次は、リスク・マネージメントによるポジション・マネージメントについての部分。
duke氏は1銘柄への投資上限額を総資金の5分の1とし、さらにその1銘柄へのエントリーも5回に分けるという「5分割ルール」を述べているが、その理由づけの説明は私には論理的に全く受け入れがたい文章であって、これは非常に重要なことなので、いささか揚げ足取り的な文章になるが、私見を述べてみたい。
<5分割ルールとは、一銘柄あたりの投資上限額の5分の一を、最初のエントリーで投入することです。総資金が500万円で、一銘柄当たりの投資上限額が100万円だとすると、エントリーはその5分の一ですから、20万円を投入するのです。>
<この手法を取ると、一回目のエントリーでとるリスクは総資金の4%(=20万円÷500万円)です。そして、私の場合、10%の損失が生じたところを、絶対に譲れない損切ラインにしているので、最悪損切に追い込まれたとしても、2万円の損失額で済みます。2万円は総資金の0.4%です。>
<5分割ルールには明確な根拠があります。例えば、次のようなルールのゲームに参加したとしましょう。これはラルフ・ビンズが行った実験を参考にしたものです。
・おみくじの箱に当たりが6本、はずれが4本入っている。
・当たりが出れば掛け金は2倍、はずれが出たら掛け金は没収。
・元手は1万円で、100回おみくじを引ける。
・1回ごとの掛け金は、ゲーム参加者が毎回自由に決めることができる。
そして、100回引いた後の手持ちの金額が最も多かった参加者が勝者です。
・・・・・・・・
このゲームで、損失を被ったり破産したりせず、生き残るためにはどういうお金の掛け方がいいのでしょうか。それが、「最新の手持ち資金残高の20%を掛ける」という5分割ルールを用いる事なのです。私も実際に検証してみました。結論としては、・・・・かなり優位性の高い手法なのです。
・買っている時にはポジションサイズを増やし、負けている時には減らす。
・買いは5分割で試し玉から。
このルールを何度も復唱してください。そうすれば破産することなく、株式投資を続ける事が出来ます。続けることさえ出来れば、少しずつ経験値が上がり、勝てる投資家になれるはずです。>
ここでラルフ・ビンズの名前を持ち出して来ているということは、いわゆるケリーの公式(ケリー基準)を「根拠」として「五分割ルール」を決めたという事のようである。実際にはラルフ・ビンズはケリーの公式(ケリー基準)を基に改良して考案した最適リスク計算法 オプティマルf の唱道者であるが、原理的には同じなので、これらの違いについてはここでは触れない。
なお、duke氏はこの20%という数字を「損失を被ったり破産したりせず、生き残るため」と表現しているが、正確にいうとそれだけではなく、その中で最も資金効率が良い掛け方の割合を示す数字である。「損失を被ったり破産したりせず、生き残るため」というだけなら、5%や10%といった20%以下の掛け率でも何ら問題はない。
それはともかく、この20%と言う実験結果数値は総てのケースに当てはまる普遍的なものではなく、ややこしいので数式は引かないが、このケリーの公式(ケリー基準)はパラメーターとして勝率と損益比率を含んでいるので、この2つのパラメーターの数値が異なれば、当然結果も異なって来る。つまり、この20%という数字は、このおみくじの個別解ー勝率60%、損益比率が1対2という組み合せの時の最適解ーであって、duke氏の言うようにこれを株式投資一般に通ずる一般解とするのは、問題である。勿論、duke氏自身の場合もパラメーターの数字は異なってくるので当て嵌まらない。正確な数値は判らないが、他のところの記述からすると、duke氏の場合は勝率30%損益比率1対5~10といった数値になるようであるが。
そして、さらに議論の混乱に拍車を駆けているのはリスクの捉え方で、<一回目のエントリーでとるリスクは総資金の4%(=20万円÷500万円)>と書いている一方で、直ぐその後に<私の場合、10%の損失が生じたところを、絶対に譲れない損切ラインにしているので、最悪損切に追い込まれたとしても、2万円の損失額で済みます。2万円は総資金の0.4%です>と書いているので、20万円まるまるをリスクにさらしている訳ではない。従って、実際は<一回目のエントリーでとるリスクは総資金の0.4%>である。逆に言うと、duke氏は20%のリスクを取るのであれば、10倍のロットにしなければならないことになる訳である。
といったようなことで、結果として「五分割ルール」のリスクテイク自体は穏当なもので、損切ラインをなぜ10%に設定したのかの説明もないので、どうも私にはこれは結論先にありきの文章のように思われてならない。引き合いに出されたラルフ・ビンズもいい迷惑であるが、私がここでそれを指摘するのは、非常に重要であるにもかかわらず勝率と損益比率と掛け率の相関に関する原理原則が、日本の株式投資においては殆ど語られることがないからである。
