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都響第976回定期(5月29日)

2023年05月29日 | コンサート
尾高忠明が珍しく都響に登場して、得意とするラフマニノフとエルガーを並べた演奏会だ。最初はラフマニノフの絵画的練習曲より第2曲《海とかもめ》作品39-2。今回はピアノ独奏曲をレスピーギが編曲したバージョンだ。静かな中にわずかな感情の昂りもある佳作で、レスピーギの手にかかると洗練された淡い色彩が美しい曲になった。続いてピアノ独奏にアンナ・ヴィニツカヤを迎えて「パガニーニの主題による狂詩曲」作品43。完璧なテクニックの美音で、いとも楽しげにこの難曲をサラリ弾く。オケも完璧に付くのでなんとも気持ちよさそうである。濃厚なロマンよりも爽やかな初夏の風を感じさせるような音楽だった。ソロアンコールは絵画的練習曲集 Op.33 より 第2番 ハ長調。そしてトリは気力十分で臨んだエルガーの交響曲第2番変ホ長調作品63だ。尾高は登場の足取りから気迫に満ちていて名演を予感させるものがあったが、日本人初のエルガー・メダルを英国エルガー協会から授与されているのだから悪いわけはない。とにかく尾高のエルガーに対する並々ならぬ共感がオーケストラに伝播し、実に感情豊かで格調高い(nobilmente)演奏が実現された。エドワード王朝の栄華と憧れの佳人(アリス)への憧憬的な思いがないまぜになった独特の風情を、豊麗かつ密やかに描き切ったオケも実に立派だった。大きな拍手を制して、「実は2ヶ月前に英国のあるオーケストラでこの曲をやったのですが、今日の方が上でした」と指揮者本人に言わしめた程の希代の名演だった。フライングのない実に気持ちの良い拍手と盛大なブラボーの飛ぶ中、最後は尾高一人で呼び出され声援に応えた。
*あるオーケストラとは、日程を勘案するとBBCウエールズ・ナショナル管らしい。

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