角川文庫
2017年12月 初版発行
2020年11月 7版発行
解説・北上次郎
372頁
九州、福岡藩の支藩である秋月藩
時は幕末
西洋式兵術の導入を進めていた執政・臼井亘理は屋敷で就寝中に尊攘派によって妻もろとも斬殺されます
武士にあるまじき方法での暗殺であるにもかかわらず、亘理を快く思っていなかった家老の動きもあり藩の裁きは臼井家に対し冷酷なものでした
息子の六郎は仇討を固く誓いますが明治6年に仇討禁止令が発布され仇討が禁じられてしまいます
父の仇が東京にいると知った六郎は仇討云々を隠してとりあえず上京、親戚の家で暮らしながら日々を送る中、剣客・山岡鉄舟に弟子入りが叶い心身の鍛錬に励むのでした
時代に抗い信念を貫いた“最後の武士”の生きざまを描きます
六郎が脳裏に刻み続けてきた父の教え
われらは何事もなしておらぬのに、空は青々と美しい
時に曇り、雷雨ともなるが、いずれ青空が戻ってくる
それを信じれば何があろうとも悔いることはない
いずれ、われらの頭上にはかくのごとき蒼天が広がるのだ
明治13年、ついに仇討を果たし、終身刑で服役するも、明治22年大日本帝国憲法公布の恩赦で明治24年、32歳で釈放されます
九州に戻ろうとした六郎が山口県の下関駅のホームから見上げた空はどこまでも広く吸い込まれるような青でした
「蒼天見ゆ」いい言葉です
実話に基づくのだそうです
全く知りませんでした
仇討禁止令は出ていても多くの元武士たちが矜持を持ち続けており、六郎の行動を理解し世論は概ね仇討に同情的だったとか
新政府の政策により行き場を失った武士たちの無念さや諦め、西南戦争の件では、浅田次郎さんの「柘榴坂の仇討」(映画は阿部寛さん主演)を思い出しました
本作は藤原竜也さん主演でドラマ化されているとのこと
吉村昭さんによる小説もあるそうなので読みたいと思います
【2021/8/26訂正】
ドラマの原作は本作ではなく吉村昭さんによる小説だそうです
六郎の墓は、朝倉市秋月にある黒田家歴代の菩提寺でもある古心寺に、両親の墓に寄り添うように建っているそうです
秋月、行ってみたいです♪
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