みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0649「発掘」

2019-09-06 18:32:19 | ブログ短編

 私の母はずぼらな性格(せいかく)だ。私が几帳面(きちょうめん)なのはそんな母を見てきたからかもしれない。私が一人暮(ぐ)らしを始めるようになってからというもの、実家(じっか)へ帰るたびに家の片付(かたづ)けをするのが私のお決(き)まりになってしまった。母もしめしめと思ったのか、私が帰ってくると、「今日はここをやってくれない?」と、お願(ねが)いされるようになってしまった。
 そんなわけで、今、私はうちの冷蔵庫(れいぞうこ)の前にいる。前から気になっていたのだが、ここに手をつける勇気(ゆうき)が出なかったのだ。私が子供(こども)の頃(ころ)に買った冷蔵庫で、三人兄妹(きょうだい)だったこともあり大型(おおがた)の冷蔵庫だ。今は両親(りょうしん)の二人暮らしなのでいっぱい詰(つ)まっているはずはないのだが…。私は母に言った。「ねえ、どうしてこんなに入ってるの?」
 私はまず冷凍室(れいとうしつ)から手をつけた。中にあるものを一つずつ取り出していく。何だか発掘(はっくつ)でもしているようだ。いつ入れたのか分からないラップにくるまれた…、これはハンバーグの塊(かたまり)? それに使い残(のこ)しの冷凍食品(れいとうしょくひん)の数々(かずかず)。袋(ふくろ)の日付(ひづけ)を見ると、十年前になっている。もしかして、これは冷蔵庫を買った頃に入れられたものかもしれない。
 私は底(そこ)の方に小さな丸(まる)いものを見つけた。取り出してみると、それは指輪(ゆびわ)…?
 母が突然(とつぜん)声を上げた。「あっ! こんなとこに有(あ)ったの。いつ入ったのかしら?」
 それは結婚(けっこん)指輪だった。ずいぶん前になくして、もう諦(あきら)めていたそうだ。母は大喜(おおよろこ)びで、父に報告(ほうこく)に行く。まさかこんな所にお宝(たから)が隠(かく)れていたなんて、私は呆(あき)れてしまった。
<つぶやき>冷蔵庫はタイムカプセルなのかもね。何が飛び出て来るか分かりませんよ。
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コメント
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