メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

心臓が爆発しそうだった…

2018-06-08 11:52:06 | 
『ん〜異国で10個下の男の子にナンパされるなんて、一度体験してみたぁーい』





と、みずきはテンション高めに返信してきた。
グループチャットの背景はパステルカラーの小花柄だ。
ちょっと乙女すぎるかとも思ったが、年々カワイイを制限されてくるアラサーなのだから、誰に迷惑かけるでもないところでは思い切った方が自己満足度が高いんじゃないかとこれを選んだ。
カワイイチャット画面では私がバーでナンパされた話が話題になっていた。
もう1人の参加者、ヒロちゃんのコメントがアップロードされた。






『日本とは色々違うのでしょうな。価値観など』






彼女は恋愛ごとに全く興味がなく、結婚も「まぁ母に孫の顔を見せてやった方がいいとは思うけど」と他人事のようにつぶやくくらいだ。
年齢で言えば一浪しているヒロちゃんが年上なのだが、婚活なり妊活なり活がつくものにはことごとく興味がない女性だ。
(ちなみに就活さえ頑張っていなかった笑)
私は人差し指をあごに当て、いかにも考え事してそうな表情をした。
私の仕草は基本、わざとっぽいのだ。(わざとじゃないんだけど)






『確かにちょっと可愛い子だったから嬉しかったけど、10歳下ってヤベーなって驚いた方が強かったよ(笑)
年上だろうと思って声かけてきたらしいから、日本と違って若さは重視されないのかもね?』






パシャっとスクリーンショットを撮ると、ソッコーでグループチャットに上げた。






『ちなみに、この子がヤンガーくん。老けてるよね(笑)』





すぐに既読マークがつき、ヒロちゃんのコメントが続いた。





『ヤンガーくん、20代後半ぐらいに見えます。
顔立ちの問題かもしれないけど、仁さんの方が可愛い感じがします。
仁さんはおいくつですか?』





当然ここでは私の脳内彼氏の話も知られている。
プロフィールの写真をさっき同様スクショして、皆で共有済みだ。
ちなみにヤンガーくんの写真は、全く別のトークアプリ上にアップされているプロフィールからいただいた。
ヤンガーくん目線で言うと、あの日のナンパの釣果は私の電話番号ゲットに止まった。






『私も仁さんの方がいいと思う♪ 仁さんは24歳です』

『3つ違いには見えませんな…』

『私も仁さんの方が好みー♡ いや、ヤンガーくんはワイルド系で色気を感じるけど(笑)』






好き勝手に値踏みする文章で、チャットは大いに盛り上がった。
下世話と言われればそれまでだが、どの女子会でも男子会(ってあるの?)でもよくあることだろう。
本来は、私だって直接会って日本酒(カシオレとは言えない)片手に大騒ぎしたい。
けれど今は遠い異国の地に住んでいるので、こうして時折時空と時差の壁を超えてチャットしているのだ。
楽しいお喋りの腰を折るようではあったが、折角の機会なので私は2人に甘えだした。






『でも聞いて。聞いて聞いて。
仁さんとはめちゃめちゃ盛り上がってるし、できるだけすぐ会いに行く!って言ってくれてる。
ワーイって思うけど、一方で24歳が31歳ってゆーか今年32歳に直接会ったら千年の恋も冷めると思うの。』





深い溜息が漏れる。





『ほうれい線とかさ…目の小じわとかさ……』





うぅ、書いてて自分で辛くなってくる。
年齢を言い訳にはしたくないけど、実際5年前っていうか3年前でも違うんだもの。






『そんな折に、私の友達の話ってテイで男友達にこの話したら、
"それもう若いだけよ!その年の男は考えることなんかできないんだから!
奴の国にもそらもう若くて綺麗な子がいくらでもいるんだから、すぐ心変わりするって!
ていうかした方がいいよ。手が繋げてキスできる女の子と付き合えよ!
バカだなそいつ!!" ………って言われたのよ。』






あぁ助けて涙






『いや、もうさ………その通り過ぎて………耳が痛かった(笑)
ガッツリ目を覚まされました………』






私の話が長いので独壇場になっているが、順調に既読マークがついて行く。
みんながどんな顔をして読んでいるのか、気になる(笑)






