空飛ぶ自由人・2

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『赤い水曜日』

2022年11月23日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

タイトルの「赤い」は真っ赤な嘘、
「水曜日」は慰安婦支援団体が
ソウルの日本大使館前で繰り広げている
慰安婦に賠償を求める、「水曜デモ」を意味する。
副題に「慰安婦運動30年の嘘」とあるように、
30年にわたる慰安婦運動が真っ赤な嘘で成り立っている、
ということを明らかにする本。

↓は、韓国語版。

筆者は、慰安婦被害を訴える文書を徹底的に検証する。
その第一が、
挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)が発刊した
8冊の挺対協証言集だ。
挺対協は、慰安婦問題の急進的な市民団体で、
その名称に含む誤りから、2018年、
「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)と名称を変更した。
その代表の尹美香は、国会議員に当選している。

筆者は書く。

この本は、徹底して証拠を中心に記述した。
でないと大やけどしてしまう。
皮肉なことに、
執筆において最も役に立った資料は、
挺対協が発刊した8冊の挺対協証言集だった。

証言集には、元慰安婦だという婦人たちの
慰安婦になった経緯が証言されている。
しかし、その証言を検証すると、
日本軍によって慰安婦にさせられた、という証言は皆無だという。

たとえば、最もラジカルな活動をする李容洙は、
赤いワンピースと革靴につられて男に連いて行ったのであり、
たとえば、初めて慰安婦であることを公に申し出た金学順は、
キーセン学校を出た後、
金を稼ぐために養父と共に中国に向かったが、
その出発の駅には母親が見送りに来ていたという。
どこを探しても、日本軍の強制連行の痕跡はない
他の証言も、連行されたという年も、連れて行かれた場所も
証言の度に変わるばかりでなく、
慰安所が置かれていない場所に行ったりしている。

政府の女性家庭部には、
「慰安婦被害者法」に基づき、
240人の元慰安婦が登録されているが、
その240人全てを検証しても、
日本軍に強制連行された人は一人もいない。
「慰安婦被害者法」は、登録された元慰安婦たちに
金銭的補助をおり、
補助金の詐取ではないかと筆者は、
告発し、監査を要求しているが、
全てプライバシーを理由に棄却されている。

軍が慰安婦を徴用することなど、
手続き的に不可能で、
よく検証すれば、明らかなことであり、
仮に軍が「20万人」の朝鮮婦人を強制的に拉致しようとしたなら、
周囲が見逃すはずはなく、
大問題になっているのだが、
そんな歴史はどこにもない。

だから私は、「日本軍慰安婦被害者は一人もいない」と断言する。

第2は、荒唐無稽な判決文を検証する。
2021年1月8日出された
ソウル中央地方裁判所の
「日本軍慰安婦損害賠償請求訴訟」の判決文がそれ。
戦争末期、国家総動員法によって女子挺身隊が招集されたが、
朝鮮においては実際は発動できなかった。
その事実を認めない判決は、
日本の朝鮮半島統治を「占領」としたり、
間違いだらけの代物だ。
それまで造成された
慰安婦問題に対する嘘を全面的に取り入れた内容で、
そうした間違いの一つ一つを検証する。

どこから見ても、
この判決文は事実関係が全く合わない。
大韓民国の裁判部がどうしてこのような判決文を書いたのか、理解できない。

もう一つ、
ソウル中央地裁が2021年4月21日に出した判決文も俎上に上げて検証する。
これもことごとく歴史的事実を踏みにじる虚偽の判決であることを明白にする。

また、尹美香の書いた「二十五年間の水曜日」という本も検証する。
かなり情緒的な書き方で、
何も知らずに読めば、
日本軍によって少女たちが過酷な運命に陥ったことに涙し、
日本軍、日本、日本人に嫌悪感を抱かせるような内容だ。
筆者は、この本の内容の嘘を細部にわたり暴きたてる。

