「あなた、どうして彼女いらないの?」
「へ?」
あの日、寂れた安ホテルで私は、アイアンにそう訊いた。
だってそうじゃないか。
好みの女をやりたいがために口説くなら
そしてその女がわりと重いかもと思ったなら、
それこそ好きだとか付き合おうとかウソぶいて口説けばいい。
それをしない。
彼女にしたくない、欲しくないのだ。
「それかすでに居るの?あ、奥さん?」
正直どうでもよかった。
家に呼べない時点で怪しかったし
マジな恋愛相手も欲してなかったし
親切で英語が上手でどタイプなんだからそれで良かった。
アイアンはペラペラと答えた。
「どっちも居ないよ。
彼女は2ヶ月前に別れたし、奥さんもいないよ。」
「ふーん。なんで別れたの」
「特別なことはないよ。
話し合ったけど、もう一緒にやる事がなくなったんだ。
色んなことしたし、結婚するでもないしさ」
と、アイアンは天気の話でもしてるよう言った。
軽いなー。
大して好きじゃなかったのか、もしくは元々そういう風にしか付き合わないのか。
とにかく私の本当に好きで付き合う奴とは全然違うな。
「で、今はいりませんと?」
「まぁ忙しいよね。
仕事にやりたい事に。そんなに時間ないね。
でもまぁ、彼女がいらないわけでもないよ」
「はぁ?」
私は声をあげた。
「そう見えないわよ。
あなたにとっては、彼女を持つのは大して興味ないって感じがひしひしと感じられますけど。」
「そんな事ないよ」
「あーはいはい。つまんないってことはないけど、ただオッケーなだけ、でしょ。」
「まぁオッケーだけどさ。
彼女が居るってのもいいとは思ってるよ。」
ほんとかよ…と訝しんで黙っていると、
仕事の後に会って話したり、と彼は続けた。
はぁ。
アンタは話すだけで満足できるのか?ってか何話すんだろ、
と完全に斜に構えて聞いていた。
正直、忙しいからっていう理由は、理解し難くはなかった。
そういう男はたくさん知っている。
彼らは浮気もしないし正直だし稼ぎもいいけど、
自分の時間と仕事に集中する余裕を大切にしている。
だから、彼女を持つ事にあまり興味がなかったり、出来たところであまり大切に、つまり、マメにしてやらない。
それはそれで合う女の子なら良いんだろう。
だからその時に、まだ怪しいなと思いながらも、
半分くらいありえない話じゃないと思ったんだ。
その時は多分、家の話も忘れてた。
なぜなら、彼女になる話をされ、そのあとに彼は、船に乗ることを提案したから。
完全に忘れたわけじゃなかったけど、
ただの変な奴なのかなぁって思ったんだな、私。
いや実際変じゃん、トイレに連れ込むくらいだし。
でも
ピースが嵌まった今、おぼろげだったものは完全体になってしまった。
そしてもう一度バラバラにはできない。
全てが真実だったら?
わかるよ、その可能性はゼロじゃない。
でも、賢い人間はその可能性を知りながら判断するべきだよね。
今だけ使えないカード。
ねぇ、私は現金で払うところを2ヶ月前に見たわ。
その今はどれくらい長いの。
このカード国家で。
驚きと悲しみともっとなんか色々が
胸の中で大波を起こしていた。
寄せていると思っていた波は、こんなに凶悪だったのか。
私は返信をしなかった。
続きます!
「へ?」
あの日、寂れた安ホテルで私は、アイアンにそう訊いた。
だってそうじゃないか。
好みの女をやりたいがために口説くなら
そしてその女がわりと重いかもと思ったなら、
それこそ好きだとか付き合おうとかウソぶいて口説けばいい。
それをしない。
彼女にしたくない、欲しくないのだ。
「それかすでに居るの?あ、奥さん?」
正直どうでもよかった。
家に呼べない時点で怪しかったし
マジな恋愛相手も欲してなかったし
親切で英語が上手でどタイプなんだからそれで良かった。
アイアンはペラペラと答えた。
「どっちも居ないよ。
彼女は2ヶ月前に別れたし、奥さんもいないよ。」
「ふーん。なんで別れたの」
「特別なことはないよ。
話し合ったけど、もう一緒にやる事がなくなったんだ。
色んなことしたし、結婚するでもないしさ」
と、アイアンは天気の話でもしてるよう言った。
軽いなー。
大して好きじゃなかったのか、もしくは元々そういう風にしか付き合わないのか。
とにかく私の本当に好きで付き合う奴とは全然違うな。
「で、今はいりませんと?」
「まぁ忙しいよね。
仕事にやりたい事に。そんなに時間ないね。
でもまぁ、彼女がいらないわけでもないよ」
「はぁ?」
私は声をあげた。
「そう見えないわよ。
あなたにとっては、彼女を持つのは大して興味ないって感じがひしひしと感じられますけど。」
「そんな事ないよ」
「あーはいはい。つまんないってことはないけど、ただオッケーなだけ、でしょ。」
「まぁオッケーだけどさ。
彼女が居るってのもいいとは思ってるよ。」
ほんとかよ…と訝しんで黙っていると、
仕事の後に会って話したり、と彼は続けた。
はぁ。
アンタは話すだけで満足できるのか?ってか何話すんだろ、
と完全に斜に構えて聞いていた。
正直、忙しいからっていう理由は、理解し難くはなかった。
そういう男はたくさん知っている。
彼らは浮気もしないし正直だし稼ぎもいいけど、
自分の時間と仕事に集中する余裕を大切にしている。
だから、彼女を持つ事にあまり興味がなかったり、出来たところであまり大切に、つまり、マメにしてやらない。
それはそれで合う女の子なら良いんだろう。
だからその時に、まだ怪しいなと思いながらも、
半分くらいありえない話じゃないと思ったんだ。
その時は多分、家の話も忘れてた。
なぜなら、彼女になる話をされ、そのあとに彼は、船に乗ることを提案したから。
完全に忘れたわけじゃなかったけど、
ただの変な奴なのかなぁって思ったんだな、私。
いや実際変じゃん、トイレに連れ込むくらいだし。
でも
ピースが嵌まった今、おぼろげだったものは完全体になってしまった。
そしてもう一度バラバラにはできない。
全てが真実だったら?
わかるよ、その可能性はゼロじゃない。
でも、賢い人間はその可能性を知りながら判断するべきだよね。
今だけ使えないカード。
ねぇ、私は現金で払うところを2ヶ月前に見たわ。
その今はどれくらい長いの。
このカード国家で。
驚きと悲しみともっとなんか色々が
胸の中で大波を起こしていた。
寄せていると思っていた波は、こんなに凶悪だったのか。
私は返信をしなかった。
続きます!