山梨の花を探して、楽しんで

山梨の豊かな自然に育まれている植物、特にその季節に咲く花について書いてます。

山梨のリンドウ科の昔の花と今の花

2020-10-14 13:57:00 | 貴重な花
今  昔の植物誌をデータベース化しているのでその時に気づいたことをいくつか書いておきます。
まず最初は昔と今を比べるて気づいたことです。

今  多く見かけるリンドウ科の花
昭和57年 1982年当時は21種類記載されていました。
この中でも「稀」と書かれていたものは、
ヒメセンブリ、サンプクリンドウ、ホソバツルリンドウ、ヒナリンドウ、コヒナリンドウ、エゾオヤマリンドウの
6種類でした。

これを2018年のレッドデータブックで見てみると、
IA類はヒメセンブリ、サンプクリンドウ、ホソバツルリンドウはやはりそうで、
           当時「少ない」とされていたミヤマアケボノソウ、未記載のアカイシリンドウの5種類になっている。

昔 「稀」とされた残りの
八ヶ岳高山帯にしかないとされていたヒナリンドウ
南アルプスの高山帯にあるとされたコヒナリンドウ、エゾオヤマリンドウ
は無くなってしまったのだろうか?  野生絶滅種にも記載はない。

またいまだ存在する3種類も当時の生存場所と現在メッシュを比較すると今はどうなっているか
気になるところもわかった。もちろん詳細な場所はわからないがその地域を歩く時は少し気をつけ
て歩いてみようと思う。


IB類は、
 各地に普通にあるとされていたハルリンドウ、
八ヶ岳や奥秩父山地の湿潤な山地草原に「少ない」とされていたエゾリンドウ
同じく「少ない」とされていたムラサキセンブリ
の3つ。
ハルリンドウは2005年のメッシュ2で確認されたのみで今回の調査では確認されていない。
SNSなどにはアップされているので生息していると思うが開発等によりかなり減ったと
考えられる。
(ただし2018年レッドデータブックでは前年発行の植松さんの「山梨の植物」では「少ない」
   だったと書かれているが翌年発行の「山梨県植物誌」の記載を信じるほうがよいと考える。)
ちなみにエゾリンドウもメッシュ2だが同様に今回の調査で確認されていない。
共に生息情報が大事そうなのでさらに情報収集して探してみたいと思う。

最後にどこにでもありそうなセンブリが準絶滅危惧種となっている。
薬になり、花としても可愛いので持っていかれたのかもしれない。
個人的にはこの秋もあちこちの山で見つけているので心配はしていない。
でも場所だけは記録しておこうと思います。

こんな気づきが多くてデータベース化がなかなかはかどっていない(^^;;


山梨県の「希少な植物」を見分けるには?

2020-10-08 10:26:00 | 基礎知識
山梨で植物観察をするときに気になっていたことがある。
あまり見かけない花を見つけた時に、それが希少なのかということだ。
それを判別するのに2つのものさしが必要だと最近になって気がつきました。

ひとつは言うまでもなく2018山梨県レッドデータブックです。
はじめて作られた2005年版を改訂したものでこれに記載されていれば希少種ということができます。
このHPに公開されているので参照するか、本を購入して参照すればよくわかります。
ただ最新版はHPなり、最近ではヒメスズムシソウがCRとして追加されました。

もうひとつは山梨県にこれまで発見されていない植物という観点からの希少価値です。
これは何がベースなのか難しいところですが、現時点での私の結論は、
2018山梨県レッドデータブックの概要のカテゴリー別集計表の注釈に書かれている
「山梨県植物誌1982年発行」に新たにレッドデータブックに記載した23種を加えて、
   山梨県在来種の暫定値とした。」という内容の記載に注目した。
この「山梨県植物誌1982年発行」は各図書館に置いてあり、容易に借りることができます。
現在のもうひとつの希少基準は2018レッドデータブック(ヒメスズムシソウを含む)に記載
されてなく、かつこの植物誌に記載されてないものが「山梨県にまだあると認められてなく
希少なもの」としてます。実際には学術論文などですでに存在が明らかにされていたり、
ネットで情報が飛びかっていたりしているものもあると思いますが、私はこう考えました。
オフィシャルな2140種類の植物以外ということです。

この植物誌は当時の、
◯昭和50年から行ってきた県の貴重植物群落調査の記録と標本
◯秋山樹好氏の記録と標本
◯植松春雄氏が前年(1981年)に出版した山梨県の植物目録
◯中込司朗氏の山梨県樹木目録
基づいてまとめられたとあり、
自生するものと帰化植物、そして園芸種などの逸出植物についてまとめられているものです。

この植物誌は有用なデータなので頑張ってデータベース化しています。
2014種、レッドデータブック記載の新たな種を追加しながらやるのでなかなか進みません。
科目がすでに変わっていたりしますが、それも修正しながらやっています。

ただこの入力の際にもいくつか気づくことがあり、意外に楽しい作業です。
分布については、
多い、普通、少ない、稀、ごく稀   の主に5分類になっていますが
当時 普通と書かれていたものがレッドデータブックに載っていたりしました。

また分布域や産地は7分類で記載されていますが、今の希少種が昔はそんなところにもあった
のかと気づかされることも多いです。
さらに科目の花の全体が見通せるので、すでに存在が知られている植物にも気づきやすいです。
出来るだけ追記しています。
きっとこんな作業は県のほうでもされているんだろうなと考えながら。