空飛ぶ自由人・2

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小説『スイッチ』

2024年04月14日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

「時空犯」「ミノタウロス現象」と、
ユニークな作品を連発する潮谷験のミステリー小説。

ある大学で、奇妙なアルバイトの募集がされる。
勤務日数は1か月で、日当は1万円。
ヤバイバイトではないかと疑うが、
招集者は高名な心理コンサルタント。

定員6名で、
説明会に集まったのは、
大学の友人学生3名と
中国人の大学院生と職員、
卒業生の就職浪人。

説明会には心理コンサルタントの
安楽是清(あらきこれきよ) 本人が現れ、
あるベーカリーに案内する。
不利な立地のパン屋で、味はそこそこ。
家族経営で鹿原弘一夫婦と娘、それに双子の兄弟。
赤字で、安楽の援助がないと経営が成り立たない。
家族の印象は良いが、いかんせん、場所が悪い。

参加者は、安楽にスマホを渡される。
画面にはスイッチがあり、
スイッチを押すには、
各自の生年月日がパスワードになっている。
スイッチを押した時、
ベーカリーは破綻する。
具体的には、安楽の援助が打ち切られる
誰かが押すと、他の人のスイッチは無効になる。
実験の趣旨は、「理由がない悪」。
参加者には、毎日1万円が振り込まれ、
1か月が過ぎた後、
インタビューに応ずると、更に100万円がもらえるという。

主人公の箱川小雪は、逡巡の結果、参加する。
小雪は選択の必要があった時、
頭の中のコイントスによって選んでおり、
今回もそれに従ったのだ。

1か月の間、誰もスイッチを押さなかったらしい。
しかし、最終日、小雪が図書館でスマホを紛失し、
発見され、戻ってきた時には、
既に何者かによって、スイッチが押されていた。

一方、援助を絶たれたベーカリーでは、
ある事件が起こっていた。
妻によって、鹿原が殺され、
バラバラにされたのだ。

事件の真相は何か。
誰が押したのか。
どうやって小雪のパスワード(誕生日)が分かったのか。
こうした謎で追究が始まり、
小雪と鹿原との過去の関係などが現れて来る。
鹿原が過去に運営していた宗教団体の教義が明かされ、
スポンサーの安楽まで関係している。

そして、事件は更なる展開を迎え・・・

という潮谷ならではのユニークなストーリー
ただ、いくら安楽に資産があるといっても、
莫大を金をかけてやる実験の成果が
どれほどのものか納得できず、
小説世界を構築するための
無理やりの印象は否めない。
また、鹿原が過去に運営していた宗教団体の教義が出て来るが、
それも納得できるものではなく、
宗教論議は、正直言ってうざったい。
一般的に新興宗教を題材にした小説は、
こうした不納得性がつきまとう。
というわけで、
手が込んでいるわりには、設定が上手に生かされたとは言えず、
すっきりしないモヤモヤが残る読後感だった。

 



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