楽我喜帳

日々是遺言〜ブログは一人遊びの備忘録〜
ブログネーム啓花

ショート・ショート「宅配ドライバーHの夢想」

2009-08-21 | 創作【アーカイブ】
宅配ドライバーHの夢想~その1~





オレは宅配ドライバー。

オレの配達担当先のプチマダム。

オレよりちょっと年上だけど。

美人なんだな。これが。

葉月里緒菜似なんだ。

ちょっと気になる存在。

オレとはあまり目と目を合わせてくれないけれど。

照れ屋さんなのかな。

そんなキミが近頃気になっている。

お金を受け取る時 品物を渡す時

何気なく それとなく さり気なく

そっと手に触れたりして。

キミの住所と名前と電話番号は

ちゃんと知っているんだからね。

と言っても

まさか誘いの電話は掛けられないよな。

そんなことしたら

即クビだもんな。



それにしてもキミ

通販(ネットショップかな)に

ハマりすぎだよ。

もう少し控えようね。

でも 控えられたら

オレはキミに会えなくなってしまうぜ。




宅配ドライバーHの夢想~その2~





配達先のかわいい美人プチマダム。

でも 夢中になってしまってはいけないオレ。

オレは妻子持ち。

向こうも亭主持ちだから。

もしももしも そんなことになったら

これはWフリンってやつじゃないか。

いけないぜ。オレ…。

だいいち 月曜から土曜の朝から晩まで

びっちり働いているオレのどこに

彼女との逢い引き時間なんてあるのさ。

日曜は死んだように眠りたいぜ。

でも 昼間からビール呑んで寝ているオレに

ウチのチビは

「パパ~こんどのにちようはあやかのようちえんのうんどうかいだよ~」

と馬乗りになってくる。

チビだけでなくママまでも

「今度の日曜は綾香の運動会だからね。ビデオの場所取り頑張ってよ!」

ときたもんだ。

はいはい。わかってますよ。幼稚園の運動会のビデオ撮影ね。

運動会ではパパ、綾香のために頑張っちゃうからな。

日曜のささやかな幸せ。

キミは今頃ご主人と 銀座のレストランでランチかな。

お互いのささやかな幸せ。壊すわけにはいかないから。

せめて夢の中だけでキミとランデブー。

夢の中でキミは僕だけに微笑む。

それはまるで女神のような。サイコーの微笑みさ。



荷物の仕分け作業中にそんなことを考えていたオレ。

こらこら! 真面目に働けよ。オレ。

おっと~これはキミへのお届け物だ。明日はキミに逢えるぜ! オレ。




By 莉梨花(りりか)

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ショート・ショート「中年男の夢…いつかTea for two」

2009-08-21 | 創作【アーカイブ】
「中年男の夢…いつかTea for two」



オレは女房とニ男一女を持つ平凡な中年男。絵画教室で絵の講師をしている。立場上その絵画教室が入っている事務所の職員を兼務している。息子たちは大学生、高校生となり自分勝手に行動している。娘も小学六年ともなれば、おやじをうっとおしがる。ほんの数年前までは「お父さん、お父さん」とまとわり付いてきて可愛かったのに、今じゃ「お父さんと一緒に出かけたくない」ときたもんだ。女房に至っては何も言うまい。たまの休みに家にいようものなら「片付かないからさっさと着替えてジョンを散歩に連れてってよ」なんてオレを追い出そうとする。挙げ句、娘とオシャレして外出してしまう。

「昼飯はどうすんだよ?」

「店屋物でもとるかコンビニで買って食べてよ」

そう言い残して女房と娘はいそいそと出かけて行ってしまった。

そんなオレだが誰にも言えない楽しみがある。それはパソコンだ。パソコンにはちょっとうるさい。組み立ても自分でやってしまう。自分で作ったパソコンが何台も家を占領して、女房には「この粗大ゴミをどうにかして」と言われている。だが、やめる気はさらさらない。自分のホームページも作っている。ホームページでは自分が今の自分以外の者になれるからほっとする時間なのだ。

