茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

人間国宝

2006-02-13 20:59:22 | 日本マメ知識
 日本橋高島屋で年明けに人間国宝展というのをやっていた。
昭和30年に制度が始まり、これまで工芸技術の部では149名が認定され、うち56名が現役で活躍、制度制定50周年を記念しての作品約160点が飾られていた。
 何気なく聞く言葉ですが、“人間国宝”制度のことを私自身はっきり知らなかったので調べてみました。既に展覧会は終わっていますが、おつきあい下さい。

 文化財保護法に基づき認定された芸能/演劇/音楽、工芸技術などの無形文化財のうち、日本の歴史、芸術上、特に重要とされるものを重要無形文化財と指定している。その受け継がれる芸と技を高度に体得した最高峰が、重要無形文化財保持者、これがいわゆる“人間国宝”。つまり、“人間国宝”の呼名は重要無形文化財保持者の通称、俗称なのだ。

 今回の人間国宝展で飾られていたのは、工芸技術の部の認定者作品で、分野としては、
●陶芸(色絵磁器・鉄釉陶器・志野焼・萩焼・備前焼・唐津焼・色鍋島・柿右衛門・染付・白磁・琉球陶器・鉄絵・小鹿田焼・青磁・三彩・常滑焼・彩釉磁器・釉裏金彩・無名異焼など)
●染織(江戸小紋・友禅・正藍染・小千谷縮・型絵染・羅・唐組・結城紬・久留米絣・有職織物・喜如嘉の芭蕉布・宮古上布・紬織・佐賀錦・紅型・綴織・刺繍・読谷山花織・芭蕉布・経錦・久米島紬など)
●伊勢型紙
●漆芸(蒔絵・彫漆・沈金・蒟醤(きんま)・輪島塗・螺鈿など)
●金工(銅鑼、彫金・蝋型鋳造・茶釜・鋳金・象嵌・梵鐘・鍛金など)
●刀剣
●人形
●木竹工
●諸工芸(截金・撥婁(ばちる、るは本来カネヘンが入る)など)
●和紙(越前奉書・雁皮紙・本美濃紙・石州半紙・細川紙など) 

 芸能の部での認定には、各個認定と総合認定の二種類がある。各個認定は個人に対するもの、総合認定は芸能家の集団に対するものだが、俗称で人間国宝という時は各個認定を指す場合が多い。
 各個認定されているのは
●能楽(シテ方・ワキ方・笛方・小鼓方・大鼓方・太鼓方・狂言方)
●人形浄瑠璃(太夫・三味線・人形方)
●歌舞伎(立役・女方・ふけ女方・長唄・脇役・囃子)
●音楽(義太夫節・常磐津節・清元節・長唄・一中節・河東節・地唄・筝曲・尺八・琵琶・琉球古典音楽など)
●落語
●講談
など多岐に渡る。
 総合認定されている集団としては、例えば、宮内庁式部職楽部(雅楽)、社団法人日本能楽協会、人形浄瑠璃文楽座、社団法人伝統歌舞伎保存会、伝統組踊保存会、義太夫節保存会、常磐津節保存会、一中節保存会などがある。

 日本には本当に色々な技がありますね。こうして書いてみると幅の広さに驚きます。もちろん、認定されていない方の中にも切々と昔の技を引き継ぎ磨いてすばらしいものを作っている方がいるのだと思いますが。昔のものや芸は1つを作り上げるのに時間がかかる分、やはり美しい存在感のある作品が多い気がします。

 以前、国宝という言葉の由来についてお話しましたが、国宝の原点は“人”でした。現在は言葉の上では国宝といえばモノを指し、人間国宝と言って始めて人間を指しますが、今も最終的には人が何よりの国の宝なのでしょう。日本の教育・社会制度はうまく人を育てられるように機能しているのでしょうか。

国宝という言葉の由来については以下の“国宝と油断大敵”をご参照ください。
http://blog.goo.ne.jp/m-tamago/e/ea4dbc84cd1252e98f36fe9638542140

この本、ちょっと覗いてみたい。人間国宝の茶道具とはいかなるものか。
**人間国宝の茶道具 中ノ堂一信編集 淡交社 3975円

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8 コメント

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Unknown (渋樹)
2006-02-14 23:04:07
人間国宝はほんとに多岐に渡っていますね。

自分には見る目が全くありませんが、良いものは良いんでしょうねぇ。
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各個認定と総合認定 (albireo)
2006-02-14 23:15:45
国立能楽堂のパンフレットの出演者紹介ページで、各個認定と総合認定という言葉を初めて知りました。

その時に、色々調べて、やっと意味が分かりました。

あの時、m-tamagoさんのこの記事のように、分かり易く書かれたものがあったら良かったのに・・・。

本当に、よく調べて、上手く纏められていますね!
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関心と理解 (スジャータ)
2006-02-14 23:39:10
人間国宝 陶芸の部門では少しは聞いた事があったりしますが、

他の分野でこんなに沢山あるとは知りませんでした。

たまごさんは本当によく調べておられてびっくりです。

日本のすぐれた文化や長い時をかけて培ってきた技術を

後世にしっかり残して(保護)おく事が大切ですね。





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人間国宝体験 (ukiki01)
2006-02-15 01:55:37
昨年初めて歌舞伎を見たのですが、尾上菊五郎さんて人間国宝なんですよね。

その菊五郎が二役を演じるという舞台(『十二夜』演出は蜷川幸雄)を見ました。

いやあ、よかった。

味があると言ってしまうとそれまでですけれど、お見事でした。

国宝を目の当たりにできるなんてラッキーだとつくづく思いました。
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人間国宝 (m-tamago)
2006-02-15 20:06:09
渋樹さん、こんばんは。

人間国宝というと、歌舞伎役者の名前をよく耳にするのですが、実は色々な分野でいらっしゃるのだなぁと思いました。

私も見る目はないので好きどうかで見てしまうのですが、良いものはいいんでしょうね。

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各個認定と総合認定 (m-tamago)
2006-02-15 20:13:50
albireoさん、こんばんは。

お褒め頂きありがとうございます。

展覧会に行って、そういえば文化財や国宝って言葉では聞くけれどはっきり知らないかも、と気づきました。各個認定と総合認定も私は今回初めて知りました。



きっと、人間国宝は、一生懸命自分の芸を磨いていたら認定がついてきたって感じなのでしょうね。でも、人間が選ぶものだから、実はすばらしい芸をもっていても認定されていない方もいらっしゃるのかもと思ったりします。



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関心と理解 (m-tamago)
2006-02-15 20:18:32
スジャータさん、こんばんは。

そうなんです、本当に色々な技や芸があるのでびっくりです。

おっしゃる通り、日本のすぐれた文化や技術を後世にしっかり残したいですね。

学校教育等で子供達が文化財や国宝のことを耳にしたり、目にしたりする機会がもっとあると、日本文化に対する気持ちや興味が育って、それがいい保護にも繋がっていくと思うのですがね~。なかなか。
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人間国宝体験 (m-tamago)
2006-02-15 20:27:00
ukiki01さん、こんばんは。

歌舞伎見に入ったのですね~。尾上菊五郎、名前は聞くけどナマで彼の歌舞伎を見たことないなあ。

工芸技術はモノとして後世に残るけど、芸能は次の人に伝えることで残すという意味でまた特殊だよね。同じものを伝えても全く同じにはならないだろうし。年を重ねて芸に深みを感じる時、やっぱりすごいと思ってしまいます。

私は人間国宝 茂山千作さんの狂言が見たいと思っています。

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