『そんなある日よ。仁さんとテレビ電話する約束をしていたのよ。
私達、お互いの写真しか知らないし、仁さんの写真ちょっとボケてるし。
………ねぇ、待って。』







ポチポチポチ






『テレビ電話って、ほうれい線映りません?』






そう。
仁さんとの年の差に圧倒的な不安を感じていた私は、テレビ電話を前にハチャメチャに緊張していた。
だだだだだだって今まで見せたことないし!
笑った時にシワできたらどうすりゃいいの!?
エクボじゃないわよ、目尻のシワの話よ!!!!(号泣)
私の気持ちを労わるかのように静かに既読マークがついた。←思い込み






『電話の予定は夜だったけど、メイクも髪もそのまま!
何ならネイルも綺麗にしておこうってアラサーなりのベストを尽くすつもりでいたのよ。
でもそしたらさっきね……








"テスト勉強で徹夜したから死ぬほど眠い。メイサさんの都合が大丈夫なら明日でもいい?"
って受信したのよ』






ズデーッと転んでいるスタンプを続けて送った。






『あーーーこれだーーー。って現実を突きつけられた気がしたの。
この一回のリスケで彼を判断するのはおかしいかも知れないけど、
私が言いたかったのは、期待しすぎちゃいけないのがわかったって事なの。
風呂入ってさっぱりメイクも巻き髪も落としたわ(笑)』





今度は酒を煽っているスタンプを送った。






『そもそも本当にわたしの国に来たところで何も起こらないんだけどさ。←そうか?
多少ワクワクしてた自分が嘲笑えました。
きっとここには来ない。
きっと、会ったらガッカリする。
だからもぉー何も気負わずに会話を楽しもうって思いました』





完。 と書いてあるスタンプで締めた。
2人から「お疲れ様」と書いてあるスタンプが届いた。
うぅ。泣






『男友達の話がグサっときたよ…。
仁さんが会いたいとかテレビ電話とか言ったら、そりゃソワソワワクワクするよぉ』

『そうだ、そうだ。そこは年齢関係ないんじゃないですか』

『そうだよぉ。メイクや髪セットした時間返して欲しいと思っちゃった(笑)』





2人の心優しい友人に汲んでもらい、私の気持ちが楽になってきた。





『ありがとう2人とも。まさしくその通りで、グサっとソワソワクワクしてたの。。。
一応、私が空いてなかったら今晩するつもりだったみたい』

『なるほどね!』

『それはワクワクしますな』

『そうなのよん!!』





はぁー、と今度は明るめの溜息がこぼれた。
持つべきものは友達だ。
例えどんなに離れていても心が通っている友達はすごく頼もしい。
それが海を越えていても、だ。
私がくだらない私の話を聞いてもらったお礼の言葉を送ると、ヒロちゃんは
『いえいえ。私もメイちゃんと離れていても話せて嬉しいよ。スマホに変えておいて良かった』と返してきた。
(ヒロちゃんはスマホすら興味がなかったのだ)
みずきも『私も楽しいし嬉しいー♡スマホに感謝だね!(笑)』とノリ良く返してくれた。




私がチラリと時計を見ると、時刻は午前10時を指していた。
私達の友情チャットは、睡眠などのインターバルを挟んで一晩跨いでいた。
仁さんとリスケしたテレビ電話はあと1時間後に迫っていた。
当然朝からフェイスマッサージに化粧に尽力した(笑)
服装とかどうしよう、と悩んだが、結局カフェテラスで話すことにしたので、
お気に入りのマフラーを巻いて可愛らしくまとめることにした。
私は綺麗に整えられたネイルが目立つ指でメッセージを打った。






『あと1時間後にテレビ電話に挑戦します!!』





すぐさま、応援メッセージ付きのスタンプがポンポンとアップされた。





『ドキドキですな』

『うん!
……でも、1つ考えているのが』






何?と2人同時に送ってきた。






『もしかしたら、仁さんもピント合わせて見たら変かもしれないよね(笑)』





すぐに返信したのはヒロちゃんだ。





『待って。そもそもメイちゃん変じゃない』





確かに。




シワシワなだけだ。





『ヒロちゃん鋭いね(笑)ってヤダ!みんなと話し込んでて準備が整ってません!(笑)』





慌てて携帯をバッグにしまうと、私は出かける支度を始めた。
ドキドキする。
家で話してもいいけど、Wi-Fiの調子が悪い上にライト二ングもいまいちな所よりは、
オシャレでフリーWi-Fiが使えるカフェテラスの方がいいだろう。
家から徒歩3分程度のところにあるカフェは席数が多いし居心地も良い。
ただでさえ緊張しているのだから、せめて行き慣れたところで話そうと思った。





