文藝春秋の2012年版〈東西ミステリーベスト100〉第7位の、この『大誘拐』は誰も死なないし、最初から犯人が刑務所で知り合った3人組と分かっているため、典型的な推理小説のパターンからはかなり逸脱しているのですが、誘拐の被害者であるはずの紀伊半島の大規模な山林を所有する大富豪・柳川家の女主人(82)が誘拐犯たちの計画の穴をついてアドバイスしたり、身代金は100億じゃないと沽券にかかわると言い出したり、途中から警察との知恵比べに関する主導権を握り、誘拐犯3人組を完全に手なづけてしまうところがユーモラスです。結局おばあちゃんの一人勝ちのようなストーリー展開です。