桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎が指揮するブルックナーの交響曲第8番ハ短調だ。この組み合わせで2015年の5月の定期に取り上げられた記録があるが、その時は弦の薄さや木管のアンサンブルに問題があり、悪くはなかったが手放しで誉められなかった演奏だったような印象がある。今回は、以来常任指揮者高関健の薫陶を得てめきめきと実力を身につけているシティ・フィルがどんな演奏をするか楽しみで出かけた。83歳になって足元が覚束ないマエストロではあるが、その音楽は至って若々しい。(昨年のシューマンチクルスの時の音楽より若々しい印象)老け込んだり、滋味を湛えたりということはなく、楽章間もほとんど間を置くことなく驚くほどの推進力で逞しく前へ進む音楽なのである。8年前に比較して格段に合奏力が向上したシティ・フィルは、コンマス戸澤哲夫のリードの下、そんなマエストロの意を汲んで自律的に逞しく音楽を作ってゆく。だからとうとうと流れる音楽に身を浸しているだけでブルックナーの世界に包まれるという感じである。強靭な弦、豊かな木管、豪快な金管、チェロとコンバスの力強い支え、そしてココぞという時の決めのティンパニ。全てが一体となって老マエストロの音楽に精いっぱい奉仕した結果、作為的なところが一切ない純粋にブルックナーの音楽だけが姿を現したような実に立派な演奏だった。最後の降下音が鳴り終わっても危惧されたフライングブラボーは一切なし。暫く間をおいて久しぶりの大歓声がサントリーホールに響いた。
goo blog お知らせ
プロフィール
最新コメント
ブックマーク
カレンダー
goo blog おすすめ
最新記事
- 東響オペラシティシリーズ第142回(11月15日)
- NISSAY OPERA 「連隊の娘」(11月10日)
- 八ヶ岳高原サロンコンサート(11月1日)
- びわ湖ホール声楽アンサンブル第15回東京公演(10月14日)
- 東響第97回川崎定期(10月13日)
- 新国「夢遊病の女」(10月9日)
- 東京シティ・フィル第373回定期(10月3日)
- 東響オペラシティシーリーズ第141回(9月28日)
- 紀尾井ホール室内管第141回定期(9月20日)
- 東フィル第1004回オーチャード定期(9月15日)
- 東京シティ・フィル第372定期(9月6日)
- 第44回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル (8月28日〜30日)
- ロッシーニ・オペラ・フェスティバル2024(8月17日〜21日)
- 読響フェスタサマーミューザKAWASAKI 2024公演(7月31日)
- 京都市響第691回定期(7月27日)
- 東京二期会「蝶々夫人」(7月21日)
- 新国「トスカ」(7月19日)
- 東響オペラシティシリーズ第140回(7月7日)
- 東京シティフィル第371回定期(6月29日)
- 都響第1002回定期(6月28日)