カフェに着き、オーダーしたカフェラテを片手にテラス席についた。
10:56。あとちょうど4分したら、彼は連絡してくるはずだ。
彼からの着信履歴は全部00分だ。
バッグから携帯を取り出し、セルフィーモードで自分をチェックする。
ちょっと上から撮るのが鉄板だが、カフェでっていうかテレビ電話でそれやってたら変じゃない?
でもそしたらどの角度で撮るのが一番綺麗に写るんだろう。
どうやったら、可愛いって思ってもらえるんだろう。
そんな事しているうちに時間はもう10:59。
あぁ、もう、ほんとに…………
心臓が…………







ピロリン






テラスに着信音が響いた。







続きます。



ウサギを料理する話

2018-06-07 15:17:06 | 
仁さんからのドッキドキLOVEメッセージは止まることを知らなかった。
2日ほど経った頃のことである。







ピロリン






『メイサさん、こんばんは!』

『仁さん、こんばんは(^^)』

『今日はお仕事どうだった?』

『いつも通りかな。仁さんは今日は何していたの?』







彼は、日本に行く準備をしていたよ、と答えた。
彼は無事テスト期間を終え、大好きな日本を訪れるための準備をしていたのだ。
期間にして実に1ヶ月。
彼は数多のスポットをめぐる予定でいた。

へー、楽しそうだなぁ。
仁さん本当に日本好きなんだろうな。
日本人の私にはわからないけど、親日家なのは悪いことではないよね。







『いいね!具体的には何を用意していたの?』

『日本の友達にあげるお土産とか。お世話になるからね』

『いいね!どんなもの?』

『パスタを作る道具とか』







(°▽°)






『め、珍しいね!』

『僕の国の工芸品だからね』

『そうなんだ…。メイサさんに会うときも、それ持ってきてくれるの?』

『メイサさんにはもっとロマンチックな物をあげたいけど(笑)』





ふぅーん?
仁さんて、結構ロマンチストなんだなぁ。
ま、私も大概人のこと言えないけど。花が欲しいとか言うような女だしね。






ポチポチポチ







『例えば何?』

『僕の国では、某バスグッズブランドが有名なんだけど、入浴剤を始め、すごくクオリティが高いんだ。
特に、彼らの提供しているマッサージオイルが凄くいい。』





(OvO)







『えっとぉー…(笑)ちなみに、マッサージオイルと入浴剤のどっちをあげたいんですか?』








ピロリン






『僕がマッサージしてあげられるなら、マッサージオイルの方がいいです』






やっぱり。





ちょっと待って。
そういうキャラだったっけ?(笑)







