茶道を始めて間もない生徒からの質問は、勉強になります。
私にとっては今や当たり前になってしまったことを改めて考えることができるからです。
二人、三人一緒に割稽古を始めて、見よう見まねで点前をしていた時は、生徒たちは自分の動きだけに集中していました。
やがて一人ずつ点前の稽古をするようになると、ある時は亭主、ある時は客をすることになります。
亭主と客をし始めると、点前の順番以外に、
自分がどこで何をするのか、声をかけたらいいのか、という学びが加わります。
点前 + 人とのコミュニケーション(かかわり)が大事になってきます。
「お菓子をどうぞ」
「お先に」
「お点前頂戴致します」
「お仕舞にさせて頂きます」
亭主は自分の点前だけに集中していると客にお菓子をすすめることを忘れたり、おしまいの挨拶を忘れたり。
客は抹茶を飲む手順を考えていて、お隣の方にお先にを忘れたり、亭主に頂戴しますの挨拶を忘れたり。
これも回数を重ねて身につき、自分の動きに余裕と自信が出てくれば自然にできるようになるので、とにかく経験をしていくことです。
これらの言葉も最初は言われるままに発していたわけですが、
今となっては本当にタイミングも言葉自体も練られた内容だとつくづく思います。
先日は、亭主がお茶を出すタイミングと、客がお茶を取りに行く、飲むタイミングの話になりました。
亭主がお茶を点て終わって茶碗を出した時に、まだ客はお菓子を食べきれていなくて茶碗を取りに行けないということが何度もおきました。
「どうしたらいいんでしょう?」
亭主と客それぞれに私が声をかけながら同時に教えているということもあるし、慣れない客もお菓子をすすめられてから懐紙にとって食べるまでに時間がかかってしまうので今は仕方がないことです。
今はタイミングが合わないけれど、
例えばお客さんがお菓子をまだ食べている、食べきれないなと思ったら、亭主はゆっくりお茶を点てる、
お客様もお茶がもう点ちそうだと思ったら急いでお菓子を食べる、
などお互いに配慮ができるようになるといい、という話をしました。
すると、小学生から、「相手は小さくて熱いお茶が飲めないかもしれないから早めに点てて冷ますのは?」という質問が出ました。(亭主は5年生、客の妹は2年生)
なるほど、それも配慮だから大事なことね、と答えました。
タイミングといえど一つではない、ぴったり合わせることだけが正しいわけでもない、ということを教えてもらった気がします。
例えば抹茶の濃さも、基本は抹茶を茶杓で1杓半(2グラム)だけれど、
小さい子は苦いのは嫌いかもしれないから抹茶を少なめにするとか、全体の量も少なくするとか、
この方は喉が渇いているかもしれないから多めに点ててあげようとか、
お客様の状態に応じてお茶を点てることも大事になるという話をしていたので、思い付いたのかもしれません。
茶道を習うとそういった配慮ができ、相手への思いやりが自然と身に着くのだなあと思った出来事でした。
一つ一つのことから考えをめぐらし、学んでくれているようで成長が眩しい。
お稽古していて忘れることの多い所作に、茶碗を回す動作があります。
亭主は点てたお茶を茶碗の正面を客に向けて出す、
客はお茶を飲むときに、感謝をし、正面をよけてから頂く、
飲み終わったお茶碗を返す時には正面を亭主の方に向けて返す、
とにかく、美味しいお茶を出すには最後まで気が抜けないのよ~、
美味しいお茶は簡単には飲めないのよ~、
感謝して心を落ち着けてから飲むのよ~、
正面を大切にする、相手に向ける、この一動作が大事なのと話しています。
茶道歴33年、これまで何百杯?何千杯?の抹茶を飲んできた私には、茶碗を回すという動作は当たり前のことになって、さっさと形式的に回していましたが、改めて大事なこと、意味のあることなんだなあと思わせてもらえる瞬間でした。
教えるということには責任が伴い、
自分も日々勉強精進しなくてはと気の引き締まる時間であると共に、
生徒の眩しいほどの成長を目の当たりにし、
生徒から与えられる気づきにハッとし、
新しい視界が開けていくのがなんとも心地よく幸せな時間でもあります。
私もお教えすること始めてウン十年になりますが、初めの頃は盆略点前も事前に何回も予習したりしていました。あいまいなことも間違ったことも言ってたリ今から考えると恐ろしい限りです。
本当に茶遊庵様が最後にお書きになったこと私も同感です。
間違ったことをお教えしてしまったり 言った時はすぐ生徒さんに謝ることも大切と自分に言い聞かせています。
今も前の日には稽古する項目を予習しています。
コメント頂き、嬉しいです。
ありがとうございます。
こども、大人、ほとんどが初心者、
私自身は先輩をまねて茶道を学んできましたが、茶遊庵はほとんどプライベートレッスンに近いので、直接質問が沢山でます。聞きやすいということもあるようですが、私も勉強になっています。
先生のおっしゃる通り、人に教えるにはいい加減なことはできず、私自身も改めて細かい部分まで学び直している感があります。この初心を忘れず、生徒一人一人と誠実に向き合っていきたいと思います。
精一杯、茶道の良さ、素晴らしさ、楽しさを伝えていけたら。。。。頑張りますので、今後共アドバイスをお願い致します。