ある日、パソコンを開いてネットサーフィンをしていたらとても可愛らしいホームページを見つけた。早速そこを訪問してみた。内容もなかなかの出来栄えだ。

「ン?! どこかで見たような写真と文だな」

そこにはオレの絵画教室に絵を習いに来ている生徒で、定期的に通信を送ってくれる子の写真と文が載っているではないか。

「そうか、これはあの子のホームページなんだ?!」 

オレはオレとはわからないふりをして彼女のホームページにカキコミをした。彼女からもオレのホームページにカキコミがあった。オレは彼女をはじめ職場の同僚にもパソコンができないと思われているから、こんなことをやっているのがオレとは彼女にはわからないだろう。何だか楽しくなってきた。

彼女は人妻だが、少女のような面影を残し、可愛い。それでいてなかなかクレバーなところもある。彼女にとってのオレは「おにいちゃん」的存在なのだが、オレは彼女のことを「妹」以上に愛しく思っている。ネット上の文字だけのつきあいなら誰にもわからないし、迷惑もかけない。彼女のことを大切に思うが故に、本気でフリンをしようなどとは思っていない。そんな勇気もこのオレには持ち合わせていない。だが、これは「心のフリン」だろうか。オレだって一応ノーマルな男だから、目の前に美味しそうなご馳走がならんでいたら戴きたくなる。それが男の本性というものだ。

いつか彼女にオレのことをばらしてしまおうかな。あのホームページ作成者がオレだってことを。

そしていつの日かふたりでお茶を…そんなことを夢見て今日もパソコンを開くオレであった。



離れていてこそ恋、別れていてこそ恋なのかもしれない。

逢ゑばこそ君への思ひ深くなり 逢ゑない夜に枕濡らして

                   

【おわり】


By 莉梨花(りりか)
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詩「青春メモリー」

2009-08-20 | 創作【アーカイブ】
「青春メモリー」

夕焼けに染まるグラウンドで
汗を飛ばして走っていたあなた
激しいノックにも
歯をくいしばり向かっていった
時折見せる笑顔が
とてもすがすがしい
今の私には
見つめることしかできないけれど
それが精一杯の気持ちだから
卒業までには勇気をだして
「がんばってください」と声をかけよう

あなたに似合うものは
八重歯と負けん気とちょっぴりの涙と
とびっきり素敵な笑顔
頑張りやで後輩思いのあなた
そんなあなたが好きだった
卒業を待たずに
私のこの思いも知らないままに
遠くへ逝ってしまったあなた
さようなら 素敵な人
さようなら 愛しい人
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詩「紫陽花色の雨」

2009-08-20 | 創作【アーカイブ】
「紫陽花色の雨」

紫陽花が色を変えるように
あなたの心も変わるのでしょうか
雨降る庭の紫陽花を
ひとりみつめて佇めば
二人で行った紫陽花寺の光景が
走馬灯のようにグルグル廻ります
私は今日もこの町で
あなたの帰り待っています
あの日のようにひとつの傘で寄り添い歩く
そんな夢だけ胸に抱いて

あなたの心変わりは信じたくなかった
電話の傍で笑った人は誰ですか
紫陽花が枯れるように
この恋も終わるのでしょうか

いつのまにか夕暮れです
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詩「八十八夜の別れ霜」

2009-08-20 | 創作【アーカイブ】
「八十八夜の別れ霜」

きのう思いついて旅に出ました
キミと初めて行った東北の旅です
弘前城の桜に目を輝かせていたキミでした
花吹雪の中でキミの肩を抱き寄せ
そっとくちづけた夕暮れの城下町
泊まった宿のおじさんが
「苗代のモミがだめになっちまうな」と
言っていた八十八夜の別れ霜

あの日はじめて聞いた言葉でした
あした奥入瀬まで足を延ばします
新緑はあの日と変わらず輝いています
角館の枝垂れ桜をバックに撮った二人一緒の写真
花吹雪の中で微笑むキミがいます
そっとくちづけた夕暮れの城下町
泊まった宿のおばさんが
「新婚旅行にもまた来なさいね」と
そんな言葉に照れているだけでした
今日は八十八夜の別れ霜