このように、著者は、元慰安婦たちの証言集や判決文などを仔細に検証し、
韓国での法的根拠になっている定義に照らし合わせて、
彼女たちはみな「日本軍慰安婦被害者」に該当しないことを論証している。
彼女たちは「前借金」を得て、合意の上で娼妓となったのであり、
暴力をふるっていたのは彼女たちの雇用主だったことを、
彼女たち自身の証言で明らかにしている。
「日本軍は慰安所で定められた費用を支払い、
性的欲求を解消する顧客にすぎなかった」のだ。

慰安婦は前借金をもらって抱え主と雇用契約を結び、
前線の慰安所で料金を受け取って性的サービスをした
職業女性であり、
客は日本軍だった。

そして、著者は、慰安婦問題の本質とは貧困だと言う。
加害者がいたとすればそれは日本軍ではなく
「ひどく貧しい国で自分の子どもを物のように売り渡した父母や、
それを商品のように紹介し紹介料を手にしていた斡旋業者、
そしてそれを性的商品として軍人や多くの男たちから金をせしめていた抱え主だった」
と主張する。
慰安婦には金銭が支払われており、
慰安婦に対する暴力など、軍によって禁止されていたので、あり得ない。

それが何時の間にか形を変え、
軍が強制的に女性たちを連行し、
軍隊内に閉じ込め、暴力で押さえ込み、性奴隷とした、
最後には終戦時、虐殺した、
という物語が出来上がってしまった。
日本軍のしたことは、戦争犯罪になり、
慰安婦問題は何人も疑問を差し挟めない、
「聖域」となっていく。

その背景には、40年近い朝鮮統治時代、
日本によって朝鮮人民が抑圧され、搾取された、
という思い込みがある。
日本は軍隊を送って朝鮮を統治したわけではない。
時の大韓帝国政権の要請で、国際的に見れば合法的に併合したにすぎない。
収奪の限りを尽くした、ヨーロッパ列強によるアジア植民地とは違い、
日本は国家予算の半分を使って、
朝鮮に対して同化政策をしたのであり、
その間、学校を建て、ダムを作り、鉄道を敷き、病院を作り、
衛生環境を整え、人口を増やしたのだ。
搾取する物品など、朝鮮にはなかった。
米を収奪した、というのは嘘で、実際は金銭を払って買い取った記録が残っている。

しかし、一時的にせよ、国を奪われた、という恨みが、
日本統治時代を、実際と違って悪く認識し、
「偽りの記憶」が浸透した。
そのように作られた記憶は、そう簡単にぬぐい去れるものではない。
国家が教科書を使って「反日教育」をしているからだ。
韓国の子供たちは、
こうした偽りの歴史を学んで、
幼い頃から日本に対する敵愾心を植えつけられる。
学校が、反日の若者たちを再生産しているのだ。

基本を知らない裁判長はデタラメな判決文を書き、
教科書執筆者たちは
誤った歴史を教科書に載せ、
子供たちに間違った歴史を教えている。
実に恥ずかしい。

なお、慰安婦の総数はおよそ8000人、
大部分が日本人で、
朝鮮人女性が30%の場合は2400人、
40%の場合は3200人となる、
という数字が載せられている。
妥当な数字で、
「20万人」がいかに荒唐無稽な数字かが分かる。
当時外地にいた日本軍人は300万人程度であるから、
15人に1人の慰安婦がいるはずがない。
少し考えてみれば、すぐ分かるはずだが、
訂正されずに、一人歩きしている。

読んでいると、
国家的嘘、民族的嘘にまみれた内容で、
胸くそが悪くなる。
嘘が嘘を呼び、それが民族的記憶となっていく恐ろしさ。

本書は、最後に、特別付録「そこにも愛はあった」として、
朝鮮人慰安婦たちと、日本軍人との間での恋愛感情の証言を掲載している。
どんな過酷な状況の中でも、
人の愛は育つ。
読んでみると、
純粋な気持ちの愛情交換で、
胸が熱くなる。
最後に救いとなる部分だった。

著者の金柄憲(キム・ビョンホン) 氏は、
成均館大学出身で在野の歴史研究者である。
「反日種族主義」同様、
韓国人たちの中から、
タブーに挑戦し、
真実を正そうとする動きが出てきたことは嬉しいことだ。

