特定国出身者や難民の入国を禁止した米大統領令の一時差し止めを命じた地裁決定について、米カリフォルニア州サンフランシスコの連邦控訴裁判所(二審)は4日、地裁命令の停止を求めた米司法省の訴えを退ける決定を下しました。これにより、大統領令は引き続き停止されます。
大統領令をめぐっては、ワシントン州シアトルの連邦地裁が3日、各州の活動に損害を与え「州自体が有害な影響を受ける」などとして、全米を対象に即時暫定的な差し止めを決定。それに対し4日、司法省が控訴裁に取り消しを申し立てていました。
トランプ大統領は4日、滞在先のフロリダ州で記者団に対し「われわれの国の安全のため(司法の場で)勝利する」と表明。それより先、地裁決定についてはツイッターに複数回にわたって投稿し、「この判事とかいうやつの意見は、国から法執行を奪うもので、ばかげており覆される」と攻撃していました。
地裁決定を受け、国務省当局者は4日、特定国出身者の査証(ビザ)取り消しを撤回し、有効なビザを所持する者の入国を認めると明らかにしました。米メディアが報じました。
国土安全保障省も同日、通常の入管業務を再開するとの方針を示しました。航空各社は入国禁止とされた人たちの搭乗を再開し始めました。
大統領令により、有効なビザを持っているにもかかわらず、入国を拒否される事態が起きました。事実上、イスラム教徒の入国を禁止する大統領令に、国内外のあらゆる方面から批判や見直しを求める声が噴出していました。
首都ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス、フィラデルフィアなど米各地で4日、トランプ政権の差別・排外主義的な姿勢に抗議する市民の集会が行われました。
米の入国禁止措置に抗議
― 欧州各地でデモ
英国の首都ロンドンの米大使館前で4日、トランプ米政権による中東・アフリカ7カ国に対する入国禁止措置に抗議するデモが行われ、地元メディアの推計で約1万人が参加しました。同様のデモはフランスやドイツでも行われ、それぞれ約1000人がトランプ氏を糾弾。禁止措置の即時撤回を求めました。
ロンドン1万人
ロンドンのデモ参加者は、「トランプにノー、戦争にノー」「人種差別に反対」などと書かれたプラカードを手に、在英米大使館前からトラファルガー広場まで行進。米英両政府が掲げる両国間の「特別な関係」の見直しを求めました。
主催団体の一つ「戦争停止連合」は3日の声明で、トランプ氏が過激主義者とイスラム教徒を同一視し、「イスラム教徒全体を問題視している」と指摘。こうした姿勢が独仏などで「反イスラム」を掲げる極右政党の立場を強めると同時に、過激組織ISの支持拡大にもつながるとの懸念を示しました。
欧州連合(EU)離脱を決めた英国のメイ首相は、各国との2国間自由貿易協定(FTA)を推進する方針を示しており、貿易政策ではトランプ氏と近い立場にあります。
メイ政権は年内にもトランプ氏を国賓待遇で招待したい考えですが、待遇の格下げを求める署名には、これまでに180万人分以上の署名が寄せられています。