残虐な人権侵害に国連も制裁
イラクとシリアの両国で支配地域を広げている過激組織「イスラム国」は、2003年の米国のイラク侵攻後に武装反乱に参加した指導者バグダディ氏がアルカイダ傘下の組織から分かれて作った「イラクのイスラム国」が前身です。11年に発生したシリア内戦にも加わり、突出した軍事力と残虐性で影響力を拡大しました。
戦闘員は外国人を含め現在3万人を超える(米ブルッキングズ研究所の昨年11月の報告書)とされ、支配地域では擬似国家的な「統治」機構さえ作り上げているといわれます。
シリアの油田を確保するなど、財源も潤沢とされますが、戦争資金や統治のために、住民への課税、さらには恐喝、身代金目当ての誘拐、遺跡の遺物の売却などの犯罪行為を行っています。また、欧米の人質を殺すなどの残虐行為をしてきました。
国連安保理は、14年8月15日、イスラム国の「暴力的で過激なイデオロギー、引き続く重大かつ系統的、広範な人権侵害と国際人道法の侵犯」を最大限の言葉で非難する決議を採択。「イスラム国」に属する個人への制裁を決定。同組織への資金援助や戦闘員派遣などの取り締まりが国際的に進められています。
米軍は同月8日から、北大西洋条約機構(NATO)加盟国やアラブ諸国とともに、イスラム国の拠点への空爆を開始しています。しかし、これにはかえって現地の混乱を拡大するとして根強い批判があります。