話をおみくじに戻すと、このおみくじの場合のように勝率60%、損益比率が1対2になるような非常に優秀な投資システムというのは実際にはまずお目に係れない。一般に、損益比率が1対2であれば勝率は50%を切るのが普通であって、逆に勝率が60%であれば損益比率は1対0.8といった数字になるのが通例である。普通は勝率ばかりが重視されているが、実際には勝率40%でも損益比率1対2ならトータルで利益になり、勝率70%でも損益比率が3対1ならトータルはマイナスになる。
また、ケリーの公式(ケリー基準)に基いて掛け率を設定すると、資金の増減が激しく通常はメンタルが堪えられないのが普通である。このおみくじの場合で言うと、勝率60%であれば5連敗は普通に起こり得るので、20%の掛け率だと5連敗で1万円は3276円、3分の1以下になってしまうので、それでも続けられる人は稀であろう。そのため半分ケリーだとかの一種の妥協案が色々と発明されているが、このようなことから通常はバルサラの破産確率に基いたアレキザンダー・エルダーの主張する2パーセント・ルールが適正とされている。実際はduke氏の「五分割ルール」のリスクテイクは説明とは違って2%になるので穏当なものと書いた所以である。
それはともかく、ここで問題となるのが、実際には自分の投資システムの勝率や損益比率の正確な数字が判らないという事である。先のおみくじの例で言うと、5連敗して1万円が3276円になっても、勝率60%、損益比率が1対2という数値にゆくゆくは収斂していくという絶対の確信があれば、20%ずつ掛け続けていくことはそう難しいことではない。しかし、私の場合相場に限らず人生において絶対の確信など持ち得たことがない。まあ、この絶対というのも乱用されている言葉の一つであって、ここで阿川弘之氏の名言(迷言?)を引いて置くのも良いかも知れない。
<世の中には絶対という事は絶対にない。だから、絶対という言葉は絶対に、いいか、絶対に使ってはならない。>
そのため、これを検証によって確めるということになる訳であるが、検証という言葉もこれまた乱用されている言葉で、ネットでは(例えば実際はアフィリエイトサイトである無数の検証サイトなどが好例だが)1回或は数回試しただけで検証と謳っている例がほとんどで何とも呆れる他はない始末だが、確率論から言えば検証数は100回や200回でも足りないので、大数の法則では1万回の試行で80%の確率で誤差±20%の結果、4万回の試行で90%の確率で±10%の結果に収斂するとされている。
ということで、小難しい話がいささか長くなったので、今回はここまでとするが、この検証もその重要性にもかかわらず株式投資では殆ど指摘されることがない事項であって、duke氏もその例外ではないようだ。次にはこの点について述べることにする。
duke氏は1銘柄への投資上限額を総資金の5分の1とし、さらにその1銘柄へのエントリーも5回に分けるという「5分割ルール」を述べているが、その理由づけの説明は私には論理的に全く受け入れがたい文章であって、これは非常に重要なことなので、いささか揚げ足取り的な文章になるが、私見を述べてみたい。
<5分割ルールとは、一銘柄あたりの投資上限額の5分の一を、最初のエントリーで投入することです。総資金が500万円で、一銘柄当たりの投資上限額が100万円だとすると、エントリーはその5分の一ですから、20万円を投入するのです。>
<この手法を取ると、一回目のエントリーでとるリスクは総資金の4%(=20万円÷500万円)です。そして、私の場合、10%の損失が生じたところを、絶対に譲れない損切ラインにしているので、最悪損切に追い込まれたとしても、2万円の損失額で済みます。2万円は総資金の0.4%です。>
<5分割ルールには明確な根拠があります。例えば、次のようなルールのゲームに参加したとしましょう。これはラルフ・ビンズが行った実験を参考にしたものです。
・おみくじの箱に当たりが6本、はずれが4本入っている。
・当たりが出れば掛け金は2倍、はずれが出たら掛け金は没収。
・元手は1万円で、100回おみくじを引ける。
・1回ごとの掛け金は、ゲーム参加者が毎回自由に決めることができる。
そして、100回引いた後の手持ちの金額が最も多かった参加者が勝者です。
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このゲームで、損失を被ったり破産したりせず、生き残るためにはどういうお金の掛け方がいいのでしょうか。それが、「最新の手持ち資金残高の20%を掛ける」という5分割ルールを用いる事なのです。私も実際に検証してみました。結論としては、・・・・かなり優位性の高い手法なのです。
・買っている時にはポジションサイズを増やし、負けている時には減らす。
・買いは5分割で試し玉から。
このルールを何度も復唱してください。そうすれば破産することなく、株式投資を続ける事が出来ます。続けることさえ出来れば、少しずつ経験値が上がり、勝てる投資家になれるはずです。>
ここでラルフ・ビンズの名前を持ち出して来ているということは、いわゆるケリーの公式(ケリー基準)を「根拠」として「五分割ルール」を決めたという事のようである。実際にはラルフ・ビンズはケリーの公式(ケリー基準)を基に改良して考案した最適リスク計算法 オプティマルf の唱道者であるが、原理的には同じなので、これらの違いについてはここでは触れない。
