山梨の花を探して、楽しんで

山梨の豊かな自然に育まれている植物、特にその季節に咲く花について書いてます。

山梨の希少な花たちを守るために その1 守るための法律

2022-12-22 18:09:54 | 保護活動

なぜ山の花をとってはいけないのか?

道徳的な考えは一旦横に置いて、守られているかどうかを考える上でどんな法律があるのかを調べてみました。

まず山梨県のルールから。

県のHPには、

山梨県では、昭和46年に「山梨県自然環境保全条例」を制定し、自然環境の保全を重要な施策課題として位置づけ、また、昭和60年、全国に先がけ「山梨県高山植物の保護に関する条例」を制定し、特定高山植物18種(後に22種)を指定するなど、その保護に努めてきた。

とレッドデータブック2005のページに書かれていました。この条例の看板はまだ三つ峠の登山口にありますね。

その後、平成20年に「山梨県希少野生動植物の保護に関する条例」が制定され、上記の条例は廃止されました。

またこの条例に基づいて県の基本方針もまとめられています。詳しくはこちらをご覧ください。

https://www.pref.yamanashi.jp/shizen/58784767238.html

ここで守られているのは28種類の指定希少動植物種になります。

これらの植物のうち、主に亜高山帯から高山帯のものの保護のための調査を県から委託された山岳レンジャーが毎年実施しています。これで現状を把握されているようです。

ただ山梨県レッドデータブック2018では準絶滅危惧種だけど環境省ではニ類のクモイコザクラが入っていますが、同じクモイで環境省も二類だけど山梨県ではCRのクモイナズナが入ってないなど、どういう基準で28種類が選ばれたのか個人的には不思議です。日本で山梨県にしかないホザキツキヌキソウが最近になって指定されているのをみると最初の高山植物の保護条例からの流れがあるのではと思います。県や国のレッドデータブックにより、希少性がより明確になった現在の情報で守るべき種を見直してほしいものです。

国全体はもちろん平成5年に施行された「種の保存法」こと「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」です。指定植物種は県の条例に反映されています。


これらは植物種ですが、木や地域守る法律もあります。

ひとつは国や県の指定している文化財(天然記念物)です。多くは特別な木や林です。法律はもちろん文化財保護法です。

市町村が指定しているものもありますね。あちこちで見かけますがどんな保護柵がとられているのかとても疑問です。

https://www.pref.yamanashi.jp/bunka/bunkazaihogo/kinenbutsu.html


もうひとつは山梨県の自然環境保全条例で、自然記念物と自然環境保全地区を定めて守っています。

https://www.pref.yamanashi.jp/shizen/shizenkankyouhozentiku.html

自然環境保全地区で有名なのは三ツ峠自然保存地区で、自然記念物では櫛形山アヤメ平および裸山のアヤメ群落などが指定されています。

特にその地区内の希少植物に限定したものはなく県と市が協力して自然環境を守るという大きなくくりです。

これに関しては県が任命した自然監視員がパトロールすることになっていますが、荒れ果てている自然保存地区もときどき見かけます。

すべての地区や物の現状が毎年確実に把握されているか,こちらも疑問です。


これと同様に地域を守るものに国立公園、国定公園、県立自然公園があり、これらを守るルールは国の自然公園法に記されています。

概要はこちらです。山梨県にもこれを受けた自然公園条例があります。

https://www.env.go.jp/content/000062513.pdf

この中の国立公園や国定公園の特別地域は現状維持を原則とする地域とされており、植物に関する規制として「指定した植物の損傷等」が知事承認となっています。さらに特別保護地区では「植物の採取・損傷、落葉・落枝の採取」「植物の植栽等」も承認事項となりより厳しい管理となっています。

上に書いた指定された植物のリストは現在見直し中です。

https://www.env.go.jp/nature/np/plant_prot/index.html

かなり詳しいリストです。山梨県の関連は南アルプス、八ヶ岳、奥秩父、富士山まわりとなります。表の後ろに山梨県の絶滅危惧種のランクも書いてあるのでじっくりと目を通していく必要があります。