 


映画『ザリガニの鳴くところ』

2022年11月22日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

「2019年、2020年、アメリカで一番売れた本」
「全世界1500万部突破」
「2021年本屋大賞・翻訳小説部門第1位」
という、景気の良い原作本の映画化。

1950年代。
「ザリガニが鳴く」といわれるノースカロライナ州の湿地帯で、


一人の青年の死体が発見される。
櫓から落下したらしく、足跡は満潮で流され、櫓に指紋は残されていなかった。
近隣に住むカイアと呼ばれる女性、
キャロライン・クラークが犯人として逮捕され、
裁判にかけられる。

物語は、その裁判の様子と、
カイアの生涯が交互に描かれる。

カイアは、父親の暴力に耐えかねた母親がまず家から逃げ、
兄弟たちも次々と家を出て、一家離散
取り残された6歳のカイアは
ぐうたらな父と暮らしていたが、
その父親も何時の間にかいなくなり、
湿地帯の中にある家で独り暮らしをしていた。
カイアの収入の手だては、湿地帯でとれる貝のみ。
唯一の味方である雑貨屋夫婦の助けで何とか生き延びていた。

カイアは学校には行かなかったが、
幼なじみのテイト・ウォーカーから読み書きや計算を教わり、
いつしか2人の間には恋心が芽生えていた。
テイトは、カイアが描き貯めていた
湿地の動物たちの絵を見て、
出版社に持ち込むことを提案するが、
カイアは、その話にはすぐには乗れなかった。
テイトは大学に進学するために都会へ行き、
年に1度は会いに来ると約束したのに、
再び姿を見せることはなかった。
カイアは裏切られたと感ずる。

1965年。
19歳になったカイアは
近くの街に暮らす青年、チェイスと恋に落ちていた。
しかし、プレイボーイであるチェイスは別の女の子と婚約しており、
激怒したカイアはチェイスと別れることにした。

湿地の再開発の話が持ち上がり、
カイアの住む家の所有権が問題になった。
調べたところ、家の持ち主は祖父で、
滞納した税金さえ払えば、
カイアが相続できることを知った。
かつてテイトが提案したのを思い出して、
出版社に絵と文を送ったところ、出版することになり、
そのお金で、家はカイアのものになった。

ちょうどその頃、テイトが大学を卒業して故郷に帰ってきた。
テイトはカイアに、もう一度やり直したいと伝えたが、
カイアはテイトをすぐに許す気にはなれなかった。

別れを告げられた後も、チェイスは執拗にカイアに付きまとい、
ついには暴力的手段に打って出てきた。

そして、チェイスの死体が発見された。
カイアにはアリバイがあるにもかかわらず、
地元警察はを殺人容疑で告発した。
良い弁護士がついてくれたが、
陪審員は偏見のある地元住民だ。
判決は・・・

予告編でも宣伝でも、
ミステリー仕立てが強調されているが、
それは、ストーリーを引っ張るためのテクニックで、
本筋は、
広大な湿地帯で自然から生きる術を学ぶ
一人の少女の成長物語
湿地帯の持つ湿り気、深く生い茂る草木と得体の知れない深みを秘める沼、
水辺に生きる動物や虫などの中、
人と自然の「生」と「死」が交錯し、
美しい寓話に仕上がっている。

あの程度の状況証拠で逮捕する警察もどうかと思うが、
田舎の保守的封建的なコミュニティがそうさせたと言えるのかもしれない。
なにしろ、住民たちは、カイアのことを「湿地の娘」と呼んで、
異分子と見ていたのだから。
異質な存在への偏見と中傷が冤罪を生み出したのだ。

