TPPが国民生活を危険にさらす
15日に始まった環太平洋連携協定(TPP)第18回全体交渉の主催国マレーシアで、TPPが国民生活を危険にさらすとの批判を浴びています。民間団体や野党は、医薬品の価格上昇や農業への打撃によって庶民の命が脅かされると指摘します。
首都クアラルンプールで3日に開かれた国際エイズ会議で、マレーシアエイズ会議などの患者支援団体は、TPP交渉で特許期間が米国の意向通りに延長されれば、特許切れの安価なジェネリック医薬品の製造・使用が制限されて、治療が困難になると批判しました。
この問題ではリウ・ティオンライ保健相が昨年8月、「TPP協定案によれば、ある薬品が米国で発売開始になり、その3年後にマレーシアで発売されれば、特許期間は米国で発売された時から始まるのではなく、マレーシアで発売開始になった時から始まる。これは不公正だ」と指摘。このままでは医療費が高騰して国民の健康に悪影響を与える恐れがあると述べています。
4日の通産省発表によると、国連開発計画(UNDP)は最近、マレーシア政府の依頼に応じてTPPの影響についての報告書を作成しました。報告書はマレーシアにとっての「主要な利益と不利益」を列挙しているといいますが、通産省は「交渉内容にかかわる」として公表を拒否しています。
野党連合・人民連盟は「UNDPの報告書はTPPに参加しないよう促すもの」だと主張。国会に超党派の特別委員会を設置して、TPP参加の是非を徹底的に論議するよう求めました。
人民連盟を構成する4党の党首は先月、通産省に連名で書簡を送り、「TPPの広範な法的枠組みは、国内法を従属的な地位に置き、多国籍企業を強者にする」と交渉継続に反対を申し入れています。
マレー経済行動委員会(MTEM)モハマド・ニザル・マシャル執行委員長は11日の記者会見で、肉、牛乳、コメなどの関税が撤廃されれば農家は大きな打撃を受けると主張。ジェネリック薬品の価格が4~5倍に跳ね上がることと合わせて、国民生活への害悪は計り知れないと強調しました。
野党や民間団体からの批判を受け、与党・国民戦線は先週、今月中に超党派委員会を設置して、関係団体の意見を聴取する考えを明らかにしました。
ジェネリック医薬品 新薬の特許期間終了後、別の製薬会社がほぼ同じ有効成分や製造法によって生産する医薬品。後発医薬品とも呼ばれます。開発コストが抑えられるため価格は安く、新薬と同様の効き目が期待できます。日本でも、TPP参加に伴うジェネリック医薬品の生産規制や薬価高騰が懸念されています。