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長野まゆみ「夏期休暇」

2021年09月06日 | な行の作家


河出文庫
1994年2月 初版発行
1994年3月 再販発行
201頁


海の近くの家で父親と2人暮らしの少年・千波矢
三日ほど前の晩、小さな岬の突端にある空き家に燈が点っているのに気づきます
それは十数年前に千波矢が暮らしていた家で、記憶は朧気ながら居間にいた大勢の大人と、清楚な白いシャツに身を包む兄の姿を覚えています
父に黙って度々岬の空き家に忍びこんでいた千波矢は庭で幾度か兄の幻影と出逢います
近ごろは千波矢は兄とほとんど変わらないくらいに成長していますが兄の姿はいつの時も全く変わらない少年のままでした
空き家に新しい住人が来て、庭に忍び込めなくなるということは兄の幻影に逢えなくなるということです
どんな家族が来たのか気になって仕方がない千波矢は密かに覗きに行くことにします

夏期休暇中に千波矢が経験した、空き家にやってきた幼い少年・葵と2人の姉、葵の飼い犬との交流を描きます
成長期にある少年少女の妥協を認めない残酷さが悲劇的な結末をもたらすので後味が悪いかと思いきや、地味ながら透明感のある文章に強く惹き込まれました
切なかったです





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