『ハハハ!やっぱりね!(笑)えっと、それは本当にただのマッサージなの?』

『そうだよ。どうして?他に何かあるの?』







すっとぼける仁さんに、私は思わず吹き出した。
ふふーん?そっちがそう来るなら……







『そんなの決まってるでしょ。オイルを使ってすることなんて……









料理よ』








なるほど、と仁は呟いた。







『もしあなたがオイルを使ってバニーをマッサージしていたら、彼女を料理して食べたくなっちゃうと思うわ』

『確かにね。。。じゃ、メイサさんはマッサージオイルと入浴剤のどっちが欲しいの?』







こ、これ、マッサージオイルって答えなきゃいけないやつかな。←どんなやつ
んー。
イヤではないけど、すんなり答えるのも芸がないなぁ。
ってー事はだな………








ポチポチポチ








『そうね。答える前に入浴剤についてもちょっと情報をもらう必要があるわね』

『(笑)わかったよ。入浴剤はいくつか種類があって、その効能で色が分かれている。
ピンク、緑、紫、黄色なんかがあるかな』

『ねぇ、白はないの?』

『入浴剤がいいの?( ̄(工) ̄)白はないと思うよ』







私はスラスラと指を走らせた。







『そっかぁ~残念。私、白い入浴剤が大好きなんだけど、白い入浴剤を使う時には問題があるの。。。』

『なに?』

『白い入浴剤って、浴槽が滑りやすくなるのよね。
だから、使う時は誰か一緒に入って抱いててもらわなきゃいけないの。。。』









ピロリン








『考え直してみたんだけど、やっぱり白あったわ』







無いやろ








『(爆笑)あるんだぁー笑』

『うん(笑)だから入浴剤がいいんじゃない?』

『じゃぁ、誰かに一緒に入ってもらわなきゃ』

『誰か?もう誰がいいかわかってるんじゃないの?』

『わからないなー、誰か紹介してくれる?』

『僕のオススメは、日本文化全般が好きで特に温泉文化も好きな外国人の彼だね』

『彼、一緒に入ってくれるかしら?ちゃんと抱きしめててくれる?』









勿論!!と、その外国人の彼は答えた。





こういうユーモラスなセクシートークは嫌いじゃない。
直接的な話はハニーとだけしたいけど、オブラートに包まれた会話はハチミツほど重くない。
脳みそフル回転させて、エッチだけど下品じゃない、ロジカルだけどロマンスも忘れない
そんな会話をするのはとても楽しいし、それが出来るのは頭がいい相手とだけだ。




余談になるが、私は頭がいい男が好きだ。
と、言うと、勉強ができるって意味じゃないんでしょう?と言われる事がある。
何をおっしゃるやら。
勉強ができる男の方がいいに決まっている。
これは私の持論だけれど、勉強の得手不得手は持って生まれた才能によるところが大きい。
みんなあまりそれについて語りたがらないが、運動神経と同じだ。
やればやるだけ上手く、少なくともマシにはなるけれど、誰もが皆プロ野球選手やウサインボルトになれるわけではない。
勉強もそうで、例えばこの時私が必死に勉強していた英語だって、その国に生まれただけで私より幼かろうが勉強ができなかろうが、ペラペラ喋るネイティブスピーカーがいる。
それはひとえに常にその環境に置かれて来たからである。
そして彼らが同じ条件で同時に言語の勉強を始めたなら、悪いけど負ける気はしない。




勿論、勉強ができると一口に言っても、その得意分野は様々だ。
例えば私なら、正直恥ずかしいのであまり言いたくないが、数学と物理が苦手だ。
まぁ一応言い訳をさせていただくと、始めに躓いてしまった事と興味が湧かなかった事、
担当教師が好きじゃなかった事など、とにかく私は数学と物理が苦手なのだ(笑)
変わりと言っちゃなんだが、現文や古文、英語に古文などは得意だった。
もちろん歴史全般のスコアも良かったが、知識として身についているものは皆無だ。
試験のためだけに記憶して、試験が終わると消しゴムのカスと共に机の上に置いてきてしまったのだ。トホホ。
一方で、なぜか全く英語ができないと言う友達がいた。
彼らは決まって理数系が得意だった。
概して私はそういった理系の人間に惹かれる事が多かった。
男の子に限らず、女の子でも理系の子と話すと、私とは違った世界を
垣間見れてワクワクした。
けれど一番は男の子だ。
ロジカル、合理的、記憶力の良さ……そしてどこか無骨。
全てがものすごく魅了的で、そういった男の子と話すと一瞬で胸が弾んだ。
もちろん彼らが頭が良ければ、だけど!




でも皆さん、わかりません?
"勉強ができる人"は、当然その才能を持って生まれたわけですが、
それに加えて努力していますよね。
人間はみんな生まれながらに平等なんかじゃない。
だけどその才能にあぐらをかかず、努力して結果を出している人達がいる。
彼らが私のタイプなのだ。





まぁ勿論、他にも色々と条件はあるのだが(何様だよ←いや本当に)
とにかく第一声で『頭がいい人が好き』と言える。
この時私が仁さんに惹かれた理由も、まさにそれだった。
彼はド理系で、合理的で、非常にロジカルだった。
いつも勉強していて、話していると頭が良いことがよく伝わってきた。
独学だけでこんなにも日本語が上手になったことも、尊敬できた。





『話していて楽しいから好き』




それは、理由であって理由じゃない。



どうして楽しいか。



ロジカルな考え方ができて、返しがスマートで、ユーモラスだったから。



賢い彼に、私はすっかり夢中だった。




だけどいつも大きな不安を抱えていた。





年の差だ。







続きます。








チョコレートと先生

2018-06-06 15:16:26 | 
ようやっと両思いになった翌日は、偶然にもバレンタインデーだった。
私は特に誰にあげるでもなかったのでチョコを買うこともなく、のんびりと1日過ごしていた。
…と、言いたいところだが、
つい昨日両思いになったばかりだったので何やらソワソワと落ち着かなかった。





昨日は仁さんとあんな話ができて嬉しかったな。
いつかきっと会えるんだろうな。
えーうそうそ本当?8個下の子が私に実際会って大丈夫なのかなぁー(汗)
ってゆーか、仁さんて私と付き合う気?っていうか付き合ってる気??あるのかな???
ハッ!ってか彼女いないの!?






