に6000筆の署名が集まっているそうだが、
数を頼もうとするのは、彼らの常套手段だ。
有馬氏は、こう言っている。
そもそも私は歴史学者というより
公文書学者なので、
一次資料から歴史的事実を明かにしていくだけで、
一定の見方というものがない。
私のゴールは、
これまで発見をされていない新資料によって、
これまで知られていなかった
歴史的事実を明らかにすること、
あるいはこれまで定説とされていたことを
覆すことだ。
その点で、ラムザイヤー論文は及第点。
だから、支持する。
本書には、巻末に、
そのラムザイヤー論文が全文掲載されている。
私も初めて読んだが、
日本語の一次資料を駆使して、
当時の外地での慰安婦の数も細かく掲載されており、
学術論文として信頼出来るものだ。
なお、ラムザイヤー教授は、
シカゴで生まれ、0歳時に来日、
18歳までは宮崎県に居住した人物。
日本語に堪能で、
日本語の資料を読みこなすことが出来る。
論文には、論拠となる資料が列記されている。
それに対して、批判者が日本語の資料をみ読みこなしたとは思えない。
この騒動の経過で、何より不思議なのは、
学術論文への批判は、
学術論文でなされるべきだと思うのだが、
そうではなく、
頭から論文が間違っていると決めつけ、
論文の撤回を求めるだけでなく、
教授の解任をハーバード大学に求めている点だ。
これに対し、掲載誌は、論文の撤回をしない決定をし、
大学も教授の解任には応じていない。
学問の論争は自由に行われるべき、
という観点から当然の結果だ。
もう一つ不思議なのは、
教授の同僚たちからも猛烈な批判がなされていることで、
学者なら、論文への批判は論文で、
ということは分かっているはずなのに、
そういう行動を取っていない。
そして、反対勢力は、署名を集めて撤回と解雇を求める。
彼らが本当にラムザイヤー論文を読んでいるのかは、不明。
2021年1月12日産経新聞の
英語ニュースサイトで取り上げられたことで、
韓国で猛批判が沸き起こり、
それを受けて、英語圏でも知られるようになった。
2021年2月中には、英語圏で反対活動が広まり、
ノーベル賞学者を含む有名学者が相次いで声明を発表、
学術誌からの撤回を求める署名活動も始まり、
声明や署名には高名な経済学者、日本研究家も名を連ね、
3月にはフィラデルフィア市議会で非難決議、
ホワイトハウスで質問が出るという事態になった。
日本においても、三つの歴史学会を含む
四つの団体が慰安婦は強制されたものであるとの声明を出した。
学術誌に掲載された、
わずか8ページの論文に対する反応としては、
常軌を逸している、と言えるだろう。
どこかで、誰かが組織的に画策しているとしか思えない。
ラムザイヤー論文で明らかにされては
よほど困ることでもあるのだろうか。
自らの理論が正しければ、
泰然としていればいいのに、
その理論の嘘が見抜かれてしまったために、
うろたえているとしか思えない。
慰安婦問題については、
4つの柱がある。
①朝鮮人慰安婦20万人説
②慰安婦強制連行説
③慰安婦性奴隷説
④終戦時の朝鮮人慰安婦虐殺説
しかし、これらの説を裏付ける一次資料は、
日本人も韓国人も世界の誰も見たことがない、
という不思議。
普通考えても、
①②の20万人もの女性を強制連行などしたら、
その移動手段、管理体制から考えても、
不可能だと思うが、
学者たちは、そうは考えないのだろうか。
抵抗運動や集団脱走などあったはずだが、
そんな事件は報じられていない。
(ちなみに、「反日種族主義」を書いた一人、
李宗勲が綿密な調査から
複数の算定法を使って、
朝鮮人慰安婦の数は3600人前後だと言っている。
納得できる数字である)
④の、敗戦時、日本軍が証拠隠滅のため、
慰安婦を何十万人も殺したというなら、
その遺体はどう処理されたのか。
事実なら、証拠がないはずがない。
③の性奴隷説は、
