敬語というのはいろいろと厄介です。社会人体験なしに海外に出てしまった私にとっては特にビジネスシーンにおける言葉使いに馴染みがあまりありません。けれども、時折日本人の方とやり取りする必要があるときに妙に違和感を覚える言葉遣いもあり、その違和感の元が何なのか、私が持っている言語感覚が実際のところどの程度正しいのか、最近では何が標準とされているのか、そういったことを知りたくてこの本を読んでみました。今、Kindleunlimited で0円で読めるようになっています。
内容的には先日読んだ大野萌子著、『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)と重複するところもありますが、実用本としてはこちらの方が章ごとの見出しがよく整理されていてわかりやすいと思いました。
目次
はじめに
1章 言葉づかいの基礎知識
2章 敬語の使い方
3章 丁寧な言い回し
4章 コミュニケーションの言葉
5章 言葉づかいの作法
6章 困った時のものの言い方
7章 クイズで育てる言葉力
この本を読んで私の敬語の感覚に誤りがないことが確認できました。
また、誤用例には知らないものも多く、それはそれで言語の変遷の最近の傾向を知るうえで興味深いと思いました。
また、それほどの比重は置かれていませんでしたが、エレベーターの中や車の中にまで上座・下座の規定があり、お客様をお迎えする場合には正確にそれを把握して上座をお勧めしなくてはならないようなことが書かれてあり、それもまた一つの驚きでした。恐らくそういうことが重視され、厳然と守られている保守的な世界と、そうでない現代的でフラットな世界が交わることなく併存しているのではないかと思われます。
敬語は大人として相手に対する思いやり・心遣いの表れであると同時に使う人の品格を表すものでもあるという著者の主張にはなるほどと思えるものもあり、詳細な言い回しの例は覚えておけばとっさの時に戸惑わなくて済むような具体的なものが多岐にわたって紹介されているので、実用的で参考になります。
やはり、「難しいしよく分からないから敬語嫌い」などというのは子どもの言い分だと思いますし、丁寧な言葉づかいにかなりの思い入れのを込めている方々に対して敬意や思いやりが足りないのではないかと思います。
私自身は上下関係を強調しない「丁寧語」だけにしたい派ですが、それを押し通すのは大人げないですよね。
また、普段は基本的に丁寧語だけで、謙譲語や尊敬語は積極的に使わないにしても、使うべき時とところではきちんと使える知識と能力を持っていないと、主義主張ではなく使えないから使わないんだと侮られることにもなりかねません。
「先生が申し上げられましたように」などのように尊敬語を使うべきところで謙譲語を使っていたり、「お疲れ様です」や「お世話になってます」と言えば済むと思っている?という印象を受ける濫用や「させていただきます」の不自然な多さなどを変だなと思う程度には私も敬語を身につけていたのだと実感しました。そうした言葉の乱れに対して怒りや嘆きなどを感じるほどのこだわりや思い入れはありませんけれど。
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