『ん〜異国で10個下の男の子にナンパされるなんて、一度体験してみたぁーい』
と、みずきはテンション高めに返信してきた。
グループチャットの背景はパステルカラーの小花柄だ。
ちょっと乙女すぎるかとも思ったが、年々カワイイを制限されてくるアラサーなのだから、誰に迷惑かけるでもないところでは思い切った方が自己満足度が高いんじゃないかとこれを選んだ。
カワイイチャット画面では私がバーでナンパされた話が話題になっていた。
もう1人の参加者、ヒロちゃんのコメントがアップロードされた。
『日本とは色々違うのでしょうな。価値観など』
彼女は恋愛ごとに全く興味がなく、結婚も「まぁ母に孫の顔を見せてやった方がいいとは思うけど」と他人事のようにつぶやくくらいだ。
年齢で言えば一浪しているヒロちゃんが年上なのだが、婚活なり妊活なり活がつくものにはことごとく興味がない女性だ。
(ちなみに就活さえ頑張っていなかった笑)
私は人差し指をあごに当て、いかにも考え事してそうな表情をした。
私の仕草は基本、わざとっぽいのだ。(わざとじゃないんだけど)
『確かにちょっと可愛い子だったから嬉しかったけど、10歳下ってヤベーなって驚いた方が強かったよ(笑)
年上だろうと思って声かけてきたらしいから、日本と違って若さは重視されないのかもね?』
パシャっとスクリーンショットを撮ると、ソッコーでグループチャットに上げた。
『ちなみに、この子がヤンガーくん。老けてるよね(笑)』
すぐに既読マークがつき、ヒロちゃんのコメントが続いた。
『ヤンガーくん、20代後半ぐらいに見えます。
顔立ちの問題かもしれないけど、仁さんの方が可愛い感じがします。
仁さんはおいくつですか?』
当然ここでは私の脳内彼氏の話も知られている。
プロフィールの写真をさっき同様スクショして、皆で共有済みだ。
ちなみにヤンガーくんの写真は、全く別のトークアプリ上にアップされているプロフィールからいただいた。
ヤンガーくん目線で言うと、あの日のナンパの釣果は私の電話番号ゲットに止まった。
『私も仁さんの方がいいと思う♪ 仁さんは24歳です』
『3つ違いには見えませんな…』
『私も仁さんの方が好みー♡ いや、ヤンガーくんはワイルド系で色気を感じるけど(笑)』
好き勝手に値踏みする文章で、チャットは大いに盛り上がった。
下世話と言われればそれまでだが、どの女子会でも男子会(ってあるの?)でもよくあることだろう。
本来は、私だって直接会って日本酒(カシオレとは言えない)片手に大騒ぎしたい。
けれど今は遠い異国の地に住んでいるので、こうして時折時空と時差の壁を超えてチャットしているのだ。
楽しいお喋りの腰を折るようではあったが、折角の機会なので私は2人に甘えだした。
『でも聞いて。聞いて聞いて。
仁さんとはめちゃめちゃ盛り上がってるし、できるだけすぐ会いに行く!って言ってくれてる。
ワーイって思うけど、一方で24歳が31歳ってゆーか今年32歳に直接会ったら千年の恋も冷めると思うの。』
深い溜息が漏れる。
『ほうれい線とかさ…目の小じわとかさ……』
うぅ、書いてて自分で辛くなってくる。
年齢を言い訳にはしたくないけど、実際5年前っていうか3年前でも違うんだもの。
『そんな折に、私の友達の話ってテイで男友達にこの話したら、
"それもう若いだけよ!その年の男は考えることなんかできないんだから!
奴の国にもそらもう若くて綺麗な子がいくらでもいるんだから、すぐ心変わりするって!
ていうかした方がいいよ。手が繋げてキスできる女の子と付き合えよ!
バカだなそいつ!!" ………って言われたのよ。』
あぁ助けて涙
『いや、もうさ………その通り過ぎて………耳が痛かった(笑)
ガッツリ目を覚まされました………』
私の話が長いので独壇場になっているが、順調に既読マークがついて行く。
みんながどんな顔をして読んでいるのか、気になる(笑)
『そんなある日よ。仁さんとテレビ電話する約束をしていたのよ。
私達、お互いの写真しか知らないし、仁さんの写真ちょっとボケてるし。
………ねぇ、待って。』
ポチポチポチ
『テレビ電話って、ほうれい線映りません?』
そう。
仁さんとの年の差に圧倒的な不安を感じていた私は、テレビ電話を前にハチャメチャに緊張していた。
だだだだだだって今まで見せたことないし!
笑った時にシワできたらどうすりゃいいの!?
エクボじゃないわよ、目尻のシワの話よ!!!!(号泣)
私の気持ちを労わるかのように静かに既読マークがついた。←思い込み
『電話の予定は夜だったけど、メイクも髪もそのまま!
何ならネイルも綺麗にしておこうってアラサーなりのベストを尽くすつもりでいたのよ。
でもそしたらさっきね……
"テスト勉強で徹夜したから死ぬほど眠い。メイサさんの都合が大丈夫なら明日でもいい?"
って受信したのよ』
ズデーッと転んでいるスタンプを続けて送った。
『あーーーこれだーーー。って現実を突きつけられた気がしたの。
この一回のリスケで彼を判断するのはおかしいかも知れないけど、
私が言いたかったのは、期待しすぎちゃいけないのがわかったって事なの。
風呂入ってさっぱりメイクも巻き髪も落としたわ(笑)』
今度は酒を煽っているスタンプを送った。
『そもそも本当にわたしの国に来たところで何も起こらないんだけどさ。←そうか?
多少ワクワクしてた自分が嘲笑えました。
きっとここには来ない。
きっと、会ったらガッカリする。
だからもぉー何も気負わずに会話を楽しもうって思いました』
完。 と書いてあるスタンプで締めた。
2人から「お疲れ様」と書いてあるスタンプが届いた。
うぅ。泣
『男友達の話がグサっときたよ…。
仁さんが会いたいとかテレビ電話とか言ったら、そりゃソワソワワクワクするよぉ』
『そうだ、そうだ。そこは年齢関係ないんじゃないですか』
『そうだよぉ。メイクや髪セットした時間返して欲しいと思っちゃった(笑)』
2人の心優しい友人に汲んでもらい、私の気持ちが楽になってきた。
『ありがとう2人とも。まさしくその通りで、グサっとソワソワクワクしてたの。。。
一応、私が空いてなかったら今晩するつもりだったみたい』
『なるほどね!』
『それはワクワクしますな』
『そうなのよん!!』
はぁー、と今度は明るめの溜息がこぼれた。
持つべきものは友達だ。
例えどんなに離れていても心が通っている友達はすごく頼もしい。
それが海を越えていても、だ。
私がくだらない私の話を聞いてもらったお礼の言葉を送ると、ヒロちゃんは
『いえいえ。私もメイちゃんと離れていても話せて嬉しいよ。スマホに変えておいて良かった』と返してきた。
(ヒロちゃんはスマホすら興味がなかったのだ)
みずきも『私も楽しいし嬉しいー♡スマホに感謝だね!(笑)』とノリ良く返してくれた。
私がチラリと時計を見ると、時刻は午前10時を指していた。
私達の友情チャットは、睡眠などのインターバルを挟んで一晩跨いでいた。
仁さんとリスケしたテレビ電話はあと1時間後に迫っていた。
当然朝からフェイスマッサージに化粧に尽力した(笑)
服装とかどうしよう、と悩んだが、結局カフェテラスで話すことにしたので、
お気に入りのマフラーを巻いて可愛らしくまとめることにした。
私は綺麗に整えられたネイルが目立つ指でメッセージを打った。
『あと1時間後にテレビ電話に挑戦します!!』
すぐさま、応援メッセージ付きのスタンプがポンポンとアップされた。
『ドキドキですな』
『うん!
……でも、1つ考えているのが』
何?と2人同時に送ってきた。
『もしかしたら、仁さんもピント合わせて見たら変かもしれないよね(笑)』
すぐに返信したのはヒロちゃんだ。
『待って。そもそもメイちゃん変じゃない』
確かに。
シワシワなだけだ。
『ヒロちゃん鋭いね(笑)ってヤダ!みんなと話し込んでて準備が整ってません!(笑)』
慌てて携帯をバッグにしまうと、私は出かける支度を始めた。
ドキドキする。
家で話してもいいけど、Wi-Fiの調子が悪い上にライト二ングもいまいちな所よりは、
オシャレでフリーWi-Fiが使えるカフェテラスの方がいいだろう。
家から徒歩3分程度のところにあるカフェは席数が多いし居心地も良い。
ただでさえ緊張しているのだから、せめて行き慣れたところで話そうと思った。
カフェに着き、オーダーしたカフェラテを片手にテラス席についた。
10:56。あとちょうど4分したら、彼は連絡してくるはずだ。
彼からの着信履歴は全部00分だ。
バッグから携帯を取り出し、セルフィーモードで自分をチェックする。
ちょっと上から撮るのが鉄板だが、カフェでっていうかテレビ電話でそれやってたら変じゃない?
でもそしたらどの角度で撮るのが一番綺麗に写るんだろう。
どうやったら、可愛いって思ってもらえるんだろう。
そんな事しているうちに時間はもう10:59。
あぁ、もう、ほんとに…………
心臓が…………
ピロリン
テラスに着信音が響いた。
続きます。
と、みずきはテンション高めに返信してきた。
グループチャットの背景はパステルカラーの小花柄だ。
ちょっと乙女すぎるかとも思ったが、年々カワイイを制限されてくるアラサーなのだから、誰に迷惑かけるでもないところでは思い切った方が自己満足度が高いんじゃないかとこれを選んだ。
カワイイチャット画面では私がバーでナンパされた話が話題になっていた。
もう1人の参加者、ヒロちゃんのコメントがアップロードされた。
『日本とは色々違うのでしょうな。価値観など』
彼女は恋愛ごとに全く興味がなく、結婚も「まぁ母に孫の顔を見せてやった方がいいとは思うけど」と他人事のようにつぶやくくらいだ。
年齢で言えば一浪しているヒロちゃんが年上なのだが、婚活なり妊活なり活がつくものにはことごとく興味がない女性だ。
(ちなみに就活さえ頑張っていなかった笑)
私は人差し指をあごに当て、いかにも考え事してそうな表情をした。
私の仕草は基本、わざとっぽいのだ。(わざとじゃないんだけど)
『確かにちょっと可愛い子だったから嬉しかったけど、10歳下ってヤベーなって驚いた方が強かったよ(笑)
年上だろうと思って声かけてきたらしいから、日本と違って若さは重視されないのかもね?』
パシャっとスクリーンショットを撮ると、ソッコーでグループチャットに上げた。
『ちなみに、この子がヤンガーくん。老けてるよね(笑)』
すぐに既読マークがつき、ヒロちゃんのコメントが続いた。
『ヤンガーくん、20代後半ぐらいに見えます。
顔立ちの問題かもしれないけど、仁さんの方が可愛い感じがします。
仁さんはおいくつですか?』
当然ここでは私の脳内彼氏の話も知られている。
プロフィールの写真をさっき同様スクショして、皆で共有済みだ。
ちなみにヤンガーくんの写真は、全く別のトークアプリ上にアップされているプロフィールからいただいた。
ヤンガーくん目線で言うと、あの日のナンパの釣果は私の電話番号ゲットに止まった。
『私も仁さんの方がいいと思う♪ 仁さんは24歳です』
『3つ違いには見えませんな…』
『私も仁さんの方が好みー♡ いや、ヤンガーくんはワイルド系で色気を感じるけど(笑)』
好き勝手に値踏みする文章で、チャットは大いに盛り上がった。
下世話と言われればそれまでだが、どの女子会でも男子会(ってあるの?)でもよくあることだろう。
本来は、私だって直接会って日本酒(カシオレとは言えない)片手に大騒ぎしたい。
けれど今は遠い異国の地に住んでいるので、こうして時折時空と時差の壁を超えてチャットしているのだ。
楽しいお喋りの腰を折るようではあったが、折角の機会なので私は2人に甘えだした。
『でも聞いて。聞いて聞いて。
仁さんとはめちゃめちゃ盛り上がってるし、できるだけすぐ会いに行く!って言ってくれてる。
ワーイって思うけど、一方で24歳が31歳ってゆーか今年32歳に直接会ったら千年の恋も冷めると思うの。』
深い溜息が漏れる。
『ほうれい線とかさ…目の小じわとかさ……』
うぅ、書いてて自分で辛くなってくる。
年齢を言い訳にはしたくないけど、実際5年前っていうか3年前でも違うんだもの。
『そんな折に、私の友達の話ってテイで男友達にこの話したら、
"それもう若いだけよ!その年の男は考えることなんかできないんだから!
奴の国にもそらもう若くて綺麗な子がいくらでもいるんだから、すぐ心変わりするって!
ていうかした方がいいよ。手が繋げてキスできる女の子と付き合えよ!
バカだなそいつ!!" ………って言われたのよ。』
あぁ助けて涙
『いや、もうさ………その通り過ぎて………耳が痛かった(笑)
ガッツリ目を覚まされました………』
私の話が長いので独壇場になっているが、順調に既読マークがついて行く。
みんながどんな顔をして読んでいるのか、気になる(笑)
『そんなある日よ。仁さんとテレビ電話する約束をしていたのよ。
私達、お互いの写真しか知らないし、仁さんの写真ちょっとボケてるし。
………ねぇ、待って。』
ポチポチポチ
『テレビ電話って、ほうれい線映りません?』
そう。
仁さんとの年の差に圧倒的な不安を感じていた私は、テレビ電話を前にハチャメチャに緊張していた。
だだだだだだって今まで見せたことないし!
笑った時にシワできたらどうすりゃいいの!?
エクボじゃないわよ、目尻のシワの話よ!!!!(号泣)
私の気持ちを労わるかのように静かに既読マークがついた。←思い込み
『電話の予定は夜だったけど、メイクも髪もそのまま!
