日本共産党の吉井英勝衆院議員は、今回の福島第一号原発事故と同様な事故を予測しつつ対策をせまった質問を2006年3月予算委員会で行っていた。
質問内容は、地震による原発のバックアップ電源破壊や津波による機器冷却系喪失により最悪の場合は、炉心融解・水蒸気爆発・水素爆発が起こりうることを具体的に追求した。質問では津波により5mの引き波が発生した場合、日本の原発の約8割にあたる43基で冷却水が一時的に海から取水できなくなることを明らかにしていた。
これに対して、二階俊博経産相は、「安全確保のため、省をあげて真剣に取り組むことをお約束したい」と回答している。
しかし、今回のおきている福島第一号原発事故では、この回答はいかされていません。
政府や東京電力は、原発事故対策に全力をあげており、事態の沈静化を私は望んでいます。
しかし、政府の発表は、国民を安心させたいためか、事故の内容や対策が断片的で、全体がどうなっているかという説明がない状況です。
政府は、事故の全体像を国民に説明し、原発の専門家の総力を結集して事故対策を行うべきではないでしようか。
参考
(日本共産党 吉井英勝議員 2006年3月予算委員会 質問概要)
原発8割 冷却不能も 津波引き波5メートル
取水できず 炉心溶融の恐れ 吉井議員指摘
津波による五メートルの引き波が発生した場合、日本の原発の約八割にあたる四十三基の原発で、冷却水が一時的に海から取水できなくなることが一日、明らかになりました。衆議院予算委員会分科会で、日本共産党の吉井英勝衆院議員の質問に、広瀬研吉経済産業省原子力安全・保安院長が答弁しました。
経産相が対策約束
吉井議員は、一九六〇年のチリ津波のときに、三陸海岸で約二十五分にわたって引き波が続いたことや、原発のある宮城県女川町で海水面が推定六メートル低下したことを指摘しました。水位が下がった場合、原発の冷却水が海から正常に取水できなくなるのではないかとただしました。
広瀬院長は、海面が四メートル低下した場合で二十八基、五メートル低下で四十三基、六メートル低下で四十四基の原発が、一時的に取水に必要な水位を下回ると答えました。
吉井議員は、浜岡原発1号機(静岡県御前崎市)の例をあげ、取水槽の容量からすると「仮に、引き波による水位低下で取水できなくなったときは、三十四秒で冷却不可能になる」と指摘しました。また、途中で原子炉を停止した場合も、崩壊熱(燃料のなかの放射性物質が発生する熱)の除去に毎分六十トンの冷却水が必要になることを示し、「崩壊熱が除去できなければ、炉心溶融や水蒸気爆発など、最悪の場合を想定しなければならない」と、対策を求めました。
二階俊博経産相は、「安全確保のため、省をあげて真剣に取り組むことをお約束したい」と答えました。
津波の引き波によって冷却水が取水できなくなる原発(○内は号機)
■水位低下4メートルの場合
(28基)▼福島第一(1)~(6)、福島第二(1)~(4)、美浜(1)~(3)、高浜(1)~(4)、大飯(1)~(4)、島根(1)(2)、伊方(3)、玄海(1)、東海第二、敦賀(1)(2)
■水位低下5メートルの場合
(43基)▼(上記に加え)泊(1)(2)、柏崎刈羽(1)~(5)(7)、伊方(1)(2)、玄海(2)~(4)、川内(1)(2)
■水位低下6メートルの場合
(44基)▼(上記に加え)柏崎刈羽(6)
海水と原発の冷却 原発は、原子炉で発生した熱で水を水蒸気に変えてタービンを回し、電気を発生させています。タービンを回した後の水蒸気は、再び水に戻して使用します。水蒸気を水に戻すときに使われるのが海水です。海水を取り入れることができないと、水蒸気を水に戻せなくなり、原子炉の冷却ができないことになって、炉心が溶け出すなどの重大な事故につながる恐れがあります。
(2006.3.2赤旗)