徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:中山七里著、『能面検事の奮迅』(光文社)

2023年05月20日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

商品説明
学校法人荻山学園に対する大阪・岸和田の国有地払い下げに関し、近畿財務局職員の収賄疑惑が持ち上がり、大阪地検特捜部が捜査を開始。ところがその特捜部内の担当検事による決裁文書改竄疑惑が浮上。最高検から調査チームが派遣され、大阪地検一級検事の不破俊太郎は惣領美晴事務官と調査に乗り出し、信じがたいものを発見する……。「能面検事」再び! 現実の事件を彷彿させる物語に、能面検事・不破の鋭いメスが冴えわたる! 

「能面検事」シリーズ第2弾。文庫化はされていないものの、続編となれば気になるので、単行本のまま購入しました。
本作の事件のあらましは、財務省近畿財務局が、大阪府豊中市の国有地を大幅値引きして森友へ売るまでの一連の土地取引と、この取引をめぐる決裁文書を財務省が改ざんしたいわゆる「森友学園問題」に着想を得ています。
しかし、現実をそのままなぞるような野暮なことをせず、売却予定地の選定過程に隠し玉があり、過去の美談っぽい話が暴かれることになります。
不破俊太郎検事は相変わらず周囲の期待や圧力をどこ吹く風と受け流し、まったくのマイペースで真実を掘り起こそうとします。
その彼に影のように(?)付き従う総領美晴も相変わらず感情が顔に出てしまう悪癖が治らず、自分の感情論や単純な正義感を不破検事に木端微塵に粉砕されてもめげずに、いつか検事になることを夢見てコツコツと事務官の仕事を続けます。
不破検事の容赦ない罵倒がくせになっているのでは?と疑問に思わなくもないです。しかし、彼は卑劣さ卑屈さとは無縁であるため、容赦ない理屈も一本筋が通っていて、よくよく耳をすませば納得が行くものでもあります。
しかし、容赦ない一本筋の通った理屈も、能面顔で語られると、やはり人間味が足りなくて、ちょっと薄気味悪いのではないでしょうか。
語り手の総領美晴は、不破検事とは対照的に感情に振り回され過ぎて、およそ検事を目指す者として相応しからぬキャラクターが魅力と言えば魅力なのでしょう。私はちょっと引いてしまいますが。。。



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