松岡圭祐氏の最新刊『水鏡推理IV アノマリー』は、主人公水鏡瑞希が登場するまでの前置きがかなり長く、非行少女たち(女子少年院入院中)の更生プログラムの一環としての登山のいきさつを、彼女らの過去へのフラッシュバックを交えながら語られます。このプロローグがどのように文科省の下っ端事務官水鏡瑞希に関わってくるのか分かるまでに結構かかります。
商品説明にあるように、この登山プログラムに参加している少女たちは八甲田山で、気象庁と民間気象会社の予報の食い違いのあった日、民間気象会社の「晴れ」予報を信じて出発し、豪雨に見舞われ行方不明となってしまいます。
一方、水鏡瑞希が気象図の整理を手伝っていた総合職官僚浅村も瑞希がうたた寝している間に失踪。彼は瑞希に謎の書類を預けていた。数日して、彼はなぜか八甲田山登山口辺りでの少女たちの記念撮影に一緒に移り込んでいたのを瑞希が発見し、彼女は彼の足取りを残された書類をもとに追うことに。
なかなかのサスペンスである一方、親にあまり愛されずに、どうしていいか分からなくなって暴走しがちな少女たちの成長の物語でもあります。
瑞希が下っ端役人として比較的等身大の(?)活躍しかしないので、なかなか核心部に辿り着けずに、うろうろと寄り道しているような印象がちょっと強いので、途中少しじれったいかもしれません。その分現実味があるともいえるのですが、物語のテンポとしてはさほど良くないように思います。