そこはしずくの意識(いしき)の中なのか――。まるで海のようにどこまでも青白(あおじろ)い空間(くうかん)が続いていた。その中で必死(ひっし)にもがいているアキ。上から射(さ)し込んでくる光の方へ戻(もど)ろうとしていた。足元(あしもと)の方からは底無(そこな)しの暗黒(あんこく)が迫(せま)って来ている。
アキはいよいよ力つきたのか、もがくことをやめてしまった。アキの身体(からだ)は暗黒に吸(す)い寄(よ)せられるように、底の方へ落ちはじめた。その時、アキの手をつかむものがあった。ぐいぐいと力強く上へ引っ張り上げていく。
――しずくが寝かされているベッドの横で、アキは意識(いしき)を取り戻した。自分の手を握(にぎ)りしめているハルを見て、「ありがとう、助かったわ…」
ハルは怒(おこ)った顔をして言った。「もう、何やってるのよ! 意識に触(ふ)れちゃダメって、いつも言われてるでしょ。これは遊(あそ)びじゃないのよ」
「分かってるわよ。でも、いつもとなんか違(ちが)うんだもん」
泣(な)きそうな顔をしているアキを、ハルは思いっ切り抱(だ)きしめてささやいた。
「心配(しんぱい)させないで、あなたまでいなくなったら私…」
「…ごめんね。次はちゃんとやるから」アキはハルの顔を見て、「そんな顔しないで」
ハルはアキの手を取って言った。「慎重(しんちょう)にいきましょ。二人でやればできるわ。この人を助(たす)けられるのは、私たちしかいないんだから」
<つぶやき>しずくは目覚(めざ)めることができるのでしょうか? この先、彼女の運命(うんめい)は…。
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