みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0655「しずく46~隠れ家」

2019-09-12 18:24:59 | ブログ連載~しずく

 三人を乗(の)せた車は郊外(こうがい)の道を走っていた。辺(あた)りはようやく白(しら)み始めて、山の稜線(りょうせん)が目の前に広がっていた。――車は山道を登り、小さな脇道(わきみち)へ入ってしばらく行くと停(と)まった。そこからは小道が延(の)びていて、木々の間に山小屋(やまごや)のような建物(たてもの)が垣間(かいま)見えた。
「さあ、着いたわよ」柊(ひいらぎ)あずみが、助手席(じょしゅせき)で眠(ねむ)り込んでいたつくねを起こして言った。
 つくねは思わず腕(うで)を動かして、傷(いた)みで顔をしかめながら言った。「ここは…?」
「ちょっとした知り合いの家よ。あなた、先(さき)に行って。私はしずくをかついで行くから」
 つくねは車から降(お)りると辺りを見回した。周(まわ)りには他に家は見当たらない。森に囲(かこ)まれた場所(ばしょ)だった。小道は人一人(ひとひとり)がやっと通れるほどの道幅(みちはば)しかなかった。それが曲(ま)がりくねりながら上へ続いていた。登り切った所は平(たい)らになっていて、想像(そうぞう)していた以上(いじょう)に大きな家が建っていた。まるで古風(こふう)な旅館(りょかん)のようで、つくねは思わず声をあげてしまった。
 門(もん)を抜(ぬ)けて中へ入ると、石畳(いしだたみ)が玄関(げんかん)まで続いていた。左手の小さな石庭(せきてい)が目を引いた。つくねが玄関の前に立つと同時(どうじ)に、引き戸がガラガラと開いて中から女性の声がした。
「いらっしゃい、待ってたわ。さあ、入って」
 つくねが玄関に入ると、目の前には車椅子(くるまいす)の女性がいて、にこやかな顔で彼女を迎(むか)え入れた。つくねが側(そば)へ近づくと、その女性は顔色を変えて、「まあ、大変(たいへん)。直(す)ぐに手当(てあ)てしないとね。お医者(いしゃ)さんを呼(よ)んでおいたから。大丈夫(だいじょうぶ)よ、すぐ良くなるから」
<つぶやき>新たな登場人物(とうじょうじんぶつ)です。この女性は何者なのでしょう? あずみとの関係(かんけい)は…。
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