中学3年の時、加藤周一の「羊の歌」(岩波新書)を読んで以来、加藤周一の本はあまり読んでいなかったように記憶しています。2年ほど前にもう一度「羊の歌」と読み直し、
その後引き続いて、「続羊の歌」(岩波書店)
読み、その後、「『羊の歌』余聞」(ちくま文庫)を読み、加藤周一をしっかり読んでいこうと思うようになりました。
中学3年の時、たまたま、高校入試の国語によく出題されるという、理由で読んで以来、理系出身の評論家としてある種尊敬の眼差しでしか見ていなかったのですが、平和の問題にも積極的にコミットしていた氏の姿勢には気になっていましたが、この歳になって、読み直してみると改めて、氏の博学と世界史的な広い視野と洞察力を感じています。
その気持ちを特に強くしたのは、「私にとっての20世紀」(岩波現代文庫)でした。
その後、氏の有名な「日本文学史序説」にチャレンジしようと思いましたが、歴史的に、興味があるのが近世から近代ということもあり、この「日本文学史序説 下」(ちくま学芸文庫)を選びました。しかし、基本が”通勤読書”なので、精読ができなく、遅々として読めませんでした。結局、読み始めて1年以上かかりました。
江戸の化政文化以降の文学史ですが、読みながら強く感じたことは、文学史の専門家で加藤周一ほど歴史に造詣のある人はいないだろうということと、歴史家で加藤周一ほど文学史を知っている人はいないだろうという思いです。文学史と歴史を一緒に学べる貴重は本です。以前に書きましたが、山本義隆の「近代日本の150年」(岩波新書)は科学の視点、切り口による近現代史ですが、この「日本文学史序説 下」は、文学史の視点、切り口による近現代史とも言える内容として私には新鮮に思えました。
読み終えて再認識したことは、加藤周一の本は2回以上読まないと理解できないかな。2回以上読むたびに新発見がある、ある種、数学書のような感覚の本です。読まれた経験のある諸兄はどんな印象でしょうか。