私はふと彼の写真を思い出した。
好みじゃないわ、とは言ったものの流石に美形の方だろうと思ったし、
頭もいいし会話も上手でやんわり肉食系。
これで彼女がいないっていうのもなんだかあり得ないようなあり得るような………。
ま、全てはタイミングなんですけどね。







よ、よぉーし。
聞いてやれ!






『仁さん、こんにちは♪』

『メイサさん、こんにちは!』

『今日は何してるの?』

『勉強していたよ。明後日まで試験期間だからね』

『そっかぁ。大変そうだね。お疲れ様』

『ありがとう!』








な、何をどうでもいい話がしてんねーん!!
き、きかんと!!







『えっとー、実は聞きたいことがあるんだけどー、いいかしら?』

『もちろん』

『仁さんは、今、彼女はいるの?』








ピロリン






『NO』







ぃよぉーーーーし!!!

心の中でガッツポーズをしているなど、仁さんは知るよしもないだろう(て言うか知らないでいてお願い)。








『そっか♪そういえば今日はバレンタインだね』←すぐ話変えた

『そうだね。』

『日本人はチョコあげるけど、あなたの国でも何かするの?』

『勿論。恋人同士で食事したりプレゼントあげたりするよ』

『へぇー、同じだね』

『メイサさん、僕の義理チョコは?(笑)』

『仁さん、義理チョコの意味間違ってない?(笑)好きな人にあげるのは本命チョコって言うんだよ』

『僕、もらえるの?』

『仁さんにだけあげるよ』








嬉しい、と可愛い返事が返ってきた。
と、思ったらもう一報続けてメッセージが届いた。







『メイサさんは何が欲しい?』

『え?私も何かもらっていいの?』

『もちろん』

『うーん何がいいかなぁ。何ならくれる?』

『なんでもいいよ』








うーん、と私は考え込んでしまった。
バレンタインと言えばチョコレート以外思いつかないティピカルジャパニーズなのだ。
しかも男子からもらうの?お花とか欲しいけど、そういうのでいいのか?
しばし悩んだ挙句、私は『仁さんのあげたいものでいいよ』と答えた。
仁はすぐに返事をくれた。









『じゃぁ、メイサさんが欲しいものをあげる』

『仁さん、私が欲しいものわかるの?』

『うん』

『どうして?どうやって知ったの?イチゴか人参?(笑)』

『違うよ(笑)』









仁さんはどこか楽しげに返信してきた。







『1.昨日メイサさんは僕のことを好きって言った。
2. 今日僕に彼女がいるか聞いた。
以上の事からメイサさんが僕から欲しいものはある言葉だと推測しています』







(OvO)









『いい読みね』

『間違ってる?』

『ううん、合ってるよ』

『:)』







そそそそれは
あの、その、何か言ってくれるんでしょうか?
その、確定的な言葉というかなんと言うかその……








『何を言ってくれるのかな~、楽しみだな♪』

『今言って欲しい?』

『えー、気になるけど。仁さんは今言いたくないの?』

『大事な事だから、メイサさんにとって、会って聞いたほうがいいんじゃないかと思ってる』







大事なことですと







『そうだね♪じゃぁその時まで待ってる♪』

『うん。楽しみにしてて :)』







ちょちょちょちょっと~!!
それってもうあれ、こここコケーッコッコこくはモゴモゴに決まってるんじゃないのー!?
ていうか、前回のはそれに含まれないのかしらん???



ここで少し触れておきたいのが、仁さんのバックグラウンドだ。
仁さんは生粋の何処かの国の人なのだが、お父さんの所有していた本をきっかけに日本に興味を持った。
そのまま日本について学ぶうちにどんどんと興味が増していき、日本人の友達を作ったり日本の会社でインターンシップをする程になった。
完璧というには程遠いものの流暢と言える日本語力はひとえに彼の独学の成果で、
いまでは定期的に日本を訪れるほどの親日家である。

そんな彼なので、日本文化について学んだり取り入れるのが大好き。
いつかした彼との会話では、『僕の国と日本はとても似ていて、だけど違うところは日本の方がちゃんとしていると思う』
『例えば日本人は告白をするけど僕らはしない。日本人の方がわかりやすくていいと思う』
と、のたもうていたのだ。






私は頬杖をついて彼の言葉を思い出していた。





するってーとアレだな。
やっぱちゃんとした話をしたいっていうのは、そーゆーことなんだな。
その姿勢も、どこか日本人ぽいというか、細やかな感じがするわね。






『ところで』





不意に仁さんが切り出した。





『メイサさんはどんな物をくれるのかな』

『え?チョコレートじゃないの?』

『バレンタインだからチョコレートもいいけど、実際に僕がメイサさんから欲しいものは、それじゃない』







(°_°)






『え、じゃぁ、なーに?』

『メイサさんからしかもらえない物で、甘いものがいいな』







あ ま い も の ?