ラストで一ひねりがあるが、
では、行方不明の父も彼女の手にかかって、
湿地帯の中に沈められたのではないかと想像したのは、
私だけだろうか。

原作者↑ディーリア・オーエンズ
幼少期、母から「ザリガニの鳴くところまでいきなさい」と言って、
森で過ごすことを勧められ、
森の奥深くまで一人で入って行くと、
そこは自分と自然しか存在せず、
その空間では、ザリガニの声が聴こえると言う。
本来は聞こえないものでも、
自然を感じることで、聞き取ることができるのだとか。
母親の薫陶のおかげか、
ディーリア・オーエンズは、長じて、動物学者になった。
2018年、69歳の時、
初めて書いた小説が大ヒット。
広大な自然の中で育つ少女の話、
というのはアメリカ人好みか。
監督はオリヴィア・ニューマンで、
主役のカイアはデイジー・エドガー=ジョーンズが務めた。

5段階評価の「4」

TOHOシネマズ他で上映中。

 


Mリーグでの出来事

2022年11月21日 23時00分00秒 | 様々な話題

今日は、Mリーグの話。

読者の中には、マージャンに親しくない人も多いと思うので、
このブログで、たまにMリーグの話題が出ることをお許し下さい。

10月に開幕した、
プロマージャンリーグ・Mリーグの
2022~2023年シーズンは、
現在、4分の1ほどの日程を終了。

そのさ中、ある出来事が起こった。
感動的な事態が。

Mリーグは、シーズンとシーズンの合間に、
若干のメンバーの入れ換えが行われる。
今回は、3人のメンバーが新たにMリーガーとして登録された。
規定により入れ換えとなったパイレーツの鈴木優仲林圭


引退したベテランを補充したサクラナイツ渋川難波

Mリーグはプロマージャンの頂点で、
そこに選ばれることは名誉だが、
必ずあるプレッシャーにさらされる。
トップを何時取れるか

マージャンというのは、
4人で対局し、1人が勝って、3人が敗れるゲーム。
トップを取れば、50ポイントが加算されるので、
チームに貢献できる。
だから、トップを取るというのは、
至上目的なのだ。

既存のメンバーでも、
シーズンが始まって、一度トップを取ればほっとするような中、
新人3人はリーグ参加後の初トップをとにかく取らなければならない。
鈴木と仲林は4回目の登板で早々とトップを獲得したが、
一人渋川だけが残されてしまった。
この渋川という人は、別に特殊な事情があった。
というのは、この方、昨シーズンまで、
リーグの公式解説者として、
中継で解説していた人なのだ。
だから、
「偉そうに解説していたくせに、
たいしたことないじゃないか、と言われてしまう」
と本人も言っていた。

その渋川、エンジンがかからない。
6試合に登板して、2位・2位・4位・3位・4位・3位という成績。
それこそ「たいしたことない」である。
そして、7回目の登板となる11月7日の第1試合で、
更なる不運が渋川を襲う。
Mリーグの記録をことごとく塗り変える、
黒沢咲(雷電)の大爆発だ。

この試合、オーラスの親である黒沢咲が、
11連チャンを記録し、
11万2700点という、
Mリーグ記録を達成してしまったのだ。


(それまでの記録は10万5500点。
 11連チャンはタイ記録)


黒沢の親がなかなか終わらず、
試合が延び26局という新記録。(それまでの記録は23局)
時間も3時間28分というMリーグ記録。
時々、こういう絶好調の選手が出て来て、
卓上に嵐が吹き荒れると、
他の選手は、もはや被害者で、同卓したことを嘆くしかない。


その上、渋川は26局の間、
一度もあがれず、(リーチは6回)


マイナス4万7600点という、
Mリーグ最低記録を樹立してしまった。

ラスとなった上、最低記録まで。
もはや立ち直れないだろうと思っていたら、
第2試合に渋川が連投してきたので驚いた。
もしこの試合でもラスを引くことにでもなったら、
本当に立ち直れない。
大丈夫か、渋川。

この第2試合、
第1試合と全く逆に、するすると進んだ。
渋川は、
リーチをかけると、間チャン、辺チャンを積もるというラッキーさ。
そして、念願のトップをものにした。

その後のインタビューで、次のように説明していた。


第1試合で負けた後、控室に戻ると、
岡田紗佳(おかださやか)選手から「渋川さん、次もやりますか」と言われたという。
本当は岡田の出番だったのを譲ってくれたというのだ。


