みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0656「三角関係の定理」

2019-09-13 18:27:17 | ブログ短編

 放課後(ほうかご)、リカは大きなため息(いき)をついた。隣(となり)の席で愛読書(あいどくしょ)にしている数学(すうがく)の教科書(きょうかしょ)を見ていた和代(かずよ)が、リカの方へ目を向けた。リカは和代と目が合って、
「ああ、ごめん。ちょっと、三角関係(さんかくかんけい)で悩(なや)んでるのよ」
 和代はその言葉(ことば)に興味(きょうみ)を持ったらしく、その話を聞かせるようにせがんだ。リカは仕方(しかた)なくことの次第(しだい)を話して聞かせた。
「じつは、わたし高津(たかつ)君のこと好きなんだけど、親友(しんゆう)のあゆみが、そのことを知ってるくせに高津君にちょっかいをかけてくるの。これって、ひどいでしょ。親友だったら応援(おうえん)してくれてもいいじゃない」
 和代はいちいち肯(うなづ)きながら聞いていたが、何か思いついたらしく嬉(うれ)しそうに話し始めた。
「その三角形(さんかっけい)、面白(おもしろ)いわ。高津君を直角(ちょっかく)三角形の直角の部分にして、あなたとあゆみが他の角(かく)と仮定(かてい)する。この三角形の面積(めんせき)が三人の関係(かんけい)。そしてこの関係を変えないことを条件(じょうけん)として、高津君とあゆみの距離(きょり)が縮(ちぢ)まった場合(ばあい)、あなたと高津君の距離が遠くなる…」
 リカはわけが分からず、「なに言ってるのか分かんないよ」
「ねえ、お願いがあるの。私をその三角形の中に入れてくれない。もっと良く理解(りかい)したいの。これを三角関係の定理(ていり)として発表(はっぴょう)したら…、ああ、なんかワクワクしてきた」
「やめてよ。あなたまで入ってきたら、もうグチャグチャになっちゃうでしょ」
<つぶやき>人間関係はとても複雑(ふくざつ)で難解(なんかい)なものかもしれません。特に恋がからむと…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする