ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

休むも相場

2024-03-21 00:00:00 | 相場は相場に聞け!


最近は、もっぱら林輝太郎氏の著作を読み返しているが、やはり氏の著作は紛れもなく古典であるという思いを新たにしている。

投資本にも流行り廃りがあって、生前時の氏の影響は大きく、多くの世代に渡っていたと言って良いが、氏の逝去に伴ってあまり名前を聞くことがなくなってきたのは、致し方ないとは言え残念なことである。例えば、最近の投資関係のお勧め本の中に氏の本が出てくることはほとんどないが、このような『選集』が出版されているのは、後にも先にも林輝太郎氏だけであろう。古典だというのは、内容が時代遅れになって行かないからで、むしろ時代とともに新しくなっていくと言っても良いくらいである。



そして、これらの著作の中で、一冊を選ぶとしたら、どれが良いのかと言われれば、私はこの『ツナギ売買の実践』を躊躇なく挙げる。

最近のSNSを眺めていると、買い持ちの個別銘柄のヘッジとして、225などの指数を売っている例をよく見かけるが、これが「ツナギ」の一種であることをを理解した上で、実行している人は殆どいないのではないかと思われる。というのは、この「ツナギ」という概念を理解しているといないとでは、大げさでなく天と地ほどの違いがあると言わなければならないからだ。それは、結局、「ツナギ」の入れ方外し方が判らないからで、ヘッジとしての成功は、入れ方は兎も角、外し方が判らないと利益にもっていくことはなかなかと難しく、この点、心当たりのある人も多いだろう。

私も、最初にこの『ツナギ売買の実践』を読んだ時は、良くわからなくて、一読キツネにつままれたような気がしたものである。なんだこりゃ?文章自体は難しいものではなく、言っていることは判るが、その言っていることで、何を言わんとしているのかが判らないのである。これは知らない人には、「ツナギ」というのは全く新しい未知の概念であるからで、その未知のロジックを理解するのに時間がかかったという事であるが、この事はこの本に限らず氏の著作すべてに言えることだということが出来る。この意味で、氏の著作は、読者を選ぶ著作だと言わなければならない。氏も著作の中でくどい程述べているが、柔軟に未知の思考を受け入れることが出来ない人の目には、拒絶し断罪すべき内容にしか映らないといったことになるようだ。

この意味で、実践するしないは別として、他の著作ではお目にかかれない、ワン・アンド・オンリーの投資コンセプトを提示した投資本として、一度は触れて理解しておくべき著作であると考えているので、この機会に強くお勧めする次第である。


さて、なぜ今氏の著作を読み返しているかというと、私の知っている限り、氏が、前のバブル崩壊に上手く対応できた唯一の人物だからである。

また、天井近し、という相場観を持ったのは、ほとんどの銀行株、証券会社株が1987年の4月に天井を打って、88年、89年には大きく下げていた事実にもあった。平均株価は上げ続けたが、新日鉄は89年2月に984円をつけ、どうも天井くさい動きなので注意して見ていた。売ろう、とは思うが、なかなかふんぎりがつかない。
6月25日、中源線が陰転したので、思い切って翌26日の寄り付きで、証券会社3社で1,000株ずつ売った。これが、それから約7~10万株(増減があったし、他の銘柄も合計して)のカラ売りをするはじまりだった。そして、家を新築するのに引き出した以外は、98年1月までの8年間、半年毎に乗り換えながら売り続けたのだ。細かく計算したのはずっとあとであるが、上げ相場と下げ相場の両方での利益は10億円を超えていた。1948年にはじめて株の売買をしてからちょうど50年目である。私の人生のほとんど全部と言って良い。


つまり、ドテンして上げ相場だけでなく下げ相場でも利益を上げたのである。<8年間、半年毎に乗り換えながら売り続けた>ということからも確固とした相場観が伺えて、見事と言うしかないのであるが、それはそれとして、ここで私が注目したいのは、氏が<私の成功の一因は、88年5月から89年6月まで1年1カ月休んだことといまでも信じている。>と述べていることである。

氏は、「売り」、「買い」、「休み」のうち、一番大事で難しいのは「休み」とも述べていて、私はこの「休み」を入れようか入れまいか、どれだけ「休み」を入れようかと、現在はずっと考えを巡らしている最中である。

この「休み」を入れる意味合いは、マインド・マネージメントの意味合いからで、色々な意味合いがあるが、一番大きいのは「目線」を変えることが難しいということである。つまり、「上げ目線」から「下げ目線」に変えることが、難しいのだ。頭は容易に切り替ることが出来ても、潜在意識は納得しておらず、直ぐに切り替ることが出来ないので、「手が合わない」と言ったポカが頻発する事態に成りかねないのである、とでも言えば良いだろうか。

試しに、いくつか空売りしてみたが、難なく成功したのだから、余計に悩ましいところである。ちなみに、方針はすでに決めてあって、それは「ツナギ」を入れながらの両建てによる「売り上がり」である。つまり、リスク・マネージメント最優先で、ドテン狙いということであるが、ここからは、再エントリーのタイミングの間合いを計っていくことになる。

ここ半年ほどの相場を観察していると、結局はアメリカ次第のように見受けられる。市場は利下げを今か今かと待ち受けていて、年初には6回の利下げを見込んでいたが、なかなかインフレが収まる兆候が表れず、現在は年内3回の利下げにまで後退せざるを得なくなっている。私は下手をすると利上げもあるのではないかと思っているが、どちらにしても、前に述べたように、アメリカ経済は景気後退に突入することに成るので、アメリカのハード・ランディング・シナリオに変わりはない。結局、事はFOMCガチャといった様相を呈しているというのが、現在の私の考えである。