この岡田紗佳(サクラナイツ)という選手、
プロ雀士であると共にアイドルもやっているという変わり種。
傷心を抱えて戻って来た渋川を
このままでは帰れまい、と挑戦することを勧めてくれたのだ。
かわいいだけの人ではないと、見直した。
チームメイトを思い、再挑戦を促し、
それに見事に応えた渋川。
一つ間違えれば、危険な賭けとなったこの経緯。
Mリーグが団体戦であることを
改めて認識させてくれた出来事だった。

その4日後の11月11日。
同じようなことが起こる。
第1試合で本田朋広選手(パイレーツ)が、不運な高い振り込みを繰り返し、
ラスに沈む。


しかし、第2試合を連投して、
トップをもぎ取った。


元々連投の予定だったそうで、
本人はラスで終わって連投はないかな、
と思って控室に帰った時、連投を告げられたという。
チームメイトの後押しで再挑戦し、
それに応えた渋川と本田

Mリーグにさわやかな風が吹いた。

 


小説『ぼくらに嘘がひとつだけ』

2022年11月19日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

長瀬京介は、3代にわたる棋士の家系に生れた少年。
朝比奈千明は、落ちこぼれ女流棋士の息子。
二人の少年は、共に「中学生棋士」を目指し、
奨励会で知り合い、親友になる。
二人の親である長瀬厚仁・梨穂子夫婦と朝比奈睦美は、
一時代前に棋界をにぎわせた三人組だった。
その後、梨穂子と睦美は引退し、
厚仁は、48歳の今日まで、まだタイトルを獲得できずにいる。

京介と千明は、お互いの家庭を行き来する仲になるが、
千明は、ある時、
「千明の方が長瀬家の息子みたいだ」
という声を聞き、
実際、梨穂子と自分が似ている、と思うようになる。

実は、同じ病院で一日違いで生まれた二人は、
病院の小火騒ぎの中、リストバンドが付け替えられ、
取り違えられていたのだ。
それは、厚仁たちの若い頃を描く
第一部で明らかになっているのだが、
疑いが膨らんだ結果、
二人はDNA鑑定をして、
それぞれの親が違うことに気づいてしまう。
その事実は厚仁たちも知るところとなり、
病院は非を認め、
通常、実子の養育に至る前例から、
試験期間として交換生活を設けることになる。
千明の方はすんなり長瀬家になじむが、
京介の方は、母親の睦美と違和感一杯の生活となる。

家族とは一体なんだろう。
何をもって、それを絆と呼ぶんだろう。

という、「新生児すり替え」を背景に置き、
少年棋士の才能の開花、その悩みが描かれる。
過去と現在が行き来して、
時間は錯綜し、視点もどんどん変わり、
厚仁と国仲遼平との友情物語や
父親との確執も描かれる。

そして、
「棋士にとって、
遺伝子と環境は、
どちらが重要か?」
という大きな命題が全体を覆う。

私は将棋は指さないが、
将棋を知らなくても、
棋界の昇進の仕組みが分かれば、
楽しむことは出来る。
アマチュアであれば楽しむだけでいいが、
プロ棋士の勝負の世界の過酷さはすさまじい。

物語は二転、三転するが、
特に、最後の60ページの
展開は息を飲む。
更にラスト10ページは圧巻

カッコウの「託卵」も背景に存在する。

託卵(たくらん)・・・
カッコウのメスはモズの巣に自分の卵を産みつけ、
モズに卵を育てさせる。
カッコウの卵は、一足先にかえりヒナになると、
他のモズの卵を巣の外に落としてしまう。
自分の子供と信じて、カッコウのヒナを育てるモズの姿があわれ。

 

 


映画『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』

2022年11月18日 23時00分00秒 | 映画関係

 [映画紹介]

ギレルモ・デル・トロといえば、
「パンズ・ラビリンス」(2006)や「パシフィック・リム」(2013)の監督で、
「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017)では、