県立自然公園の特別地域は南アルプス巨摩公園と四尾連湖の2つで、県の条例で植物が指定されています。

https://www.pref.yamanashi.jp/somu/shigaku/reiki/reiki_honbun/a500RG00000843.html

鳳凰三山の登山道は途中まで県立自然公園でそれ以降は国立公園です。わかりにくいですね。


それ以外では、

国有林内の高山植物の採取には許可が必要です。

https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/apply/nyurin/kouzansyokubutu_300605.html

県有林は植物採取を目的に立ち入る場合は許可が必要です。

https://www.pref.yamanashi.jp/kenyurin/nyuuzan.html

私有地であればもちろん窃盗ですよね、きっと。

これらは業者さんなどには効力がありそうですが個人にはあまり意識されてない気がしています。


多くの法や条例がありますが現地を見ると実際に効力を発揮してなさそうなものや仕組みがあると感じています。

そんな中、悪意ある人から希少な花を守るのは猿や鹿よりもはるかに大変なことです。

山梨県では盗掘もそうですが、花や写真好きの方による踏み荒らしも近年とても深刻になってきていると感じます。

法律や条例があることを啓蒙し、集団やカメラなどで監視していることや注意喚起の札などで警告する以外方法はありません。

またSNSが有力な情報源となっていることに留意し、場所が特定できるような情報の安易な発信や拡散はこれまで通りで守れるのか、もう一度見直すべきと感じます。



















櫛形山の歴史に学ぶ 保護柵による植物の復活と新たな問題

2021-07-01 15:56:00 | 保護活動
櫛形山は昔最盛期には登山道の両側に腰の高さほどの草が茂り、花が切れることがなかったそうだ。
花の百名山を書かれた田中澄子さんも同様の体験をされており、新花の百名山中でその素晴らしい様子について書かれ、もう少し早くこの山を知っていたら最初の花の百名山いれたのにとも述べられていた。

その山から多くの植物が消えてしまったのはいつ頃なのだろうか?

2007年には多くのアヤメが消滅してしまったという新聞記事があった。
それは3000万本がわずか30本になったという衝撃的な記事でした。
アヤメと前後して登山道の植物もどんどん無くなっていったと思われます。

それから地元で協議会が設けられ対策が検討されました。
櫛形山を愛する会」の資料によれば
原因が鹿だと立証するための柵をアヤメ平に設置したのが2009年10月。
本格的な保護柵は、
◯アヤメ平は全域一気に2012年11月に設置されており
  これは壊滅的な被害が認められた2007年から6シーズンすぎた後で、設置から今年9シーズン目を迎えたということになります。
◯裸山周辺は向かって左の草原が2010年11月、山の斜面が2014年11月に設置されています。
   それぞれ設置から今年10シーズン、7シーズンを迎えたということになります。

先日見かけた保護柵の中と外では大きく植物の量や高さに差がありました。なのでもっとずいぶん前から設置されていたのかと思ってました。さらに壊滅的になってから割と時間がたってから設置されたにもかかわらず、ここまでいろいろな種類の花が生き残り復活してきたことはほんとうにすごいなぁと感じました。関係された方の努力のたまものですね。ありがとうございます。

昨年見た感じでは、
裸山は多くのアヤメが咲き、続いてマツムシソウやタムラソウを中心として花の草原に変わっていきました。またその中にも赤いシモツケソウ、青いグンナイフウロ、黄色いトモエソウなどが彩りを添えて  とても気持ちのよい空間を作り出していました。昔はこんな草原がいくつも広がっていたのではと思います。この山中で同じような平地があるほこら小屋周辺やバラボタン平も同じような草原だったようです。いろいろ昔の写真を見てみたくなりました。

アヤメ平は大きく保護したせいで、草原だけでなく昔の山の一部が復活しているように感じました。アヤメ平の柵を開けるときに気づく内外の大きな格差、そして柵の中の豊かな自然。小屋のまわりに敷き詰められたようにマイズルソウがあり、その中で大きなツバメオモトが咲く光景、さらにそのマイズルソウが咲き一面白い絨毯となる光景、そして両側に高く植物が生い茂る夏の光景はよかった頃の櫛形山の姿を想像させてくれます。こちらはそれほどアヤメが戻ってきてないように感じます。それよりも一面をブルーに染めるクガイソウからピンクのシモツケソウや黄色のマルバダケブキなどの色とりどりのお花畑に刻々と変わっていくさまは本当に素晴らしく、毎週通わなくちゃと思わせてくれます。
またアヤメは昔のように長い年月を経て君臨するようになるのかも気になります。