それってつまり。。。







ポチポチポチ







『なるほど。
じゃ、私はチョコレートで出来た口紅を探した方がいいってことかしら?』







ピロリン






『:)』






さすがだね、と仁さんは続けた。








『メイサさんは僕のこと、本当によくわかってるね』

『私は仁さんの先生だからね』

『メイサ先生はいつも、素晴らしいレッスンをしてくれるね』

『もちろん』

『次はどんなレッスンを受けられるのかな?』







ポチポチポチ








『次のレッスンは、いかにして唇の上のチョコレートを上手に食べるか、よ』







ピロリン







『先生……先生となら、上手くやれる自信があります。
でも僕はスローラーナーなので、たっぷり時間をかける必要があると思います







矛盾しています








『仁くん、先生のチョコレートを食べ切るつもりですか?』

『勿論です。さもなければ、チョコレートが無駄になりますから』







私は思わず吹き出した。
フザケ切った一連の流れも面白かったが、彼のちょいちょい挟んでくるロジカルな言い訳がまた面白かった。
『大事なこと』の全貌はわからなかったが、だいたいの目星はついた。
ひと月以上になるという日本旅行が終わった後で、まぁいつか会えるのだろうと思った。
その時にその『大事なこと』を教えてもらい、直接会ってビールでも飲みながら
こんなおフザケが出来るのかなと思ったら、とても楽しみだった。



そしてこんな風に、仁さんのアプローチは少しずつ変わっていった。






続きます。




告白

2018-05-29 15:53:08 | 
それは、いつものように何でもないチャットをしていた時だった。






『もう成績返ってきたよ』

『早いね。どうだった?』

『すごく良くできた!予想以上だった』

『仁さんすごいね♪』

『メイサさんのおかげ。いい先生だから』

『仁さんがいい学生だからだよ』

『これでメイサさんから良いご褒美貰えそう』








プッと私は吹き出した。








『仁さん、やっぱり良い学生じゃないかも』

『どうして!?』

『何のために勉強頑張ったか、思い出した(笑)』








すぐに仁は、(笑)と返信した上で、こう返してきた。









『大切なことのために頑張った』










私は再び吹き出した。










『ははは、仁さん面白い』

『(笑)』

『仁さんと話すと、いつもたくさん笑っちゃう』

『僕もメイサさんを笑わせるのが好きだよ』









おっとー。そうきたか。
よぉーし、訂正入れちゃえ。










『訂正文:僕もメイサさんを笑わせるのが好きだし、笑い声を聞くと嬉しくなる』










私の訂正文を見て、仁さんはまた、メイサさんの言う通りだよ、と楽しそうに答えた。









『そう言ってくれると嬉しいな♪』

『本当のことだからね。メイサさんは僕を笑わせるのが好き?』

『うん♪』

『どうして?』







(΄◉◞౪◟◉`)






えっ…とぉーーーーーーー










『なぁに?その質問(笑)』







ピロリン








『どうして僕のことを笑わせるのが好きなの?』








詰めてきた。









ど、
どうしようーーーー!!







私は頭の中がズンドコ祭りになっていたが、あくまで冷静を装って返信した。(ズンドコ祭りって何)








『アハハ(笑)仁さんと話すと楽しいからかなー♪だからいつもつい長電話しちゃう』

『そうだね。いつも寝不足だね』

『そうだよ。お互いもっと寝たほうがいいよ』

『そう思う。でもしょうがない。僕は












好きな人と話したら、自分からやめることができない』









(!!(΄◉◞౪◟◉`)(΄◉◞౪◟◉`)(΄◉◞౪◟◉`)






なっ、
何じゃそりゃぁーーーーーー!?!?!?
ちょちょちょちょっと待って。もしかしたら、人としてっていうフレーズ書くの忘れただけかもしれないよ。
だ、だ、だ、大体8個下だから!は、ち、こ!!!






