荒川弘著。
15年かけて読み切りを1冊にまとめたそうです。
今、中国からの批判にあっている1冊としても話題になっています。
ここから先はネタバレを少し含むので、ネタバレを知りたくない方は、ここから先はお読みにならない方がいいです。
日本を舞台に、死体を取引てしマッドな博士が人造人間を作るコメディです。
表情の女性が博士、表情の白い男性が人造人間。
死体取引は、有名な科学者や肉体自慢の方ほど高額で一般人はお買い得価格。
で、中国で批判されているのは、日本人の毛沢(けざわ)東(ひがし)さんが登場するから。
これには理由があって、作者の荒川弘さんの代表作「鋼の錬金術師」の海賊版が中国で横行しているのを作者は苦々しく思っていたから。
この漫画はその海賊版を発行できないようにするために作られたキャラクターです。
中国当局が海賊版の取り締まりをちゃんとやっていれば、日本の漫画家には正当な報酬が入ります。
でもかの国では取り締まりがユルユル。
それなら海賊版が発行されたら、取り締まりをせざるを得ないモノを作ればいい、ということだそうです。
日本人の毛沢さんとはいえ、面子が立たないキャラクターをかの国では放置はできないから。
私は荒川さんの行動は仕方がないことだと理解しています。
かの国の当局が海賊版を取り締まらないのなら、日本人漫画家の対価を還元することはできません。
それなら海賊版を取り締まる方法を漫画家が工夫して編み出すしかありません。
内容はマッドな博士と人造人間の話なので、荒唐無稽です。
読んでいてふと、死体から人造人間を作り続ける世界は、種としての進化はしないんだな、と思いました。
人体のリサイクルに過ぎないので、人造人間を作り続けたら、最終的に人口減少が加速して、種の多様性を手放すことになります。
それに死体からの人造人間は倫理的な問題を含めて将来に渡って研究されることはないように思います。
だからファンタジーの世界のお話とはいえ、なかなかのドタバタ展開で面白かったです。
人造人間を研究するよりも、私には、荒川弘さん自体が超人的だと思っています。
だってお子さん3人出産しても、連載をお休みする事は本当に短く、しかもご家族の介護でも多少セーブしても、しっかり漫画家活動をされています。
同世代の星です。
あ、荒川弘(あらかわひろむ)は、ペンネームで男性っぽいけれど女性です。
当初は少年誌に掲載するには男性っぽいペンネームの方がいいだろう…ということだったみたいです。
そういう漫画家さんは他にもいらっしゃいますが、作品が面白ければ作者の性別には拘らない時代に早くなってくれればいいな、と思っています。