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宇佐美まこと「羊は安らかに草を食み」

2023年04月17日 | あ行の作家


祥伝社
2021年1月 初版第1刷発行
358頁

認知症を患い日ごとに記憶が失われゆく老女・益恵、86歳
益恵の俳句仲間で20年来の友人の富士子、77歳とアイ、80歳は、益恵の夫・三千男に頼まれ、3人で益恵がかつて暮らした土地を巡る旅に出ることになります
行先は、滋賀県大津市、愛媛県松山市、長崎県の國先島
満州からの引揚者だった益恵はいかにして敗戦の過酷な状況下で生き延び、今日の平穏を得たのか
彼女が決して話さなかった秘密とは
認知症を発症してから時々彼女の口から出る「カヨちゃん」とは誰なのか

現在の3人の旅と、益恵の体験した満州時代が交互に語られます
敗戦を知らされず着の身着のままで避難した開拓民たちの行程は目をそむけたくなるよう惨事の連続です
実際はもっと酷い現実があったのだろうと想像します
戦争に比べれば、富士子やアイが抱える悩みは贅沢なのかもしれませんが、戦後80年近くが過ぎた今、それはそれで大事な問題でしょう
終章は、『後は死ぬだけ』と言い放つ富士子とアイが大活躍する軽めの展開になりましたが、そのおかげで悲惨さより爽快感が味わえたので良しとします

宇佐美さん初読
図書館で本を借りるようになって手にする作家さんの幅が広がったのはよいのですが、あれもこれも読みたくなるのに嬉しい悲鳴です(#^^#)



コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (zooey)
2023-04-17 13:21:36
これは読みごたえがありましたね。
益恵が集団自決から生き延びる所は、胸打たれました。
よかったらどうぞ。
https://blog.goo.ne.jp/franny0330/e/ccd4d0b0920acc7d57f0b512d751588f
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zooey.さん (こに)
2023-04-18 15:20:18
戦後日本で益恵と同じように悲惨な経験を心の奥に仕舞いこんで生きてきた人は多かったのでしょうね。
どれほど今の自分が平和な国に暮らしているのか思い知らされました。
返信する

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