つくねは我慢(がまん)しきれず手を緩(ゆる)めた。次の瞬間(しゅんかん)、しずくは前のめりになって倒(たお)れ込んだ。目の前にはあずみがいて、しずくを一撃(いちげき)で気絶(きぜつ)させたのだ。つくねはほっと息(いき)を吐(は)いた。両腕(りょううで)に激痛(げきつう)が走った。つくねの服(ふく)が焦(こ)げついて、真っ赤になった皮膚(ひふ)がのぞいていた。
消防車(しょうぼうしゃ)のサイレンの音が近づいて来た。だが不思議(ふしぎ)なことに、これだけ爆発音(ばくはつおん)がしているのに、近所(きんじょ)の人たちは誰(だれ)一人出て来なかった。家の明かりが見えているのに、まるで無人(むじん)の町のようだ。あずみはしずくを抱(だ)きあげると言った。
「大丈夫(だいじょうぶ)? さあ、行きましょ。いつまでもここにいちゃいけないわ」
つくねは痛(いた)みをこらえて肯(うなず)いた。あずみは彼女の肩(かた)に手を触(ふ)れると、
「すぐに手当(てあ)てをしてあげるわ。さあ、飛(と)ぶわよ」
――三人は車の中にいた。後部座席(こうぶざせき)にはしずくが寝(ね)かされている。つくねが心配(しんぱい)そうに後ろを振(ふ)り返った。あずみは運転(うんてん)しながら言った。
「まだ起(お)きないと思うわよ。あれだけ能力(ちから)を使ったから…。でも暴走(ぼうそう)する前に止められてよかった。あなたのおかげね、ありがとう」
「あたしは何もできなかった。火事(かじ)になることだって、あたしには分からなかったの…」
つくねは、自分を責(せ)めるように言った。目から涙(なみだ)があふれてきた。
<つぶやき>三人はどこへ行くのでしょう? これから先(さき)、何が待ち受(う)けているのか…。
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