徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:中山七里著、『嗤う淑女』『ふたたび嗤う淑女』(実業之日本社文庫)&『嗤う淑女  二人』(実業之日本社)

2023年05月20日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

この『嗤う淑女』シリーズは、不幸な生い立ちの美女・蒲生美智留が次々と人を不幸に陥れていく話で、〈傾国の美女〉もかくや、という感じです。
自分を性的虐待し続けた父親を殺したことを除けば、自ら手を汚すことなく、巧みに犯罪を教唆するため、捜査の手も及ばず、たとえ捕まってもどんでん返しで無罪釈放。
事件解明はされても、古典的な意味での解決、すなわち逮捕・起訴・有罪判決とはならず、「最後に笑うのは私」とばかりに美智留はまんまと逃げおおせるところが興味深いミステリーです。
シリーズ3作目で笑う淑女が二人に増えますが、二人目の悪女・有働さゆり は、『連続殺人鬼カエル男』で登場するキャラクター。彼女のしたたかさは、蒲生美智留の悪知恵も結局及ばず、「共犯者は始末するもの」という美智留のポリシーをまんまと免れて逃走。こうして悪女が二人とも捕まらずに逃走中なのです。
悪の華を礼賛する、というほどではないにしても、読者の倫理観や正義感を逆撫でする作品であることには変わりありません。にもかかわらず、最後まで読ませてしまうのは、さすがどんでん返しの帝王・中山七里の筆致のなせるわざというものでしょう。

『笑う淑女』
商品説明
徹夜確実! 女神なのか、悪魔なのか――最恐悪女度no.1小説。中学時代、いじめと病に絶望した野々宮恭子は従姉妹の蒲生美智留に命を救われた。美貌と明晰な頭脳を持つ彼女へ強烈な憧れを抱いてしまう恭子だが、それが地獄の始まりだった――。名誉、金、性的衝動…絶世の美女に成長した美智留は老若男女の欲望を残酷に操り、運命を次々に狂わせる。連続する悲劇の先に待つものは? 史上最恐の悪女ミステリー。漫画家・松田洋子氏による文庫版限定「あとがき漫画」収録!


『ふたたび嗤う淑女』
商品説明
この悪女、制御不能!
シリーズ累計12万部突破の大ヒット作、待望の文庫化!

巧みな話術で唆し、餌食となった者の人生を狂わせる――
稀代の悪女・蒲生美智留が世間を震撼させた凶悪事件から三年。
「野々宮恭子」と名乗る美貌の投資アドバイザーが現れた。
国会議員・柳井耕一郎の資金団体で事務局長を務める藤沢優美は、
恭子の指南を受け、不正運用に手を染めるが……
金と欲望にまみれた人々を弄ぶ恭子の目的とは! ?
どんでん返しの帝王が放つ、戦慄のミステリー!

人気漫画家・松田洋子氏による、文庫版限定「あとがき漫画」も、
シリーズ第1作『嗤う淑女』につづけて、ふたたび収録!

『嗤う淑女  二人』
商品説明
最恐悪女が最凶タッグ!これはテロか、怨恨か<? br> 真相は悪女のみぞ知る――。
戦慄のダークヒロイン・ミステリー、衝撃の最新刊!

高級ホテル宴会場で17名が毒殺される事件が発生。
犠牲者の一人、国会議員・日坂浩一は〈1〉と記された紙片を握りしめていた。
防犯カメラの映像解析で、衝撃の事実が判明する。
世間を震撼させた連続猟奇殺人に関与、
医療刑務所を脱走し指名手配中の「有働さゆり」が映っていたのだ。
さらに、大型バス爆破、中学校舎放火殺人……と、新たな事件が続発!
犯行現場には必ず、謎の番号札と、有働さゆりの痕跡が残されている。
さゆりは「ある女」に指示された手段で凶行に及んでいたが、
捜査本部はそのことを知る由もなく、死者は増え続ける一方で、
犠牲者は49人を数えるのだった……。
デビュー11年目、どんでん返しの筆がますます冴える人気作家が放つダークヒロイン・ミステリー第3弾、ついに刊行!


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