空飛ぶ自由人・2

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短編集『夜に星を放つ』

2022年08月07日 23時00分00秒 | 書籍関係

「書籍紹介]

かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、
再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける
窪美澄(くぼ・みすみ)による短編集。
5篇とも、星座に関連付けられ、
それがまとまって書籍の題名となっている。

「真夜中のアボカド」は、
一卵性双生児の妹を病気で突然なくした女性の、
マッチングアプリで知り合った男性と、
妹の元恋人との間で揺れ動く気持ちを描く。
月一度の元恋人との逢瀬が哀しい。

「銀紙色のアンタレス」は、
夏に海辺の祖母の家に訪れた高校生の少年の
初恋と失恋を描く。
そこに幼なじみの少女との関係がからむ。

「真珠星スピカ」は、
母を交通事故で失った中学生の少女の心の空白を描く。
死んだ母の幽霊が少女の家で一緒に住んでいるが、
父親には見えない。
少女は学校でいじめにあっており、
それが母親の姿を失うことにつながる。
最後に、物干し台で父が言う、
「母さんのことが大好きです。
今も大好きです。
あなたがいなくなって僕は悲しい。
本当に悲しい」
という言葉が涙を誘う。

「湿りの海」は、
離婚して、娘の親権を母親に取られ、
その上、再婚した元妻は娘を連れてアリゾナに行ってしまった男性の
娘への安着と孤独を描く。
隣室に引っ越して来たシングルマザーとその娘の交流を通じて、
孤独は深まっていく。

「星の随(まにま)に」は、
父母が離婚して、父が再婚した小学生の少年の
母への思慕と義母との葛藤を描く。

どの短編も、
家族という輪の貴重な一つが欠けてしまった哀しみ
低い旋律で描いており、心を打つ。
別れというものは哀しい。
一篇読み終えるごとに
本を置いてしみじみとした想いに浸る、
短編集を読む醍醐味を味あわせてくれる
好短編集。
先の直木賞受章作
受章にふさわしい作品だ。

 



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