ピロリン





きゃっまた来た!涙









『僕、さっきの質問の答え、まだ待ってるよ』

『え?』

『メイサさんは、どうして僕とこんなに頻繁に電話してるの?』









仁さん………








『えっと…』









ポチポチ…ポチ…









『なんて答えたらいいのかな(笑)答える前に、聞きたいことがあるな』

『聞いて』

『仁さんは?』









キーボードを打つ指先に、心音が響くようだった。








『仁さんが教えてくれたら、答える』








ピロリン










『僕はメイサさんのことが大好きだからだよ。
残念なことに僕達はすごく離れたところに住んでいるけど、
僕は可能な限りすぐにメイサさんに会えるように全力を尽くします。』









仁さん………!






ビックリした気持ちも心のどこかにいた気がするけど
そんな事どうでもいいくらい、抱えきれないくらい沢山の温かい気持ちが押し寄せて来た。
仁さん、本当?
仁さんもそう思っていてくれたの?
すごく、すごく嬉しい。。。








『メイサさん』

『はい』

『次は、メイサさんの番だよ。返事、して』









私はハァーとため息をつき、両手で頬を覆った。
頬が熱い。
仁さん、じゃ、素直に答えちゃうよ。








ポチポチポチ………ピロリン








『私は仁さんが大好きなの。前からずっと。
早く会いたい、来て欲しいってずっと思ってたの。そんな事ばっかり考えてた。』








すぐに、仁が返事を打ってきた。









『僕も同じ気持ちを持っていた』

『本当に?』

『うん、ずっと前から好きだと思ってた』

『いつから?』

『初めて電話した時から』







やっぱり、とちょっと思った。
仁さんはさらに聞いてきた。







『メイサさんはいつから僕がメイサさんのこと好きだって気づいてた?』

『うーん。初めて長チャットした時かな』







私はサラサラと文章をしたためた。








『すごく長く話したし、お互い楽しかったから。それに、仁さんは嘘をついたけど私のこと可愛いと思って連絡してきたから。
そんなふうに思っている人とあんなに楽しく話したら、好きになると思う』








仁さんは、バレてたね、と笑った。そして、でも、と続けた。








『でも、これでやっと楽になった。バレてよかった』

『ははは(笑)もっと早く言ってくれればよかったのに』

『まだ知り合って間もないから、言ったら気持ち悪いって思うでしょ』

『まぁ、ね』

『だから隠してたけど、メイサさんにバレた』








私は思わず、微笑んだ。









『まぁ、仁さんは本だからね』







こうして、私達は晴れて両思いになった。
これからどんな障害があるのかとか、実際にいつ会えるのかとか、
まだ見えぬ未来(さき)のことは考えず、
ただずっと心に溜めていた思いをようやく口にすることができて、
そしてやっと、ずっと聞きたかった言葉を聞くことができて、すごく幸せな気持ちでいっぱいだった。





続きます。



ご褒美が欲しい

2018-05-25 15:18:40 | 
仁さんと話し始めてから1週間も経たない頃だろうか。
試験勉強に疲れた仁さんからこんなメッセージが届いた。







『今日は絶望。全然上手くいかないよ。メイサさん助けて(笑)』






彼の専攻は、私が超苦手っていうか知識皆無な分野だったで、私は『無理やわ(笑)』と即答した(笑)






『どうしたらモチベーションを保てるのか、いいアドバイスをくれない?』


『勿論あげられるわよ』







私は、んー、と指を唇に当て、考えを巡らせた。






こんなのは、どーお?





ポチポチポチ






『モチベーションを保つには、2つのものが必要なのよ』


『なに?』


『1つは危機感ね』







なるほど、と仁は納得した。






ポチポチポチ







『そしてもう1つは、ご褒美よ』







ピロン






『完璧にわかった。じゃぁ、メイサさんは僕が試験でいい成績を残したら、どんなご褒美をくれる?』







お?私からご褒美が欲しいとな。






『うーん、どんなご褒美が欲しいの?』


『メイサさんからしか貰えないものが良いな』


『うーんじゃぁ、何か日本のものとか?』


『それも良さそうだけど、近いうちに日本に行くから、自分で手に入れられそうだな』


『そうね。逆に私が欲しいわ(笑)』


『メイサさんにお土産買ってくるよ』


『わーい、ありがとう!!嬉しくてハグするかも(笑)』


『喜ぶけど(笑)』






あっそう?
じゃぁ、こんなのはどうですか?






