2021年の年頭に企画されていながら、新型コロナによってホーネックの来日が果たせずに開催できなかった紀尾井ホール室内管弦楽団ニューイヤー・コンサートのリヴェンジである。指揮とバイオリンはこの楽団の名誉指揮者ライナー・ホーネックである。前半はモーツアルトの二曲をヨハン・シュトラウスの先輩格ヨーゼフ・ライナーの作品がアーチで結ぶ組み立て。歌劇《魔笛》K.620より序曲、ワルツ《モーツァルト党》op.196、そしてヴァイオリン協奏曲第1番変ロ長調 K.207だ。幕開きに胸をときめかせる序曲と、聞き知ったメロディが散りばめられたワルツ、そして軽やかで気品に満ちたホーネックの独奏は後半への最良のアペリティフだった。そして後半はおなじみシュトラウス兄弟のワルツとポルカ。もうこれらは言うことなし。まるで元旦のムジークフェライン・ザールが紀尾井ホールに引っ越してきたような楽しさだった。とにかく軽やかでキレが良く、同時に華やかで、時には憂いが感じられる独特の歌い回し。ホーネックの薫陶を得て紀尾井のアンサンブルは実に見事にウインナ・ワルツをものにした。いつもは黒尽くめのメンバーだが、この日はカラフルなドレス姿の女性奏者が華を添えた。とにかく最高に楽しいい2時間。ニューイヤー・コンサートお約束のアンコールの「蒼きドナウ」や拍手を交えた「ラデツキー行進曲」が無かったのもむしろ潔く新鮮だった。欲をいえば、もう一曲くらいワルツが欲しかった気もしたが、それは贅沢というもので、土曜の午後の2時間余を堪能した。この日はかなり多くの児童親子が招待されていた。概ねは静かに、そして楽しげに耳を傾けて聞いたのでクラシック音楽普及の為に誠に良いことだと思った。しかし私の席の近くの親子は四六時中ヒソヒソと小声で話しているのにはいささか閉口した。こういう時にこそ、大人の世界のマナーを教える絶好のチャンスなのではないだろうか。備忘録として以下に当日後半の演奏曲目を記しておく。ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇《こうもり》より序曲、ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・フランセーズ《小さな水車》op.57、ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ・シュネル《チクタク・ポルカ》op.365、ワルツ《レモンの花咲くところ》op.364、新ピチカート・ポルカ op.449、ポルカ・シュネル《観光列車》op.281、ワルツ《南国のバラ》op.388、ポルカ・シュネル《山賊のギャロップ》op.378、(アンコール)ポルカ「狩」、トリッチ・トラッチ・ポルカ、以上終演。
goo blog お知らせ
プロフィール
最新コメント
ブックマーク
カレンダー
goo blog おすすめ
最新記事
- 新国「ウイリアム・テル」(11月26日)
- 東京シティ・フィル第79回ティアラ江東定期(11月23日)
- 藤原歌劇団「ピーア・デ・トロメイ」(11月22日)
- 東響オペラシティシリーズ第142回(11月15日)
- NISSAY OPERA 「連隊の娘」(11月10日)
- 八ヶ岳高原サロンコンサート(11月1日)
- びわ湖ホール声楽アンサンブル第15回東京公演(10月14日)
- 東響第97回川崎定期(10月13日)
- 新国「夢遊病の女」(10月9日)
- 東京シティ・フィル第373回定期(10月3日)
- 東響オペラシティシーリーズ第141回(9月28日)
- 紀尾井ホール室内管第141回定期(9月20日)
- 東フィル第1004回オーチャード定期(9月15日)
- 東京シティ・フィル第372定期(9月6日)
- 第44回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル (8月28日〜30日)
- ロッシーニ・オペラ・フェスティバル2024(8月17日〜21日)
- 読響フェスタサマーミューザKAWASAKI 2024公演(7月31日)
- 京都市響第691回定期(7月27日)
- 東京二期会「蝶々夫人」(7月21日)
- 新国「トスカ」(7月19日)