ビジネス関連書の割引セールで買ったものの一つ『保存版 10分でわかる!ビジネス教養』。日本語でこの類のものを読むのは実は初めてです。日本ではどんなものが【ビジネス教養】と見られているのか興味があって手に取ってみました。
まずは目次から。
【特別講義】 教養の極意
【PART1】 3分で分かる ビジネス古典 (ドラッカー、コトラー、シュンペーター、孔子)
【PART2】 ビジネスに必須! 5大教養学科(経済学、経営学、心理学、統計学、倫理学)
【PART3】 日本人としての教養(日本文化、禅、日本酒、日本の世界遺産)
【PART4】 東西の「カリスマ経営者」に学ぶ“仕事術”(稲盛和夫、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ)
【特別講義】にはライフネット生命保険会長兼CEO出口治明氏と解剖学者養老孟司氏のインタビューが掲載されており、興味深い。
【PART1】のビジネス古典はこれまで経済を勉強したことがない人にはよくまとまった「とっかかり」で、経済・経営学を勉強したことある人には良い復習になると思います。本当に骨格というか、最重要エッセンスのみですので、イメージを掴む程度にしかなりませんが、イメージすら浮かばないよりはましということもあるでしょう。
【PART2】では5大教養学科として掲げられている学科を一つにつき3pくらいで、ビジネスの日常にすぐに応用がききそうな重要トピックが簡単に解説されています。経済学の予備知識がない人には分かり易い入門だと思います。PART1同様イメージがつかめる程度。私自身にとっては要点復習のようなものでしたが。面白かったのは「ニュースで身につける教養」というおまけ記事二つで、イスラム法ハラルについてや、高級ファッションブランド・ルイヴィトンのビジネス戦略などのトリビアでした。特にイスラム教徒が安心して食べられるものを提供するレストランやスーパーとすぐに分かる「ハラル認証」は知っていると国際的ビジネスを展開するうえで便利ですね。
【PART3】は私にとっては一番興味深い章ですが、真新しかったのは「日本酒」についてくらいでしょうか。国際的異文化コミュニケーションの際に必ず「ネタ」となるのがそれぞれの国の食文化や有名な世界遺産やその他の文化的特徴についてですから、自国の文化と歴史をきちんと押さえるのは重要です。私がドイツに来たばかりの時は若干21歳で、そうした教養は身についておらず、結構恥ずかしい思いをしたものです。自分が全く関心をもっていなかったものに外国人が興味を持っていて、日本人だからということで私にその話題をふるわけですが、全然知らないので会話が続かないことがしばしばありました。SONYやTOYOTAの製品や食べ物の話くらいならともかく、黒沢映画やら「おしん」(イランで人気が出たというドラマ)やらの話題をふられた時は困ったものでした。
尤も、日本ネタをふられてある程度答えられるように知識を身につけるのはわるいことではありませんが、相手の国のことも少なくとも「とっかかり」を押さえておいて、相手にそのことについて詳しく語ってもらうのもスモールトーク、ビジネストークには欠かせないですね。
【PART4】で個人的に興味深かったのはやはり日本人経営者稲盛和夫の「稲盛経営学」ですね。全然知りませんでしたので。本田宗一郎や松下幸之助等の「昭和の経営の神様」くらいは知ってましたけど、稲盛氏は初見です。彼のいわゆる『アメーバ経営』という部門ごとの独立採算性を追求する仕組みは欧米にも似たようなモデルがあるので、命名を除けば特に真新しいとは感じなかったのですが、経営哲学を社員一人一人に行き渡らせようとするのは独特かも知れません。
ただ私の会社でも「社員一人一人が経営者的思考をせよ」というスローガンがあるので、全く異質というわけでもないと思いました。実践段階での違いは大いにあると思いますが。うちの会社のはお題目だけですから(笑)
全体的に割と軽く読み流せて、そこそこ役に立つ読み物としてお薦めですね。