そんな中でも残念なことも起こっています。
一部の希少な花を撮影するためにロープを乗り越えていく人が多く、先日見たら大きな踏み跡ができていました。その踏み跡のところにはこの春 希少な花の幼猫があったのですが、、、。
人が大切に守り育ててきたものを簡単に踏みつけてしまう人がいるのは本当に悲しいことです。その人たちの自慢げな写真やブログ記事が今後多くの悲しい人をそこへさらに呼び寄せてしまいそうです。悪意ある人から守るのはとても大変だと思いますが対策をしないとせっかく守ってきた花が一気にだいなしにされてしまいそうです、来シーズンには。

また保護柵以外の場所の植物はどんどん減っていっています。
鹿が食べないはずのマルバダケブキは茎の上だけをかじりとられたくさん葉っぱが落ちていました。
同様に食べないはずのクサタチバナやトリカブトの葉もたくさんかじられていました。
先日はミヤマワラビを広い範囲で食べたあとが残っていました。バイケイソウもそのうちかも。
鹿の頭数が増え、食べられる植物が少なくなっているせいかもしれません。たぶん小さな植物も気づきにくいですが少なくなってきているに違いありません。コケイランやミヤマハナシノブなどすでにこの山でみることができなくなった希少な花も多くあります。山全体で守るべき植物や守るべき場所を選び出し、これからに備えていくことが必要な時期に来ているのかもしれません。






守り続けることの難しさ

2021-06-05 20:53:00 | 保護活動
山梨で鹿の食害が顕著になってきてからもう20年くらい経過しています。
なにせはじめてのことだったので「鹿」ではなく、「地球温暖化」などといわれる専門家も
多かったようです。現場をずっとみていればわかることなのに。
今のコロナと似てますね、、、

それから保護柵を設置してみたら効果絶大で、多くの希少種の保護に役立ってきている。
自然じゃないと批判するひともいるけど、なにが本当の自然かよくよく聞いてみたいものだ。

私も最近わかったことだが、
保護柵は鹿には効くが、盗掘やいい写真をとりたいというひとの欲望には勝てない。
保護柵が切られていたり、保護柵内のロープで仕切られている中を植物を踏みつけながら歩く人の姿を
よく目にする。人の欲望は鹿よりもやっかいだ。
ましてやブログで紹介し、その行動を助長する人もいる。
場所や希少な花の名前を書かなければいいのに書いてしまう。自分の売名行為としか思えない。
可愛い写真をとるためにまわりの植物を踏みつける人は身の回りにも多い。
スマホ派のかたはそういうかたが身の回りに多い。

もう一方、山梨でもロープや保護柵はあるが継続して管理されておらず、保護がないがしろになっている
場所も目にするようになってきている。柵が倒れたり、壊れたりして放置されてる。
柵を設置するのは簡単だとはいわない。お金も労力もかかる。またその時だけ行政のように協力して
くれるスポンサーもいることもある。
ただそれを維持管理して、花を守っていくには全く別の概念が必要となる。それを知らないというか
経験や他の成功事例から学んでない人が多い。ほんとうに残念なことだ。

今消えようとしている花を守るにはもちろんすぐに保護する必要がある。
でも大事なのはそれからだ。
その花を未来永劫守り育てていくには多くの人の力が継続的に必要になる。
ほんとうに守りたい花は最低でも月に二回くらいは気になって柵を見に行きたくなる。
そうでない人はその花をどう思ってるんだろうか?
中途半端はほんとうによくないと思う。
ほかのほんとうに守りたいひとたちが手を出せなくなるから。
さらに自分だけでできないなら、共感する多くの人を動かし続けるモチベーションが必要ではないだろうか?
多くの人を巻き込んで守っていく努力が重要だ。
それをこれからじっくりと考えていきたい。









