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空飛ぶ自由人・2

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ナショナル・シアター・ライブ『ライフ・オブ・パイ』

2023年06月21日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

最近、英国ナショナル・シアター舞台の映像化作品が
相次いで公開されているが、
この「ライフ・オブ・パイ」もその一つ。

と題名を聞いて、驚く方もいるだろう。
原作は小説(作:ヤン・マーテル)だが、


2010年にアン・リー監督の手によって、
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(2012)
として映画化されたもので、


太平洋上で遭難沈没した船から逃れた少年が、
救命ボートでベンガル虎と一緒に漂流する話だからだ。
映画化の際も、CGによる虎の造形と、
海の表現が卓越しており、
その年のアカデミー賞では、
監督賞・作曲賞・撮影賞・視覚効果賞の最多4部門を受賞。

それを舞台でやる?
ボートはどうする、
海はどうする、
なによりも虎を始めとする動物達の表現はどうする?

という、注目の一篇。

227日の漂流の果て、
メキシコに流れ着いて救出された主人公16歳の少年・パイ
(元々の名前はピシンというが、
 おしっこと同じ発音で、
 からかわれたため、
 円周率πから来る名前を自分で付けた)
が、病室で日本の保険会社から派遣された調査員(オカモト)の
質問を受ける形式でドラマは進行する。
(救出直後の設定。
 映画では、20年程の時を経てから、
 小説家に話す形式)
パイの口からインドでの生い立ちや
父の経営する動物園などの話が出ると、
一瞬の間に舞台に動物園が出現し、
様々な動物たちが登場する。


動物の動きは、パペットで、
複数の人間がそれを操作する。


やがて一家は政治的な理由からカナダへの移住を決め、
貨物船に動物たちを乗せて出航する。


途中嵐に遇い、船は沈没、
救命ボートに乗ったパイは助かるが、
檻から出たシマウマやハイエナ、オランウータンなどが
ボートに乗り込み、
ついには、ベンガル虎まで乗って来る。

舞台の床からボートがせり上がり、
その周辺の嵐の海がプロジェクション・マッピングによって投影される。
すさまじい迫力。


他の動物たちを食べた虎と共に、
パイは知恵を使って、生き延びていく。
ところどころで、舞台は一瞬の間に病室に変わり、
再び一瞬の間に、大海原に戻る。
その場面転換の素晴らしさ。
演劇がこんなことまで表現できるのだという
可能性への挑戦。
その素晴らしさに、酔った。

なんといってもこの舞台の見どころは動物たちで、
単数または複数の人間によって操られる動物たちの造形と動きは圧巻。

「人食い島」の話は舞台では表現されず、
口で語られるのみ。
最後には、もう一つの真実が語られる。

イギリス演劇界最高峰のローレンス・オリヴィエ賞で
新作作品賞
主演男優賞(ハイラム・アベセカラ)、
舞台装置デザイン賞、
照明デザイン賞、
助演男優賞の5部門を受賞。
助演男優賞は、
動物たちを演じた7名のパペティア(操演家)に与えられた。

アメリカでも上演され、
トニー賞では、
装置デザイン賞・照明デザイン賞・音響デザイン賞の3部門を受賞。
演出賞・衣裳デザイン賞でもノミネートされた。

第1部と第2部の間で、
脚色のロリータ・チャクラバーティ
演出のマックス・ウェブスター
パペットデザイナーへの
インタビューがある。

シネ・リーブル池袋で上映中。
特別興行料金で一般3000円。



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