ついにアカデミー賞作品賞監督賞を獲得したお方。

その名を冠した
「ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋」がNetflixで公開された。
「奇才ギレルモ・デル・トロ監督の脳内ノートを映像化した全8話の狂ったアンソロジー」
というのがうたい文句で、
「世にも奇妙な物語」のタモリなみに
各話のオープニングにギレルモ・デル・トロが登場して解説するが、
「世にも奇妙な物語」よりも、ずっとエグい。
とても地上波では放送できないような内容。

ギレルモ・デル・トロは全エピソードの
モチーフになった怪物のデザインや脚本・制作に関わっている。

 

第1話「ロット36」

貸倉庫を借りていたウォルマーという男性が死亡したので、

ニックは中のものも含めてまるごと買い取った。
ウォルマーはこの貸倉庫に毎日来て1時間半滞在し、
奇矯な行動をしていたらしい。
ニックは倉庫で降霊用テーブルを見つけて骨董商に持っていくと、
テーブルの中には「悪霊」「シンボル」「災禍」という3つの書物が入っており、
ローランドという目利きが店にやってきて、
第四の書「サクラメント(七つの秘蹟) 」が揃えば30万ドルで買い取るという。
ニックとローランドは貸倉庫に第四の書を探しに行く。
目当てのものは見つからなかったが、
倉庫の奥が空洞になってきるのを発見し、
そこには、秘密の儀式をする間があり、
その結界の中に行方不明になった人物が腐敗したまま置かれていた。
ウォルマーは、この死体の保管状態を毎日確認しに来ていたのだ。
ニックはその奥に第四の書を見つけ、欲にかられて、
その結界を破ってしまう。
すると死者がめざめてしまい・・・

この死者の造形が、ものすごく気持ち悪い。
体はボロボロで顔面は穴状になっており、
中に大きなミミズがウネウネしている、という具合だ。

 

第2話「墓場のネズミ」

かつて歴史の教師だったマッソンは、
今は落ちぶれて墓場の管理人をしながら、
夜は墓荒らしをしている。
死体から宝石や金歯を盗んで売るのだが、
最近はネズミが棺桶に穴を開けてものを持ち運んでいるようだった。
ある金持ちの老夫人が
棺桶にジョージ国王のサーベルなど高価な品を入れるつもりだと聞き出したマッソンは、
金持ちの葬式が終わると
さっそく墓を掘って棺桶を開ける。
しかし死体はそこになく、穴が開いている。
死体はネズミたちに引きずられて地下に開いた穴の奥に運ばれていったらしい。
マッソンは迷路のようになった墓の奥までサーベルを探して入っていくが・・・

マッソンは墓の奥で死体から宝石を奪おうとするが、
死体が「私のだ~」と追いかけて来る。
最後には膨大な数のネズミに襲われて・・・
墓荒らし青年2人が墓を掘ってマッソンの死体を見つけると、
その口からネズミたちが現れて・・・
というグロテスクの極み

 

第3話「解剖」

胃がんで余命半年を告げられた司法解剖官のカールは、
古い付き合いの田舎の保安官に呼び出され、
炭鉱の大爆発で死んだ9人の死体の解剖を依頼される。
犠牲者の遺体には心臓まで達する刺し傷があり、血が抜かれていた。
「逃げろ」という心の声が脳内でこだまする中、カールが解剖を続けると、
死体の一つに地球外の未確認生命体が取りついており、
その死体が蘇って・・・

グロテスクな死体解剖シーンのオンパレード。
なにしろ、カールは自分の体を解剖するという、セルフ解剖までする。
カールを演ずるのは、
「アマデウス」のサリエリ役でアカデミー賞主演男優賞を獲得した
F・マーレー・エイブラハム

どの作品も、とにかくグロいシーンの連続で、
悪趣味そのもの。
そういう映画を好む人には大好物だ。
私もその種の映画は観るが、
それでも、さすがに、この悪趣味ぶりには辟易して、
第3話で、続いて観ることを断念。
そういう趣味の方は、どうぞ。
アカデミー賞監督のありのままの姿を発見するような映画シリーズ。