東日本大震災で壊れた自宅で生活を続ける在宅被災者の調査から見えた、震災復興の課題を探るための意見交換会(主催・宮城県災害復興支援士業連絡会)が5日、仙台市内で開かれ、弁護士、被災者団体、地方議員ら多彩なメンバーが討論しました。
在宅被災者調査は仙台弁護士会が一般社団法人・チーム王冠と協力し、2015年11月から1年間、258世帯を戸別訪問して行いました。
仙台弁護士会の山谷澄雄弁護士が、訪問した在宅被災者の75%が65歳以上の高齢者で、相談の内容は「心のケア」が155件、「生活不安」74件、「支援格差」61件と続き、まだ風呂が修繕できていない家もあると紹介。在宅被災者の抱える問題として、
▽支援物資、各種サービスが届かず、他の被災者との支援格差が大きい
▽被災者生活再建支援制度の住宅補修加算金は100万円で資材高騰のなか、実際の補修額に届かない
▽住宅補修の支援金を受けると自立再建とみなされ、行き詰まっても仮設住宅、災害公営住宅に入れなくなる
―と指摘しました。
日本弁護士連合会の津久井進弁護士が支援制度に対し、住宅再建に重点を置き、再建支援金を500万円として再建・修理の差を設けないなどの見直しを提起。一人ひとりの被災者台帳をつくって個別の支援計画をたてること、計画を実施する生活再建支援員を配置することが大切だと強調しました。
塩崎賢明立命館大学教授が、政府は復興予算で全国防災(社会資本整備総合交付金)の名の下で大型開発には3兆円使っているが、被災者生活再建支援制度には3300億円しか使っていないことを示し「お金がないのではなく、使い方がおかしい」と強調しました。
在宅被災者
震災後、避難所や仮設住宅に入らず、壊れたままの住宅で生活した人。支援の手や支援策の情報が入りにくい状態に置かれます。住宅の破損も比較的軽度な場合が多く、「原則、大規模半壊以上」が支援の対象となる被災者生活再建支援制度の対象外となります。