忙しい時に限ってついついまったく関係のない架空の世界へ逃げ込みたくなるもので、今回もまた遅々として進まない仕事を尻目に天藤真推理小説全集の続刊『鈍い球音』を朝方までかけて読んでしまいました(笑)
この癖は一生治らないことでせう(笑)
『鈍い球音』は、そのタイトルからも察せられるように野球がテーマです。日本シリーズを前に、ペナントレースの勝者・東京ヒーローズの桂監督が東京タワーで「人に会う」と言って、娘・日奈子と立花コーチを置き去りにし、その二人がこっそりと後を追ったら、監督のシンボルともいえる髭だけ残して失踪してしまうところから物語は始まります。
表向きはこの謎の失踪は秘匿され、静養だの事故に遭っただのという嘘が発表され、日本シリーズは桂監督抜きで、竹山監督代理をトップに据えて開始されますが、選手の動揺は大きく大阪勢に3連敗を喫することになります。
一方、立花コーチは監督の失踪(または誘拐)の真実に迫るため、親友で新聞記者である矢田貝に秘密裏の調査を頼み、矢田貝は大スクープの誘惑を抑えてその友情に応えて調査に乗り出します。
そして、試合場所が大阪に移ると、今度は監督代理が旅館の自室から「もぬけの殻」と言うしかない形の服だけを残して失踪してしまいます。
賭け野球で、大阪賭けの黒い勢力による陰謀なのか、はたまた球団オーナー(たち)の私利私欲に基づく談合が背景にあるのか、といった野球ミステリーが展開していきます。野球に全然興味のない私でも惹き込まれずにはいられないユーモラスな筆致の話運びです。
誰も死なないところもいいですね。
『鈍い球音』をAmazonで購入する(税込550円)。
『鈍い球音』をhontoで購入する(税込550円)。