山梨県の植物誌がそろそろ欲しい件

2021-01-24 20:07:00 | 保護活動
植物に関する本は貴重な情報がいっぱいだし、発行部数が少ないので
結構高いです。
最初はネットで十分と思っていたけれど最近身近な植物をまとめていくとその必要性が
すごくわかるようになった。
そこでと中古の本を探していたら、
他の県の植物誌やレッドデータの植物についてまとめた本をたくさん目にすることになった。
中でも関心したのはお隣長野県の「長野県のレッドデータ植物図鑑」だった。
この2014年に発行された本には絶滅危惧種の植物が6つの生活環境に分けて、代表的なものが
写真つきで類似種との違いも含めて丁寧に説明されていてとてもわかりやすかった。
守りたい人、見てみたい人にとってこれ以上のものはないだろう。
近くの図書館で借りられるようなので利用してしっかり勉強したい。

もう一方、「植物誌をつくろう! 神奈川県植物誌2018のできるまでとこれから」という本を
目にした。
そのはじめにこう書かれていた。

「植物誌」とは、植物の戸籍簿とも言われ、」

山梨の戸籍簿は、
1958年の植松先生の「山梨の植物」
1981年の植松先生の「山梨の植物誌」
1982年の山梨県が発行した「山梨県植物誌」  となる。
それ以降、もう40年近く戸籍が更新されていないことになる。
ネットで見かけた他県の植物誌を見るにつけ、とても残念ことだと思う。
すでに60年以上も前から行われていた文化がうまく継承されてないのかも
しれない。

昨年 山梨県植物誌をデータベース化し、
今年から身近な地域や山の植物をそれに基づいてまとめようとしているが
あまりにもリストに入っていない植物が多いびっくりしている。
もちろん植物誌には外来種も含まれているので、オオカワジシャなどのように
それ以降山梨に入ってきたり確認された植物もあるが、見過ごされていた
身近な植物も意外に多いのです。
2018年のレッドデータブックの植物でなかったものもデータベースに追加しているが
それでも全然足りない。

そろそろ山梨の植物誌を更新する時期になっているのではないだろうか。
また定期的に更新することを明確にしていけば、こういった文化も継承されていくの
ではないだろうか。昔の関連する書籍を読むと多くの中高の先生が関与されていたことが
よくわかる。山梨は自然が多い県でそれを大切に後世に引き継いでいかなければいけない
県であるとも思う。
もう一度、県全体で植物誌を見直す作業に早急に着手し、また昔のような文化をつくり
あげていってほしいと思う。それはきっと二つのユネスコパークの活動今後も支えていく
ものになると思う。



守りたい花と守り方

2021-01-14 19:21:00 | 保護活動
最近、近隣の花についてしらべてみたら、
私が知らなかっただけなのだと思うが、
近くにもたくさん花を楽しめる遊歩道があり、群生地と呼ばれている場所がたくさんあることがわかった。
今でも群生地が残っているかは今年確認してみようと思っている。
またその群生地については過去からいろいろな議論があったことも同時にわかった。

家の近くに絶滅危惧種の花が咲いている場所が何箇所かある。
ただ囲われたり保護はされているのは一部にすぎない。
以前その保護について関係する人と意見交換をしたことがあります。
その方の意見は柵で囲ったりすれば珍しい植物があることがまわりに知れ渡り、
花が可愛かったり、希少価値のある植物だったら盗まれてしまうというのだ。
今でも多少取られた後はあるし、平然と倒木や砂利を積まれたりしているといっても、
こんな可愛い花だから大勢の人に見てもらいたいといっても、
全く聞き入れてもらえなかった。
知られてしまったら、人の悪意は防げないと。
また盗む人は根こそぎ取らないし、他人にはいいふらさないからとも。
本当にそうなんだろうか?
地元の人なら分かる気がするが業者などがくればひとたまりもないとおもう。

今回見つけた多くの小さな群生地は地元の人に守られひっそりと続いている
ところも多い。それが抑止力になっているのかもしれない。
ただどんな方法がベストなのかは花や環境によっても大きく違うに違いない。

今自分にできることは、
ひそかに楽しみ、これからを常に考えておき、見守っていくことだと考えている。