先月までひたすら海外文学だったせいか、今月は妙に日本文学読みたくって
ほぼ日本文学縛りとなりました
森鴎外
●「高瀬舟」
「安楽死」についてが主軸に思える作品です。
森鴎外も医者だったので色々思うところもあったのでしょうか。
病気で動けず、近く死ぬのは分かっているのになかなかその時が来ない。
ただ兄の足を引っ張って生きているような自分が情けなくて早く兄を解放しようと弟は自殺を図ります。
でも、自殺に失敗し大変苦しい思いをしているところに兄が帰宅。兄は助けようとしかますが弟は早く楽にしてくれと頼みます。
あの場にいるのが自分だったら…この弟が自分の身近な人だったら…と思うと心底やり切れません
でもこれは身近にある永遠のテーマですね~。
兄は結局弟を殺害したとして島流しにあいますが、罪人とは思えないほがらかな表情。
「足るを知る」ことも、この作品に教えて貰いました
●「山椒大夫」
なんともやり切れない小説です
母、姉弟、お手伝いさんが人買いに騙され攫われるのですが、
移動中船の上から真っ先にお手伝いさんが自殺したところを見ると人買いに売られる位ならさっさと死んだ方がマシなのでしょう。
母親と姉弟は引き離されて、姉弟の方は山椒大夫に買われます。
意外だと思ったのが、奴隷とはいえ恐らく山椒大夫の元はそんなに悪い環境ではなさそう。
夜寝る時、姉弟を引き離そうとしても2人は嫌がるので一緒の部屋に。
山椒大夫の息子達もアフターケア?万全。
姉は時間稼ぎの為に結局弟と共には逃げなかったけど、本当に強い芯の持ち主だと思いました。
最後はハッピーエンド
…なんてこともなくただただ切ない・やり切れないばかりですが
文学としては大変楽しめました。
●「雁」
森鴎外の中では今までで一番好きかも。
妾にならざるを得なかった女性と、学生の恋の話ですが、
お互い話したこともなく毎度会釈のみのやり取りでこれだけ切り取ってみると10代のキラキラした青春の様に感じます
高利貸の妾・お玉の日々生活の中での心情の描写も切ない。
タイトルの雁については後半に急に出てきますが、あの場面からが2人の運命の別れ道なんですね~
話の展開の仕方がとても面白い小説になっています。
●「舞姫」
上記の雁や高瀬舟の後だったので、口語訳で作風が違うのにはまた別の面にも浸れて嬉しい。
おかしな話だけど口語訳だからこそ異国情緒を感じる
ああいう結果になってしまい切ないけど、当時のエリートはお国の為に尽くさないといけないので、自分の感情で好きな様にはふるまえない。
最後の「相沢は大変良い友人だが憎まずにはいられない」の一文が突き刺ささる
どうしようもないのは自分でも分かっているけど、人間は機械じゃないので割り切れない。
樋口一葉
樋口一葉、初めて読みました。
何で今まで読んでなかったのか…後悔です
なんて素敵な文章を書かれるんでしょう
旧仮名遣いの作品は数点読んできたけど、樋口一葉の文体の美しさは唯一無二の存在だと感じました。
●「たけくらべ」
吉原に住む、将来は遊女になる女の子・美登利と
将来僧になる予定の男の子・信如の大人になる前の切ない恋物語
お互い将来の道が全然別物なので叶わぬ恋ではあるのですが、思春期特有の甘酸っぱさと切なさが
綺麗な文章で綴られています。
●「にごりえ」
よく「たけくらべ」と2大主要作品として挙げられるみたいですが
私は「にごりえ」派だな
こちらも遊女の話になりますが、遊女にのめり込み破産してしまった男の奥さんと子供が不憫でならない…
最後のあの結果は、私は合意の上だと思いました。
●「十三夜」
貧しい女性が金持ちの夫に見初められ貰われますが、数年後には飽きられて酷い扱いを受けます。
実家の両親も可愛い一人娘がそんな不幸せな環境下にいて心を痛めます…
今の時代なら「あんたまだ若くて綺麗なんだからそんなモラハラDV男さっさと捨ててしまいなさいよ
」
なんて言えるんでしょうけど、時代が時代なので難しい
短いですが心に残る作品です。
浮雲/二葉亭四迷
登場人物全員が地に足付いていない感じ。
読んでいてとにかくモヤモヤイライラ炸裂
と、自信の感情が左右されるくらいのめり込めた作品ですが、読後の疲労感もまたひとしお
なんでこのタイトルにしたんだろう??というのが何となく理解できます。
リストラされた主人公、変なプライドの高さによってなかなか再就職もできず、
惹かれ合っていたお嬢さんの心の移り変わりにも、いやいやそんなことは無いだろう。なんて…一体どこからそんな根拠のない自信が来るのか。
でも人間って綺麗ごと抜きにしたら皆この様な感じかもしれない。だから同族嫌悪を抱く(笑)
心の闇/尾崎紅葉
泉鏡花が大好きなのですが、師匠の尾崎紅葉の方は初読み
泉鏡花よりも読みやすい様に思います。
盲目の按摩師・佐の市のお久米に対する恋の心情が描写されています。
お久米が結婚してしまっても、ずっと想いを寄せ、やがてはホラー的な要素も含んでくるのですが、これが佐の市、お久米2人の心の闇でしょうか…
盲目で思い出すのは谷崎潤一郎の「春琴抄」。
盲目の少女に丁稚の男性が恋する話ですが、どちらも異なった持ち味です
今回大収穫だったのが
樋口一葉
5千円札になった人だ~なんてこと以外何も知らなかったんですけど
作品がめちゃくちゃ好みだった……
結核の為24歳という若さで亡くなっていますが、
執筆活動期間はたったの2年
2年で書き上げた作品は何点かありますが天才的な文才で当時の文豪たちも絶賛していたみたい。
もし寿命まで生きていたら他にどんな作品が生まれていたのか…勿体ないです
別館のハンドメイドブログです
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