徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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国際ホロコースト記念日。2017年は特に安楽死プログラム犠牲者追悼

2017年01月28日 | 歴史・文化

1月27日はアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所がソ連軍によって解放されたことを記念した国際ホロコースト記念日です。去年のブログ記事「アウシュビッツ解放、国際ホロコースト記念日」に歴史的背景を書きましたので、ここでは割愛します。

今年のドイツ連邦議会における追悼時間(Gedenkstunde)では、特にナチスのEuthanasieprogramm(オイタナジー(=安楽死)プログラム)の犠牲者約30万人に焦点が当てられました。その時間の音楽を担当したのはホルン奏者フェリックス・クリーザー氏とピアニストのモーリッツ・エルンスト氏。クリーザー氏は生まれつき両腕がなく、ホルンを足で演奏します。

ナチスのオイタナジープログラムは身体障害者や精神病患者などの「生きるに値しない」「ゲルマン民族の遺伝子を汚す」分子を対象として、彼ら・彼女らを強制的に不妊手術を受けさせ、人体実験に利用したり、様々な虐待をした上で殺害していました。

その犠牲者たちを悼む連邦議会の式典で、両腕のないホルン奏者が演奏することの象徴的意味は非常に大きいと言えます。1996年に始まった連邦議会のナチス犠牲者追悼式典ですが、ユダヤ人犠牲者ではなく、オイタナジー犠牲者に焦点があてられたのは今年2017年が初めてのことです。

25歳のクリーザー氏は追悼時間開始前に「私たちはホロコースト記念日をただの歴史的記念日として片づけるべきではない。想像しがたいことを見える化して理解する必要があります。私たちは物事を認識しても、その流れがどこまで行くのか想像できないところに危険性が潜んでいると思います」と語りました。

以下はドイツ連邦議会議長ノルベルト・ランマート博士・教授の追悼演説から一部を抜粋したものです。

Wir gedenken in diesem Jahr besonders der Kranken, Hilflosen und aus Sicht der NS-Machthaber „Lebensunwerten“, die im sogenannten „Euthanasie“-Programm ermordet wurden: 300.000 Menschen, die meisten zuvor zwangssterilisiert und auf andere Weise gequält. „Die Barbarei der Sprache ist die Barbarei des Geistes“, hat Dolf Sternberger einmal geschrieben, der bereits 1945 ein „Wörterbuch des Unmenschen“ zusammengetragen hat. Und tatsächlich: Die „Euthanasie“ begann mit der denunziatorischen Entmenschlichung ihrer Opfer, die als „nutzlose Esser“, „seelenlose menschliche Hüllen“ verunglimpft wurden und – in den Worten der Täter – der „Ausmerzung“ bedurften. „Die Barbarei der Sprache ist die Barbarei des Geistes“ – und aus Worten wurden Taten.

Zwischen „Euthanasie“ und dem Völkermord an den europäischen Juden bestand ein enger Zusammenhang. Als „Probelauf zum Holocaust“ gilt das Töten durch Gas, das zuerst bei den „Euthanasie“-Opfern praktiziert und damit zum Muster für den späteren Massenmord in den NS-Vernichtungslagern wurde. Und auch personell gab es bedrückende Kontinuitäten: Über 100 Ärzte, Pfleger und sonstige Beteiligte an den Krankenmorden, deren erste Phase 1941 geendet hatte, setzten ihr Tun bruchlos in den Vernichtungslagern für KZ-Häftlinge fort.

日本語訳:

今年は特にいわゆる「オイタナジー(安楽死)」プログラムで殺害された患者の方や寄る辺のない方たち、ナチス幹部たちから見て「生きる価値のないもの」とされた方々に追悼を奉げます。その犠牲者は30万人でした。大半がまず強制不妊手術を受け、またそれ以外の方法で苦しめられました。「言葉の野蛮さは精神の野蛮さである」と、すでに1945年に「間辞典」を編纂したドルフ・シュテルンベルガ―は書いたことがあります。実際、「オイタナジー」は犠牲者たちの誹謗中傷的な間化から始まったのです。【穀潰し】、【魂の抜けた人間の殻】などと罵られ、加害者の言葉で「殲滅」が必要とされたのです。「言葉の野蛮さは精神の野蛮さである」ーそして言葉は行動に移されたのです。

「オイタナジー」とヨーロッパ・ユダヤ人虐殺の間には密接な関係がありました。まず「オイタナジー」犠牲者で実行されたガス殺は「ホロコーストの試行」と見られており、後のナチスの殲滅用収容所における大量虐殺の見本となりました。人事的にも気が滅入るような継続性がありました。100人以上の医師、看護師その他の患者殺害に関わった人たちは1941年に第一段階を終え、その後中断なく殲滅用収容所においてそこの囚人たちを相手にその行為を続けていたのです。

ランマート氏の演説全文は今日ドイツ連邦議会のサイトに公開されました。下にリンクを貼りますので、興味のあるドイツ語のできる方はご覧になってみてください。

上に引用したクリーザー氏の言葉やランマート氏の演説は特に加熱する言葉の暴力が行き着く先の危険性を示唆しています。現在のドイツではそうした暴力の矛先がイスラム教徒や難民に向けられつつあります。

先日AfD(「ドイツのための選択肢」党)チューリンゲン州支部長のブヨルン・ヘッケ(Björn Höcke)がドレスデンで行った問題発言「私たちドイツ人は、首都の心臓に恥の記念碑を作った世界で唯一の民族だ」とドイツの回想文化(Erinnerungskultur)あるいは追悼文化(Gedenkkultur)を批判したため、27日のチューリンゲン州議会における追悼時間から外されました。そして午後に(追悼の一環として)訪問予定だったブーヘンヴァルト記念館からも立ち入り禁止が言い渡されました。

ここ2・3年で支持率を伸ばしているAfDにはこのヘッケ氏のようにホロコーストを否定する歴史修正主義者たちが随分と紛れ込んでいるようです。それなのに、今年の連邦議会選挙で緑の党を追い越して第三政党になる可能性があるのは恐ろしいことです。ヘッケ氏の問題発言が影響したのかどうかは分かりませんが、ポリートバロメーターの最新調査で支持率が2%減って11%になっていました。反イスラムや難民排斥は認められても、歴史修正主義は認められないと思う人がまだ多いということでしょうか。私から見れば根は同じだと思いますけど。

参照記事:

ZDF heute, Holocaust Gedenktag: "Das Unvorstellbare vor Augen führen", 2017.01.27
Deutscher Bundestag,  Rede von Bundestagspräsident Prof. Dr. Norbert Lammert am 27. Januar 2017 zum Gedenken an die Opfer des Nationalsozialismus, 2017.01.28 (ドイツ連邦議会議長ノルベルト・ランマート博士・教授の追悼演説)
Zeit Online, AfD: Björn Höcke greift unsere Indentität an, 2017.01.18 
Zeit Online, AfD: KZ-Gedenkstätte erteilt Höcke Hausverbot, 2017.01.27 
ZDF heute, Politbarometer, K-Frage: Merkel knapp vor Schulz, 2017.01.27

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