徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:恩田陸著、『七月に流れる花』(講談社タイガ)

2019年02月01日 | 書評ー小説:作者ア行

『七月に流れる花』は『八月は冷たい城』と対を成す話で、夏流城(かなしろ)で緑色感冒に侵された肉親の死と向き合うための「林間学校」に参加する女子6人の物語ですが、転校してきたばかりで一切事情を知らないミチルという女の子の視点で描写されており、知らないことによる疎外感や不安や被害妄想が克明に表現されています。ミチルの父親が危篤状態となり、3度の鐘が鳴って、みんなでお地蔵様の前へ向かった時に、ようやくミチルにすべての事情が明かされます。

流れる花は「メメント・モリ(死を想え)」。緑色感冒で亡くなった人が男性なら白い花、女性なら赤い花がその人数分夏流城の水路に流されます。死者を悼む儀式としては「あり」だと思いますが、作中のようにその花たちを数えるのはちょっと悪趣味かもしれません。

読み終わって分かりましたが、読む順番を間違えました。『八月の冷たい城』を読んでしまった後だとミチル視点のミステリーがミステリーでなくなってしまうのです。彼女は緑色感冒のことも【夏の人】または【みどりおとこ】のことも、林間学校の意味も何も知らないわけですから。もう一つ参加者の女の子の一人が消えるというミステリーはありますけど、作品全体の面白さというかスリルみたいなものは『八月の冷たい城』の後だと半減してしまう気がします。

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2019年02月01日 | 書評ー小説:作者カ行

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