なお、duke氏はこの20%という数字を「損失を被ったり破産したりせず、生き残るため」と表現しているが、正確にいうとそれだけではなく、その中で最も資金効率が良い掛け方の割合を示す数字である。「損失を被ったり破産したりせず、生き残るため」というだけなら、5%や10%といった20%以下の掛け率でも何ら問題はない。
それはともかく、この20%と言う実験結果数値は総てのケースに当てはまる普遍的なものではなく、ややこしいので数式は引かないが、このケリーの公式(ケリー基準)はパラメーターとして勝率と損益比率を含んでいるので、この2つのパラメーターの数値が異なれば、当然結果も異なって来る。つまり、この20%という数字は、このおみくじの個別解ー勝率60%、損益比率が1対2という組み合せの時の最適解ーであって、duke氏の言うようにこれを株式投資一般に通ずる一般解とするのは、問題である。勿論、duke氏自身の場合もパラメーターの数字は異なってくるので当て嵌まらない。正確な数値は判らないが、他のところの記述からすると、duke氏の場合は勝率30%損益比率1対5~10といった数値になるようであるが。
そして、さらに議論の混乱に拍車を駆けているのはリスクの捉え方で、<一回目のエントリーでとるリスクは総資金の4%(=20万円÷500万円)>と書いている一方で、直ぐその後に<私の場合、10%の損失が生じたところを、絶対に譲れない損切ラインにしているので、最悪損切に追い込まれたとしても、2万円の損失額で済みます。2万円は総資金の0.4%です>と書いているので、20万円まるまるをリスクにさらしている訳ではない。従って、実際は<一回目のエントリーでとるリスクは総資金の0.4%>である。逆に言うと、duke氏は20%のリスクを取るのであれば、10倍のロットにしなければならないことになる訳である。
といったようなことで、結果として「五分割ルール」のリスクテイク自体は穏当なもので、損切ラインをなぜ10%に設定したのかの説明もないので、どうも私にはこれは結論先にありきの文章のように思われてならない。引き合いに出されたラルフ・ビンズもいい迷惑であるが、私がここでそれを指摘するのは、非常に重要であるにもかかわらず勝率と損益比率と掛け率の相関に関する原理原則が、日本の株式投資においては殆ど語られることがないからである。
話をおみくじに戻すと、このおみくじの場合のように勝率60%、損益比率が1対2になるような非常に優秀な投資システムというのは実際にはまずお目に係れない。一般に、損益比率が1対2であれば勝率は50%を切るのが普通であって、逆に勝率が60%であれば損益比率は1対0.8といった数字になるのが通例である。普通は勝率ばかりが重視されているが、実際には勝率40%でも損益比率1対2ならトータルで利益になり、勝率70%でも損益比率が3対1ならトータルはマイナスになる。
また、ケリーの公式(ケリー基準)に基いて掛け率を設定すると、資金の増減が激しく通常はメンタルが堪えられないのが普通である。このおみくじの場合で言うと、勝率60%であれば5連敗は普通に起こり得るので、20%の掛け率だと5連敗で1万円は3276円、3分の1以下になってしまうので、それでも続けられる人は稀であろう。そのため半分ケリーだとかの一種の妥協案が色々と発明されているが、このようなことから通常はバルサラの破産確率に基いたアレキザンダー・エルダーの主張する2パーセント・ルールが適正とされている。実際はduke氏の「五分割ルール」のリスクテイクは説明とは違って2%になるので穏当なものと書いた所以である。
それはともかく、ここで問題となるのが、実際には自分の投資システムの勝率や損益比率の正確な数字が判らないという事である。先のおみくじの例で言うと、5連敗して1万円が3276円になっても、勝率60%、損益比率が1対2という数値にゆくゆくは収斂していくという絶対の確信があれば、20%ずつ掛け続けていくことはそう難しいことではない。しかし、私の場合相場に限らず人生において絶対の確信など持ち得たことがない。まあ、この絶対というのも乱用されている言葉の一つであって、ここで阿川弘之氏の名言(迷言?)を引いて置くのも良いかも知れない。
<世の中には絶対という事は絶対にない。だから、絶対という言葉は絶対に、いいか、絶対に使ってはならない。>
そのため、これを検証によって確めるということになる訳であるが、検証という言葉もこれまた乱用されている言葉で、ネットでは(例えば実際はアフィリエイトサイトである無数の検証サイトなどが好例だが)1回或は数回試しただけで検証と謳っている例がほとんどで何とも呆れる他はない始末だが、確率論から言えば検証数は100回や200回でも足りないので、大数の法則では1万回の試行で80%の確率で誤差±20%の結果、4万回の試行で90%の確率で±10%の結果に収斂するとされている。
ということで、小難しい話がいささか長くなったので、今回はここまでとするが、この検証もその重要性にもかかわらず株式投資では殆ど指摘されることがない事項であって、duke氏もその例外ではないようだ。次にはこの点について述べることにする。