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詩「君に捧げたホームラン~三部作~」

2009-08-20 | 創作【アーカイブ】
「二軍選手」

今日も観客は数えられるほど
最前列は相変わらず
スナックのマスター
定食屋のおばちゃん
そして髪のきれいなあのコ
いつもオレのことをみつめている

プロ入り一号ホームランを打った時
ベンチ前で先輩の手荒い祝福
もみくちゃにされたオレに
いつまでも拍手して
恥ずかしそうに微笑んでいたあのコ
その時かすかに口元が
「おめでとう」と動いたような気がした

敵方の観客席には
女の子たちが群がっている
今年入団したスーパースターのアイツが目当て
たしかにアイツは格好いい
でもオレだって負けない

ずっとここでくすぶっているわけじゃない
いつか大観衆の中で
プレーする日を夢見ている
スコアボードにぶつけるほどの
特大ホームランを打って
ヒーローになってみせる

今は数えられるほどの観客と
暑い陽射しの中で泥まみれの毎日
ホームランを打っても
出迎えのマスコットや大歓声はないけれど
最前列で微笑むあのコの姿があればいい

「よっしゃ」と言って応援してくれる酒屋のオヤジさん
小さな手が赤くなるほど拍手してくれる子供たち
「二軍暮らしもまんざらじゃない」と先輩は笑う
「五年二軍で芽が出なければだめだ」とも言う
オレにとって今年はタイムリミットである

でもこれでは終わらない
大観衆の中でプレーする日まで
オレは負けない



「エール」

昨日まで二軍の試合で
泥まみれになって汗を流していたキミ
今日はそんなキミの初めての一軍試合
キミのことを知っている人は少ないから
スターティングメンバーを告げるアナウンスに
大きな拍手もなくざわめいている
けれど白いボールを追って行くその背中は
誰よりも大きく見える

キミの一軍昇格を決めたのは
フェンスを恐れずファールボールを追って行く姿と
アウトになっても次の塁を狙う全力疾走
けれどキミのひたむきさは
誰もが見逃してしまいそうな小さな記事で
スポーツ新聞の片隅に載っているだけ

いつでも一所懸命な頑張り屋
一軍のレギュラーになるという大きな夢に向かって
誰よりも明るく輝いている
キミの笑顔が好きだから
私は遠くからエールを贈る



「決心」

たしかにまだ不完全燃焼かもしれない
悔いが残らないと言えば嘘になる
一度はNOMOやイチローのように
スポーツ新聞の一面に大見出しが躍る日を夢見た
そんなオレを待っていたのは戦力外通告
五年も二軍でくすぶっていれば
遅かれ早かれその日は来る
せっかく与えてもらったチャンスも
二死満塁の代打で見逃し三振
挙げ句の果て練習中に肩をこわして二軍に逆戻り
皆がNOMOやイチローを夢見て
けれどそのほとんどが夢の途中であきらめて去っていく
スター選手になれるのはほんの一握りの
運に恵まれているヤツだけかもしれない
こんなことを言うとグチになる

夢には届かなかった
未練はないと言えば嘘になる
オレなりに精一杯歩いてきた

キミが初めて二軍の試合を見に来た時
プロ入り初ホームランを打った
忘れない
あの感動はいつまでも消えることはない
オレのたったひとつのメモリアルゲーム
胸のスコアボードにしまっておく




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詩「甲子園~三部作~」

2009-08-20 | 創作【アーカイブ】
「甲子園」

甲子園の土よ
おまえは覚えているかい
球児たちが落とした汗と涙を
一所懸命に走り守ったあのプレーを

甲子園の土よ
おまえは今年もまた
球児たちの思い出を刻むのだろう
汗も涙も笑顔も
ひたむきなファインプレーも



「最後の夏」

九回裏ツーアウトランナーなし
キャプテンが打った
ピッチャーゴロだ
それでもキャプテンは
全力疾走でファーストベースめざす
ほんのわずかな望みをたくして
「最後のバッターにはなりたくない」
それがキャプテンの口癖だった

父さんに
母さんに
監督に
そしてキミに
ひとつだけ嘘をついた
甲子園のお立ち台に
笑顔で立ってみせると

非情にもサイレンが鳴る
試合終了
短い夏は終わった



「この夏を忘れない」

九分九厘勝利は手中にあった
得点差はわずかに一点
ツーアウトランナー二・三塁
あと一人を打ち取れば甲子園初勝利
渾身をこめて投じた白球は
次の瞬間鋭い金属音を残し
飛びついた二塁手のクローブをはじいて
外野の芝まで転がった