実際、兵隊は金を支払って行為を行ったのであり、
慰安婦たちは、相応の金を受け取っていた。
兵隊の何十倍の収入を得ていたという証拠も揃っている。
というわけで、全部捏造された歴史だということは、
少し考えれば分かるのだが、
学者たちは、それに固執し、
ラムザイヤー論文に対して
いきり立って反対の声をあげる。
何か困ることでもあるのだろうか。
ラムザイヤー論文で
新たに知ったことが沢山ある。
たとえば、日本軍が慰安所を設置した理由。
設置した、というのは正しい表現ではなく、
日本軍は駐屯地の近くに
民間業者が半ば軍公認の売春宿を作ることを奨励した、
ということなのだが、
その理由は、性病の蔓延を防ぐためだった。
それは、1918年のシベリア出兵の際、
性病が軍を壊滅状態に追い込んだためだ。
古今東西を問わず、
どんな軍隊も兵士の性に関して3つの選択肢しか持っていない。
①レイプを放置する(ソ連がそれだ)
②買春を放置する
③軍事売春所を作って、兵士の性を管理する
日本軍は、①では、地域住民の反発を買う、
②では、性病が蔓延する
ので、③を選択したのだ。
日本軍は、売春所に協力する代わりに、
娼婦に定期的な検診を受けるよう要求し、
性病にかかった慰安婦は
治るまで客を取らないように指導した。
なお、当時、売春は合法で、
国内法でも国際法でも違反していない。
その証拠に、日本を厳しく裁いた極東国際軍事裁判でも、
慰安婦制度も個々の慰安所も訴追されていない。
問題視されないのは、
それが、合法だったからだ。
そして、貧困が原因の女性たちが
それをビジネスとして受け入れた。
つまり、目的は金。
そうでなくて、
誰が慰安婦などになるものか。
当時、売春は認可事業だった。
娼婦になるためには、
契約書の他に5種類の書類が必要だった。
承諾書、酌婦営業許可書、調査書、
印鑑証明、戸籍謄本だ。
これらの書類は「同意」がなければ
準備できるものではない。
そして、これらの書類を見せなければ、
渡航許可書をもらって、
慰安所のある海外に渡航することは出来ない。
この仕組み一つ取っても、
強制連行説が嘘だと分かるだろう。
普通に考えても、
娼婦だって人間だ。
損得勘定くらいするだろう。
ラムザイヤー論文の
大金の前渡金と年季奉公というのは納得できる。
それは、強制連行説の全面否定。
だから、
ラムザイヤー論文に
過剰な反応をしたのだ。
ラムザイヤー論文を貶めるために、
反対派は卑劣な手を使っている。
①人格攻撃(日本政府から金をもらって書いた 等)
②モラルでの非難(「女性の人権」を持ち出す 等)
③過去の制度を現在の基準で批判
④レッテル貼り(歴史修正主義者 等)
⑤イメージ操作
⑥示した根拠を無視
⑦資料の捻じ曲げての解釈
⑧揚げ足取り
そして、論文撤回を叫ぶ学者たちの反論における
共通の思想は次のとおり。
①敗戦国日本は全ての悪の責任を負うべきだとする東京裁判史観
②被植民地国が不法に搾取されたとする日帝史観
③女性の権利を制限するすべての行為を
その背景の如何に関わらず非難対象とする
いずれも低次元で表層的な反論であり、
客観的証拠を伴わない感情論で支配されている。
そして、過去の出来事を
今の価値観で判断しようとする
間違った試み。
本書でラムザイアー論文本体を読み、
反対派の主張を読み、
有馬教授の反論を読んでいて、
暗澹たる思いがした。
真実に迫る論文を
寄ってたかってなきものにしようとする人々の
暗いメンタリティ。
一体どうしてそんなことが出来るのだろう。
70年以上前のことを
妄想で捏造し、
それを主張するだけでなく、
それに反する事実の提示を
総出で抹殺しようとする人々。
この歴史的嘘、
国家的冤罪を
いつまで続けるつもりなのだろうか。
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