どういうわけか私には全然わからないのだが、
体よりも大事なつごうがたくさんあって、
体はいつでも後回しにされる。心もそうだ。
それをしてでもしたいことがあるわけでもないのに、
そうなる。
それが人間の、人間だけしかいない社会の特徴だった。
雨でも晴れでも嵐でも予定は変更されないし、
電車も動いている。電話も通じる。
だから、体もなんとか動いてくれよという感じだ。
それでうまくすれば普通に寿命をまっとうできる、
医学や手術の恩恵にもちょうどよくあずかれるけれど、
下手なほうに転んだり、ストレスが高かったりすると、
きちんと寿命が縮む。
彼は今、大切なものがなんにもないから、
とにかく不安をなくすためにとりあえず手術しようと思ってしまっているのだ。
それは、とても悲しいことに思えた。
徹夜も、疲れているときの運動も、手術も、薬も、
大食いも、菜食も、目的があってこそすることだ。
そしてその目的とリスクが折り合っているときは、最高の力を発揮して、
求めていた結果を得ることができる。
でも、リスクを負うことを全く考えずにタイミング悪く実行すれば、
ただ寿命が縮む。
私のような小娘でもわかるその簡単なしくみを、
どうもみんなあまりよく知らないで闇雲に進んでいるようなのだ。