荒野のただなかにたつ5星ホテル「プーム・バイタン・ザニアー」⑧
壁のわずかなスリットの内のり面が、ちゃんと出来ているのか仕上がっているのか気になるので、あらためて見に来ることにした。
壁と言っても、刑務所の壁ではなく、殺伐とした荒野のただ中にある、リゾートホテルの1100メール四方を囲んでいる壁で、30メールごとに開けられたスリットの内のひとつを、外側から覗いてみた。このスリットは外側から内側を覗くために作られたものかと思う。スリットの幅は2センチ足らずでとても風が通るとも思えないし、リゾートホテルの内側からこのスリットを通してわざわざ外側を覗く人も少ないと思う。30メールごとにスリットを通して入って来るわずかな光など全然必要ないし、そんな光など誰にも気付きもされないだろう。そう考えるとやはり、この壁をデザインしたパリの一流建築デザイナー、レダ・アマロー氏の気まぐれか、遊びか、そういうデザインがヨーロッパで流行っているのか、流行らせようというのか、流行っていないのか?とにかく何かの理由があるのだろう。私などは、スリットから内側のリゾート風景を覗いてみて、すぐに想像したのが、子供の時読んだ、ジュールベルヌの地底探検で恐竜に追いかけられて地底の割れ目から地上にやっとたどり着いた時の開放感だ。
ともかく、スリットの内のりの出来を確認出来たが、やはり、かなり荒いつくりで、奥行き26センチの壁に開けられた2.5センチ幅のスリットの内のりの両側から仕上げのペンキを塗ってあるが、指が入らず筆が届かない中程は、ペンキが塗られずに汚い地がそのまま残っていて、なおかつ狭いので塗りにくいのか筆の跡がバラバラぐねぐね。そしてスリットの中は、オープンして半年しかたっていないのに、埃とゴミ、蜘蛛の巣、虫の死骸などで満載。でも、そんな中を調べる人はスタッフ、お客を含めていないのでしょう。近くに寄ってくる人、気付く人もいないのだろう。
↑すでにひび割れだらけの外壁
その辺は気にせずに、あまり近くに寄らず、ある程度距離をおいて、スリット越しにリゾート風景を眺めると、美しいリゾートの光景がスリットの隙間から、目に飛び込んで来て、とても素晴らしい開放感のある心象風景とも呼べるような感覚を味わう事ができた。