
商品説明
都内の幼稚園へ赴任してきた神尾舞子。騒音や待機児童など様々な問題への対応を迫られる中、園の生き物が何者かに惨殺される事件が立て続けに起き、やがて事態は最悪の方向へ──。『闘う君の唄を』に連なる、シリーズ第2弾。《解説・藤田香織》
これが第2弾だとは知らずに読んでしまいましたが、特に違和感はありませんでした。
主人公の幼稚園教諭・神尾舞子は理性的・論理的で、自らの就学前教育の技術に自信を持っている〈デジタルウーマン〉で、あまり「保母さん」のイメージに当てはまらないキャラクターです。
都内の幼稚園に赴任早々、幼稚園の騒音が許せない町内会会長の苦情の相手をさせられ、幼稚園の見学日では待機児童を抱える母親から入園の便宜を図るよう賄賂を持ちかけられる。園児たちのお迎えの時間になると、母親たちの派閥争い。前途多難な状況が最初からぶっちぎりで描写されていますが、全金埼でも同僚だった池波智樹がまた同じ勤務先になったという安心要素も瞬く間に吹っ飛ぶ事件が起こります。園児たちが世話をしている池の魚が殺される、蛇の潰された死骸が投げ込まれる、猫の死体が吊るされる。どうにも物騒なので、幼稚園の教員たちが夜の見回りをすることになります。法的にはそのような義務は一切ないし、時間外労働の超過勤務でしかないのですが、子どもたちの安全のためという大義名分が全ての理屈を押し流してしまいます。そして、舞子が同僚・池波と二人で見回りに出た夜、決められた時間より30分早く切り上げて喫茶店でゆっくりとしていた、その翌朝。園児の死体が門の前に放置されていた。
戦々恐々となった親たちに舞子も池波もまるで殺人容疑者であるかのように非難されます。時間通り見回りをしていたら事件が防げたのかどうか、とか、そもそも園児が帰宅した後の安全が幼稚園の責任なのかという理屈は通用しない理不尽な空気。
待機児童問題と、騒音のために幼稚園立ち退きを求める町内会の要求との絡みから起きた事件なのかと思いきや、園児殺害の真相は実に俗なところにあった。人間の狭量さをまざまざと見せつける作品。
