◻️231『岡山の今昔』岡山人(20世紀、金重陶陽)

2019-05-07 10:24:36 | Weblog

231『岡山(備前、備中、美作)の今昔』岡山人(20世紀、金重陶陽)

 金重陶陽(かねしげとうよう、1896~1967)は、岡山県備前市伊部に窯元・金重楳陽(槇三郎)の長男として生まれる。本名は勇とある。

 この金重という姓だが、「備前六姓」(「窯元六姓」ともいう)の一つ。そもそもは、室町時代末期に遡り、成立した南、北、西の大窯を共同でもっていた陶工たちをいう。大(おお)あえ、金重、木村、森、寺見、頓宮(とんぐう)の六家のうち、前四者は、現在も陶業者として続く。

 1910年に伊部尋常高等小学校を卒業すると、細工物の名人と評されていた父について、備前焼に取り組み始める。作風は、細工物から茶陶へと向かっていく。
 1932年(昭和7年)になると、ロクロによる成形を始めたという。その後は、いろいろと工夫をこらしていく。1942年(昭和17年)には、川喜田半泥子、荒川豊蔵、三輪休和らと「からひね会」を結成する。
 戦後の1949年(昭和24年)には、備前窯芸会を結成する。続いての1952年には、備前焼の技術で国から無形文化財に選択される。1955年(昭和30年)には、日本工芸会の設立に参加する。
 そして迎えた1956年(昭和31年)には、重要無形文化財保持者(俗にいう人間国宝)に指定される、備前焼では最初であった。その翌年には、ハワイにて個展をひらく。1960年には、郷土での山陽新聞文化賞、岡山県文化賞を受賞する。1962年になると、日本伝統工芸展審査世紀、委員となり、その2年後の1964年(昭和39年)には、二度に渡りハワイ大学の夏期講座に講師として赴く。

 そんな金重の代表作としては、備前緋襷平水指、備前筒水指(1961年)、備前手鉢(1962年)、備前筒水指、備前壺(1959年)、累座壺(1965年)、備前緋襷平水指、備前陶板(1965年)などがあるというのだが。一つでよいので、直に、手にとって眺めたいものだ。

 なお、「緋襷」というのは、例えば、「ふつう赤く焼けるのが原則だが、燃料のマツの木の灰が付着してゴマを振りかけたようになったり、作品と作品のくつつきを防ぐためにワラをはさんで焼くと、その部分が酸化作用をおこして赤い形、つまり火襷ができたりする」(山本鉱太郎「備前焼のふるさと、千変万化の妖しい魅力」)といわれる。

 そんな中でも、とあるサイトに載っている「備前三角○座花入」を写真で拝見するだけでも、「癒し」というのではあるまいが。かなり落ち着く。ありがたいことだ。

(続く)

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◻️230『岡山の今昔』岡山人(20世紀、延原謙)

2019-05-07 09:14:19 | Weblog

230『岡山(備前、備中、美作)の今昔』岡山人(20世紀、延原謙)

 延原謙(のぶはらけん、1892~1977)は、京都市で生まれる。父の死後、1895(明治28)年に母、竹内文の生家津山に移る。本人は、母の伯母方の延原を継ぐ話になったという。

 津山中学校に進むが、在学中、家族とともに上京する。早稲田大学理工学部電気工学科に入学し、卒業後は大阪市電気部に入って、技師として電気関係の実務につく。

 この間、興味を持った欧米の探偵小説の翻訳を手がけるようになっていたらしい。1921(大正10)年、同郷の親友、井汲清治(慶大教授)の仲介により、雑誌「新青年」で翻訳家としてデビューをはたす。

 1928(昭和3)年には、横溝正史の後をうけて「新青年」3代目編集長となる。その後、「探偵小説」の編集長を務める。なかなかのやり手であったらしい。

 その後には、中国に渡り事業をしていたらしいものの、敗戦で無一文となって帰国する。それからは、「雄鶏通信」の編集長。1956(昭和31)年には、ミステリークラブを結成し、会長になるという行動の人として、名前を馳せていく。

 そんな延原が取り組んだのが、シャーロック、ホームズの翻訳であった。1953年から2年がかりで新潮社から発刊されていく。その評価については、例えば、こうある。

 「日本語に訳されたシャーロック、ホームズ物語は多種あるが、その六十作品すべてん独りの訳者が全訳された延原謙さんの新潮文庫は特に長い歴史があり、多くの人に読みつがれてきた。

 延原さんの訳文は展雅であり、原文の雰囲気を最もよく伝えていたが、敗戦後まもなくの仕事であったから、現代の若い人たちには旧字体の漢字を読むことができないなどの不都合が生じてきた。

 そこでご子息の延原展さんが当用漢字ややさしい表現による改訂版を出された。こうして、親子二代による立派な延原訳が、個人による全訳としては存在している。

」(アーサー、コナン、ドイル著、小林司、東山あかね訳「シャーロック、ホームズの事件簿」河出文庫、「はじめに」から引用、インターネットで一部が配信されているところ)

(続く)

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