中公文庫
2020年12月 初版発行
解説・加藤陽子 多層的な歴史を文学の力で描く人
上巻 383頁
下巻 413頁
昭和10年(1935年)
華族の娘、笹宮惟佐子は富士の樹海で陸軍士官とともに遺体となって発見された親友・寿子の心中事件に疑問を抱き、調べ始めます
富士で亡くなったはずの寿子が、なぜ仙台消印の葉書を送ることができたのか
寿子の足どりを追う惟佐子と探偵役の幼馴染、千代子の前に新たな死が…
天皇機関説をめぐる華族と軍部の対立、急死したドイツ人ピアニストと心霊音楽協会
穢れた血の粛正をもくろむ組織
謎と疑惑と陰謀が、陸軍士官らの叛乱と絡み合い、スリリングに幻惑的に展開するミステリー
2・26事件が起こされた理由を、ある人物の狂信した妄想に発するという設定で
天皇家の先祖には汚れた血が歴史的に混入している、よって天皇家よりも古い家系であり白雉家の血筋の一門こそが日本を支配すべき正統との考え方に基づき起こされた叛乱が2・26事件であったというのです
そして、主人公・笹宮惟佐子の人物造形が実に魅力的
誰もが認める美貌の麗人であり『数学世界』を愛読し囲碁にめっぽう強く食虫花以外は嫌い、殿方への興味も一方ならぬものがあります
本作も「驚いたのなんのって」な作品でした
惟佐子さんのキャラ、好きだわぁ
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます