みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0657「恋の再燃?」

2019-09-14 18:29:15 | ブログ短編

 それは突然(とつぜん)の再会(さいかい)だった。中途採用(ちゅうとさいよう)で入社(にゅうしゃ)してきたその人を見て、私は思わず声を上げそうになって口を押(お)さえた。課長(かちょう)が彼を紹介(しょうかい)する。彼の名前(なまえ)を聞いて私は足がふらついた。
 江口恵介(えぐちけいすけ)。大学の頃(ころ)、私が憧(あこが)れていた先輩(せんぱい)だ。もちろん、話もしたことなかったから、先輩が私の顔を知っているはずもなく…。私の一方的(いっぽうてき)な恋(こい)は、先輩の卒業(そつぎょう)と同時(どうじ)に終わりを告(つ)げた。それが、こんなところで…。――課長が、私の名を呼んだ。
「森下(もりした)君、彼にいろいろ教えてやってくれないかな。頼(たの)むよ」
 私はすっとんきょうな声を上げた。「わ、わたしが?!」
 全員(ぜんいん)の視線(しせん)が私に集(あつ)まった。私は笑(え)みを浮(う)かべて…(顔が引きつっているのは間違(まちが)いない)、それを引き受けた。私は心の中で呟(つぶや)いた。(ダメよ、こんなことで動揺(どうよう)しちゃ。大丈夫(だいじょうぶ)、昔(むかし)のことじゃない。初恋(はつこい)ってわけでもないし…、しっかりしなきゃ)
「よろしくお願いします」彼の声が私の間近(まぢか)から聞こえてきた。私は思わず振(ふ)り返って、
「こちらこそ、先輩! よろしくお願いします」(なに言っちゃってるの、わたし…)
「やだな。僕(ぼく)は年上かもしれませんけど、ここでは一番下っ端(ぱ)ですから」
 彼は、笑顔を私に向ける。私は、この状況(じょうきょう)にどう対応(たいおう)したらいいの? やっぱり、大学の先輩だってこと告白(こくはく)したほうが…。(告白じゃないでしょ、やだもう!)
 ここは、とりあえず黙(だま)っておいた方がよさそうだわ。そうよ、私が平静(へいせい)を取り戻(もど)すまで。
<つぶやき>さあ大変(たいへん)です。これから彼女はどうするんでしょ? 恋が生まれちゃうかも。
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