「映画は映画館で観る物だ」という意識は子供の頃から無かったが、待っていれば観たかった物が好きな時に観られる時代では無かったので、金を持って名古屋まで出かけた。友人と観た「ポセイドンアドベンチャー」が家族と別に映画館に行って観た最初の映画だった。もっともそれまで親に連れて行ってもらったゴジラ映画もガメラ映画も親は映画館の中まで付き合ってはくれなかったが。周りに映画マニアが居なかったので芸術的な名作映画は知らずに過ごした。日常ではまず起こり得ない光景を見る事が出来なければ意味が無い。私にとって映画とはそう云う物だった。
東京都杉並区のアパートに住んでいた頃、江東区の小さな印刷会社に勤めた。社会人になって二番目の職場である。地下鉄東西線「門前仲町」駅から徒歩五分の所にその会社は在った。(今も在るかは分からない)国産のオフセット単色機が二台で手狭な工場だったが家庭的な会社だった。カラー印刷の基本色がマゼンタ、シアン、イエローの三原色である事は美術の教科書に載っていたが、実際にその色が重なって行くのを見るのは楽しい物だった。現実にはこの三色に黒を足して画像に輪郭を付けたり、淡色を足してカラーに深みを付けたりする。試し刷りの時にその四色を一枚ずつ刷った物を持って帰り、それを参考にしてカラーインキをエアーブラシで四回吹き付けて絵を描いた。狙った色が出ず、もう一色足した。満足のいく物は出来なかったが想像と違った物が出来てしまう面白さを知った。
1966年に放映されたこのテレビ番組は当時の子供達に人気があった。私も夢中で見た。日本初の怪獣番組と紹介されるが、内容は怪獣一辺倒ではなく人間サイズの怪物が登場したり、人間そのものが心理的にパニックに陥る様子を描いた物まで様々であった。対するのはあくまで人間(というか日本人)であることが後発の特撮番組とは決定的に異なっていた。同番組が参考にしたとされる海外テレビドラマ「ミステリーゾーン」「アウターリミッツ」が不思議現象を軸にモンスターを登場させたのを発展させて作られた物とされる。再放送される事があれば確認したい。当時の東宝円谷特撮映画の色が最も濃く、独特の雰囲気を持っていた。小学校の高学年にさしかかる年齢になっていた私には「ウルトラマン」の登場から怪獣番組が全てヒーロー物になってしまった事に少し失望した憶えがある。
中学生の時、図書館で一時いつも見ていた本があった。タイトルは憶えていないが精神医学の子供向けの専門書だった。内容を忘れたというより本文を殆ど読んでいなかった気がする。美術の教科書で見たゴッホの絵が何点か年代別に取り上げられ、精神の異常が進行するにつれ彼の目には景色の見え方がコウいう風に変化して行ったのだと説明されていた。ゴッホの絵の評価は高いが本当の芸術としての評価と、別に存在する現実の一枚幾らといった値段の価値付けの評価のしかたには何か違和感を感じる。IT企業がテレビ局の株を買う事で支配したいのか共存したいのか知らないが、ITバブルが何時弾けるかといった事の恐れから来る焦りのような物があるのだろうか、と思う。今現在、六本木ヒルズに住む連中にとってのお金の価値は私には計り知れない。
今年の日本シリーズはロッテの為に在った。去年からプレイオフ制度を導入したパリーグの試合形式もロッテ優勝の為に在ったのかも知れない。ソフトバンクは気の毒だったが、主力城島を怪我で欠いたソフトバンクと戦えなかったタイガースも気の毒と言えたかも知れない。ただ、ロッテとタイガースの力の差が10対1も開いていた筈は無い。そこが勝負事の怖さであり面白さなのだ。勢いだけで勝てる訳では無い。が、短期決戦では実力を存分に発揮し切る為のタイミングが必要なのだ。何しろ一つも勝てずにシリーズを終えたタイガース岡田監督の事を思うと、居たたまれない気持ちだ。(ウソ)