何ならネイルも綺麗にしておこうってアラサーなりのベストを尽くすつもりでいたのよ。
でもそしたらさっきね……
"テスト勉強で徹夜したから死ぬほど眠い。メイサさんの都合が大丈夫なら明日でもいい?"
って受信したのよ』
ズデーッと転んでいるスタンプを続けて送った。
『あーーーこれだーーー。って現実を突きつけられた気がしたの。
この一回のリスケで彼を判断するのはおかしいかも知れないけど、
私が言いたかったのは、期待しすぎちゃいけないのがわかったって事なの。
風呂入ってさっぱりメイクも巻き髪も落としたわ(笑)』
今度は酒を煽っているスタンプを送った。
『そもそも本当にわたしの国に来たところで何も起こらないんだけどさ。←そうか?
多少ワクワクしてた自分が嘲笑えました。
きっとここには来ない。
きっと、会ったらガッカリする。
だからもぉー何も気負わずに会話を楽しもうって思いました』
完。 と書いてあるスタンプで締めた。
2人から「お疲れ様」と書いてあるスタンプが届いた。
うぅ。泣
『男友達の話がグサっときたよ…。
仁さんが会いたいとかテレビ電話とか言ったら、そりゃソワソワワクワクするよぉ』
『そうだ、そうだ。そこは年齢関係ないんじゃないですか』
『そうだよぉ。メイクや髪セットした時間返して欲しいと思っちゃった(笑)』
2人の心優しい友人に汲んでもらい、私の気持ちが楽になってきた。
『ありがとう2人とも。まさしくその通りで、グサっとソワソワクワクしてたの。。。
一応、私が空いてなかったら今晩するつもりだったみたい』
『なるほどね!』
『それはワクワクしますな』
『そうなのよん!!』
はぁー、と今度は明るめの溜息がこぼれた。
持つべきものは友達だ。
例えどんなに離れていても心が通っている友達はすごく頼もしい。
それが海を越えていても、だ。
私がくだらない私の話を聞いてもらったお礼の言葉を送ると、ヒロちゃんは
『いえいえ。私もメイちゃんと離れていても話せて嬉しいよ。スマホに変えておいて良かった』と返してきた。
(ヒロちゃんはスマホすら興味がなかったのだ)
みずきも『私も楽しいし嬉しいー♡スマホに感謝だね!(笑)』とノリ良く返してくれた。
私がチラリと時計を見ると、時刻は午前10時を指していた。
私達の友情チャットは、睡眠などのインターバルを挟んで一晩跨いでいた。
仁さんとリスケしたテレビ電話はあと1時間後に迫っていた。
当然朝からフェイスマッサージに化粧に尽力した(笑)
服装とかどうしよう、と悩んだが、結局カフェテラスで話すことにしたので、
お気に入りのマフラーを巻いて可愛らしくまとめることにした。
私は綺麗に整えられたネイルが目立つ指でメッセージを打った。
『あと1時間後にテレビ電話に挑戦します!!』
すぐさま、応援メッセージ付きのスタンプがポンポンとアップされた。
『ドキドキですな』
『うん!
……でも、1つ考えているのが』
何?と2人同時に送ってきた。
『もしかしたら、仁さんもピント合わせて見たら変かもしれないよね(笑)』
すぐに返信したのはヒロちゃんだ。
『待って。そもそもメイちゃん変じゃない』
確かに。
シワシワなだけだ。
『ヒロちゃん鋭いね(笑)ってヤダ!みんなと話し込んでて準備が整ってません!(笑)』
慌てて携帯をバッグにしまうと、私は出かける支度を始めた。
ドキドキする。
家で話してもいいけど、Wi-Fiの調子が悪い上にライト二ングもいまいちな所よりは、
オシャレでフリーWi-Fiが使えるカフェテラスの方がいいだろう。
家から徒歩3分程度のところにあるカフェは席数が多いし居心地も良い。
ただでさえ緊張しているのだから、せめて行き慣れたところで話そうと思った。
カフェに着き、オーダーしたカフェラテを片手にテラス席についた。
10:56。あとちょうど4分したら、彼は連絡してくるはずだ。
彼からの着信履歴は全部00分だ。
バッグから携帯を取り出し、セルフィーモードで自分をチェックする。
ちょっと上から撮るのが鉄板だが、カフェでっていうかテレビ電話でそれやってたら変じゃない?
でもそしたらどの角度で撮るのが一番綺麗に写るんだろう。
どうやったら、可愛いって思ってもらえるんだろう。
そんな事しているうちに時間はもう10:59。
あぁ、もう、ほんとに…………
心臓が…………
ピロリン
テラスに着信音が響いた。
続きます。