『じゃぁ、試験でいい成績が取れたらラブリーなハグをプレゼントするのはどう?
ま、欧米人にとってはハグは挨拶だけど』






ピロリン






『いいね。確かに僕らは男女問わずハグするけど、メイサさんにしてもらったらそれは他の人とするのとは全然違うよ :)』








可愛い!







私は頬杖をついてニマニマと彼とのご対面を想像した。
初めて電話したその日から、毎日のように、いや、少なくとも2日に一回は電話をしていて、
それは短くて2時間、長くて4時間はかけていた。
仁さんは決定的な言葉こそ言わないものの、私と話す楽しさや、私を魅力的に思っている事を匂わす言葉を幾度となく口にしていた。
そしてそんな彼の態度に、私自身もワクワクとときめいていた。
プロフィールの写真があるとは言え、声しか知らない彼にすっかり夢中だった。
言うなれば、脳内彼氏だった。







仁さんは私のこと、どう思ってるのかなぁ。
私の事好きなのかな?って思っちゃうけど、それは勘違いなのかな。
まぁ、何と言っても会ったこともないしね。
これだけ頻繁に話していても、お互いに魅力的だと思っていても、
会ったこともない人を好きになるなんて、仁さんはバカみたいだと思うかもしれないしな。







会ってみたいなぁ。





私の国に、会いに来ないかな……












そんなある日の会話だ。








『仁さんは読みやすい本だからね』







先日教わった彼の国の表現を使い、私はちょっと彼をからかっていた。
私たちが使っていたアプリには色々と便利な機能がついている。
コメント機能、添削機能、翻訳機能だ。
例えば彼が「メイサさんと今何しているの?」と送ってきたとしよう。
その文章に対して添削機能を使い、「メイサさんは今何しているの?」正しい文章を送信してあげることができる。
コピぺする手間も要らず、添削したい発言を長押しするだけで添削用ページが開けるので、とても便利だった。
とても便利なので、まとも添削以外にも、ふざけて添削することがあった。
たとえば、「メイサさんは話しやすい」と送ってきてくれたなら、
「メイサさんは話しやすいし可愛い♡」と、勝手に付け加えてやったり(笑)
私がこの機能を使ってふざけるのを、仁さん自身も楽しんでいた。



この日も彼が何かしら私についての感想を送ってきたので、
私は上記同様に調子に乗った添削をしてやったのだ。








『メイサさんの添削はいつも正しいね(笑)』


『でしょ?仁さんは読みやすい本だからね』


『僕が言わなくてもメイサさんが全部直してくれるから、すごく楽(笑)』


『やだ、自分でも言ってよ。(笑)あ、じゃぁ私はどう?』


『メイサさんの本?』


『そう。私の本を読んでみて』







なんて返すかしら……








ピロリン







『メイサさんが今考えていることは………












ニンジンケーキが食べたいわ』









(°▽°)








『(何でやねん!)違うわよ〜!(笑)確かに私はウサギだけど!』


『外したか(笑)』







そう、彼は私のことをウサギ扱いするところがあった。
彼は、というか、話の流れの中で『私はウサギみたいに臆病なのよ』とふざけた事があったので、
それ以来私をウサギとして表現する事が多々あったのだ。










『外れだよ〜。もう一回読んでみて』


『メイサさんは………











僕の国に旅行に来たい』









(°_°)










『えっと、半分当たり、かな。確かにあなたの国には行きたいけど』


『半分?難しいな…。先生、ヒントをください』


『あなたは優秀な学生だから、整理してみたらわかると思うわよ』


『整理?』









ポチポチポチ








『1.私はあなたの国に行きたい。
2. 私はあなたの国に旅行に行きたい、は半分合っている。
3.以上の理由から、何が間違っているのかわかるはずです』









すぐに







ピロリン








『A. メイサさんは僕の国に、僕に会いに来たい。』








私は微笑んだ。







『:)』


『当たり?』


『うん』







仁さんは嬉しそうだった。
もしこれが、直接会っていたなら、もっと時間がかかっていたのかもしれないけれど、
オンラインでやりとしているにしては、ゆっくりと、
私達は少しずつ、少しずつ、相手に嫌われまいと、
だけど逸る気持ちは抑えられず連絡だけは頻繁に、
それでも、決定的なことは言えずに、探り探りで距離を縮めて行っていた。






2週間後のことだった。








続きます。