頭の中が真っ白になって
何がなんだかわからなくなった
まるで金縛りにあったように動けない
ショートのキャプテンは呆然と立ちすくんで
スコアボードをじっと見つめている
センターのあいつは芝生の上にうつ伏せになったまま
立つことすらできない
球審の肩を借りてふらつく足取りで
ようやくベンチに戻って来た

遠くで拍手と大歓声が湧き上がる
それが自分たちへのものでないとわかった時
熱いものが一筋頬を伝った

キャプテンは気丈だから
泣き顔を見せまいと肩を震わせている
チーム一ひょうきんなあいつが
声をあげて泣きじゃくっている
あいつの泣き顔を見たのは
三年間で今日が初めてだった

僕らはこの夏をきっと忘れない



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詩「スポーツ選手~三部作~」

2009-08-20 | 創作【アーカイブ】
「ゴールキーパー」

いつもチームメートの背中を見ている
体をはってボールを止めても
当たり前のように思われる
多くの賛辞は
ゴールを決めた選手に贈られる

Jリーガーがもてはやされる時代(いま)でも
ゴールキーパーは孤独な戦士
それでもオレは
今日もゴールを守り続ける



「ノーサイド」

あなたの蹴ったボールは
ゴールを大きくはずれた
観衆のどよめきとため息

あの日から一所懸命にラグビーのルールを覚えた私
そうでもしなければ
あなたの会話についていけないもの

木枯らし吹くスタジアムで
熱いコーヒーカップを思わず握りしめたとき
湯気の中でゼッケンが揺れていた

今日もあなたの蹴ったボールは
青空に吸いこまれて
ゴールを大きくはずれた
ノーサイドのホイッスルが響く

目を閉じれば
トライを決めたあなたがいた



「一本の襷(たすき)」

そこには誰もいなかった
オレは手渡すことのできない襷を握りしめた
アイツは繰り上げスタートの襷を掛けて
たった今 走っていった
アイツのゼッケンが遠ざかる
オレの記憶も遠のいていく
一本に繋ぐことのできなかったこの襷
手の中にしっかりと握りしめた

今 みんなの思いが伝わってきた



「夢に向かって」

もうじきだね
あの涙から
ひとつ大人になったキミ
もうじき会えるね
待っているよ
たくましくなったキミ
襷(たすき)に繋いだ
みんなの夢
笑顔で握り締めて


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詩「日常~三部作~」

2009-08-20 | 創作【アーカイブ】
「でんわ」

電話は苦手です

言いたいこともうまく伝えられない
話が途切れた時の沈黙
受話器を置いてからの後悔
呼び出し音にだんだん胸がドキドキして
初めて憧れの人と話した時のように

電話は苦手です



「夏の黄昏」

夏の黄昏れ時が好き
西の空が茜色に染まる頃
なつかしさがこみあげる

私鉄沿線の商店街が好き
ふらっと立ち寄りたい
あてもなく歩いていたい

知らない町の黄昏れ時
歩いてみたくなる
なつかしさにあえるような
そんな気がして



「時の流れに」

時という名の川を越えて
会いたい人がいる
もしもタイムスリップができれば
飛んで行きたい
あの頃に
笑顔があって
泣き顔があって
想い出という名の箱の中に
閉じ込めてしまった人たち
思い出の中のあの人たち
少しだけ変った私を
見てもらいたい


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詩「本当は泣きたいのに…」

2009-08-20 | 創作【アーカイブ】
「本当は泣きたいのに」

忘れてしまいたいはずなのに
いつまでも心の隅にいるあなた
愛していた
こんなにも
今でも愛している
こんなにも
いつまでも
あなたの陰を追いかけているなんて
未練かな
あの人と幸せになって
そんなこと今はまだ願えないから
泣かせて
もう少し
ほんとは悲しいのに
いつでも作り笑い
思いっきり泣きたいのに
思いっきり甘えたいのに
素直になれなかった
そんな自分の顔が私に向かって
鏡の中から語りかける
今日だけは思い切り泣いたらいいよ

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