『陽気な容疑者たち』 に続いて天藤真推理小説全集第3巻『死の内幕』を徹夜して読んでしまいました。気が乗らない仕事があるときに限ってマンガや小説に逃げてしまう癖はずっと治りませんね(笑)
内縁関係を続ける女性たちのグループIGの1人「マコ」こと小田ます子が自分を捨てようとしている男・寺井博士を突き飛ばしたところ、後頭部を箪笥の角にぶつけ、打ちどころが悪くて死なせてしまうところから物語は始まります。ただ自首すれば過失致死となるところですが、母一人子一人の母子家庭なので実刑は困るということで、相談を受けたグループ会長・柏木啓子が何か隠蔽の方法はないかと自分の内縁の夫で元法科学生の松生に聞き、協議の結果、架空の犯人をでっちあげることにします。松生の顔の特徴の反対の特徴を犯人イメージとし、たまたま松生が持っていた安物の趣味の悪いチェックの古い量産コートを着ていたという設定を創り上げます。
こうしてマコと同じくグループメンバーの平沢奈美が寺井宅に戻り、そこから死体第一発見者として警察に通報し、偽の目撃証言をします。
ところが、なんの偶然か、偽の証言に基づいて作ったモンタージュ写真とそっくりの男が近隣に実在し、しかもその男は同じチェックのコートに見えなくもないジャンパーを所有していたのです。
大都会ならともかく、殺人の場所は千葉市で、同じ市内にドンピシャの特徴を持つものがそうそういる偶然はないため、たまたまそっくりな男・八尾正吾は友人宅に隠れ住むことにし、友人たちは誰がどういう理由で「偽証言」をしたのか調査に乗り出します。
典型的な殺人事件をめぐる推理小説とはだいぶ趣の違う設定と展開で、先が読めない面白さがあり、結末もかなり意外でした。徹夜して一気読みしてしまうだけの魅力があるわけですね。
違和感がある設定と言えば、証言者が実名報道されている点ですね。昭和30年代はまだそういう報道の仕方をしていたのでしょうか。これがなくなってしまうと、架空の犯人のそっくりさんの友人たちが行動を起こそうにも起こせないので、重要な設定なのですが現在では考えられないことなので違和感が否めないというのはあります。そこに目をつぶれば、かなり面白く読めるかと思います。
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